プロポーズ小作戦47
脱ぎたい脱ぎたくない?
「星刻、おい大丈夫か」
声をかけると「大丈夫だ」と返答はあるが、どうも反射的に答えているだけのようだ。
今のところパイロットスーツの両肩を下ろし、胸を大きく広げ息をしやすいようにしている。夏の事だし上着をかけているから寒くはないはずだ。(この時点で
2020年 7月中頃である)
さて、洪古は飛行型のナイトメアに乗ったことはない。白虎のシュミレーションはしているが、シュミレーションのためにいちいちパイロットスーツを着る事はない。本当は着たほうがいいのだが、中華ではまだ生産していない。
だから、パイロットスーツの下には何も着ないなんて知らなかった。
単純に知らなかった。
もともと星刻は筋肉が積み重なっていくタイプではなく、鍛えるほど引き締まるタイプだ。作年末で25歳になったはずだが、どことなく少年の気配が残る。
中華の古い時代の基準では30前ぐらいまでを少年と言う。李白や杜甫が居た時代である。だから古典に言う「少年の春を惜しむ」とは人生の始まりの輝く時期を惜しむという事だ。
さて、このとき洪古はどの時代の基準で少年と感じたのだろう。
初めて会ったとき星刻はまだ本当の少年でそれが軍を志してから、大きく強くなっていくのを見てきた。弟のようなというのが一番近い。
だから洪古に他意は無い。誰がなんと言おうと悪意も他意も無い。
ようやく片足を脱がせたところで洪古は気が付く。
こいつパンツはいてないのか。
締め付けのきついパイロットスーツを脱がすのは大変で、それでうっかり洪古は見落とした。着替えが無いという事実を。
ここで星刻は目を開いた。
「おい、」
「起きたか」
「この状況はなんだ」
星刻の声は低い。
「中途半端だな。脱ぎたいか脱ぐか?」
ところで朱禁城はもともとの名を紫禁城という。つまり150年前の建造物だ。もちろん改築や修理はしているが、中華と言う国が老成しているように、建物も老化している。掃除に来た女官が何気なくドアを開けた。鍵は簡単に開いてしまった。
女官は見た。大司馬を襲う右将軍の姿を。
もともと仲のよさを知られていた両者だが、ここに来てホモ達疑惑が加わった。
入力者のつぶやき。
おかしい、予定と違う。こんなペースでは天子様が成人して星刻を押し倒すまでプロポーズはできない。不安だ。