金属中毒

心体お金の健康を中心に。
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プロポーズ小作戦47

2009-04-23 15:59:04 | コードギアス

プロポーズ小作戦47
脱ぎたい脱ぎたくない?


「星刻、おい大丈夫か」
声をかけると「大丈夫だ」と返答はあるが、どうも反射的に答えているだけのようだ。
今のところパイロットスーツの両肩を下ろし、胸を大きく広げ息をしやすいようにしている。夏の事だし上着をかけているから寒くはないはずだ。(この時点で
2020年 7月中頃である)
さて、洪古は飛行型のナイトメアに乗ったことはない。白虎のシュミレーションはしているが、シュミレーションのためにいちいちパイロットスーツを着る事はない。本当は着たほうがいいのだが、中華ではまだ生産していない。
だから、パイロットスーツの下には何も着ないなんて知らなかった。
単純に知らなかった。

もともと星刻は筋肉が積み重なっていくタイプではなく、鍛えるほど引き締まるタイプだ。作年末で25歳になったはずだが、どことなく少年の気配が残る。
中華の古い時代の基準では30前ぐらいまでを少年と言う。李白や杜甫が居た時代である。だから古典に言う「少年の春を惜しむ」とは人生の始まりの輝く時期を惜しむという事だ。
さて、このとき洪古はどの時代の基準で少年と感じたのだろう。
初めて会ったとき星刻はまだ本当の少年でそれが軍を志してから、大きく強くなっていくのを見てきた。弟のようなというのが一番近い。
だから洪古に他意は無い。誰がなんと言おうと悪意も他意も無い。

ようやく片足を脱がせたところで洪古は気が付く。
こいつパンツはいてないのか。

締め付けのきついパイロットスーツを脱がすのは大変で、それでうっかり洪古は見落とした。着替えが無いという事実を。

ここで星刻は目を開いた。
「おい、」
「起きたか」
「この状況はなんだ」
星刻の声は低い。
「中途半端だな。脱ぎたいか脱ぐか?」

ところで朱禁城はもともとの名を紫禁城という。つまり150年前の建造物だ。もちろん改築や修理はしているが、中華と言う国が老成しているように、建物も老化している。掃除に来た女官が何気なくドアを開けた。鍵は簡単に開いてしまった。
女官は見た。大司馬を襲う右将軍の姿を。

もともと仲のよさを知られていた両者だが、ここに来てホモ達疑惑が加わった。






入力者のつぶやき。
おかしい、予定と違う。こんなペースでは天子様が成人して星刻を押し倒すまでプロポーズはできない。不安だ。

メモ

2009-04-23 12:29:20 | コードギアス

「とうどう、らくようはつらい」
意識があいまいなまま、星刻は口にした。自分が何を言ったのか目を覚ました後は覚えていない。



その漆黒の髪と瞳に想起されてか星刻には黒豹の異名があった。ロシアに行ったとき現地の兵士がつけた呼び名だ。
姿だけではなく、風が流れるような動きも豹を思わせた。盛り上がらず鍛えるほどに引き締まる筋肉。筋肉隆々のボディビルタイプが多い中華軍ではひどくか細くすら見える。だから一見星刻は文官に見られることもある。また、軍に付属して動く娼婦と見られたことすらある。
参考までに、星刻をそういう対象として扱った男達の消息は誰も知らない。
ただ、そういう事があったあと、星刻はしばしば愛剣の手入れをしている。





「中華は誰の国だ
漢族の国か?」
洪の一族は純血の漢族である。それは一族のみならず仕える部下やその親族まで完全に漢族のみ。その血統は古代国家漢の設立以前にさかのぼる。
対して星刻は一切の係累を持たない。
本人さえも自分の生まれすら知らない。
実のところ、革命集団である蒼天講の中でさえも漢族と否漢族の対立は合った。それが表面化せずうまく機能していたのは、星刻と洪古が完全に一体といえるほど心気を合わせていたからだ。



「ただお一人、天子様の国」



「星刻、お前最近ゼロに似てきたぞ」
それは悪意の無いからかいだった。まぁ、少しばかり星刻の秘密主義に腹が立ったというのはあったが。
だからその言葉が星刻に与えた影響がどれほどだったのか洪古は知らないままだった。


悪逆皇帝の拷問のために星刻の身体はあちこちに障害が残っている。医師の意見では「普通の生活をするだけでも、負担はかかるだろう。ましてや軍部など」。



ウラドの串刺し公
吸血鬼 不死者 
マリアンヌの家系


大司馬と右将軍。この2人は
ホモ立ちを疑われるほど仲が良かった。それが急激に対立した。先日も二人の直属の部下が闘技場で顔を合わせ、あわや流血騒ぎになりかけた。
対立は朱禁城の奥までもおよび、天子の耳にも入った。

いろいろなところから噂を集めてくる女官達。そんな噂を聞いて天子は小さな胸を痛めた。
どうして?今まで星刻と洪古は仲良しだったのに。
「政治にはいろいろな面があるから」
ジノに聞いたらそう答えた。
でもそれだけでは天子にはわからない。
実のところ、ジノは中華の政治への意見は慎重に避けていた。うかつに何か口にすると大きな問題になる。自分の立場をジノは十分に心得ていた。


何とか仲直りしてほしいと天子は夕食に大司馬と右将軍を招いた。しかし、多忙を理由に星刻に断られた。
実はいまだに固形物を食べると、反射的に嘔吐の発作をおこすので


プロポーズ小作戦46

2009-04-23 12:14:13 | コードギアス
プロポーズ小作戦46

人気の無い小部屋に入り、鍵を掛け、寝台に下ろし身体を締め付けるパイロットスーツを脱がす。洪古の手に星刻の背が触れる。はっきりとわかる異物感。でこぼこの手触り。星刻の背には皮膚移植以外では直せないほどの傷跡がある。鞭、やけど、刺し傷、つまりは拷問の痕。
拷問したのは悪逆皇帝。
世間ではそう思われている。
事実は。
星刻は何も言わない。
ただ、ゼロ革命(ゼロ・レクイエム)の日、星刻の背を応急処置した医師は「あの傷跡は2ヶ月程度ではない。何年も続けてやられていたはずだ」とコメントしている。

星刻の呼吸は浅い。瞳は閉じられている。5分ほど酸素ボンベを宛てているとゆっくり目を開いた。

「大古」
声にされたのはまだ正式の軍人になる前に交わされた呼び名。
「天子様を頼む」
言い終えるとまた目を閉じた。

パイロットスーツを脱いだ後はいつもだが少し肌寒い。圧縮されていた筋肉が元に戻ろうと動いている感覚。星刻はこの感覚が苦手で、だから、パイロットスーツを着るのは好きだが、脱ぐのは嫌いだ。それでつい神虎を降りた後もパイロットスーツのままで、上から軍服を羽織るだけで過ごす事も多い。

ラクシャータは神(わがまま)虎(息子)の相棒を怒らない。怒っても無駄と知っているからだ。星刻のようなタイプは自分の思うままに駆けて走りぬいて、命が終わるまで生きるだけ。誰かが止めて、止まるようなら最初から走り出さない。
そういう点が本人すら知らなくても、間違いなく星刻はルルーシュの兄弟だった。

プロポーズ小作戦45

2009-04-23 12:10:08 | コードギアス
プロポーズ小作戦45

時間を早回しさせていただけるなら、星刻の今回の独断は人権問題でうるさく言ってくるヨーロッパ世界へのけん制だった。
中華は自分で変わりつつある。お前たちはわが国の事に口を出すな。
それを見せるのにこのキルギスほどふさわしい場所は無かった。
それまで、人身売買どころか、正規の輸出品として売られていたキルギス女性が解放された。キルギスには公式には女はいない。戸籍に載っているのは男のみである。女性の地位はアラブ世界並みに低い。キルギスが洛陽に反発している理由のひとつに今の天子が女だという事もある。
この女性地位の向上にはキルギス内の経済界からの反発が予想されたが、星刻が選んだ新しいキルギス代表は、ちゃっかり中華軍の攻撃部隊をそういう連中の本拠地にも送り込んでいた。
付け加えるならそういう場所に送り込まれた中華の兵士は出荷予定だった女性50人を戦利品として持ち帰った。
その女性達を偶然にも、星刻が目をつけていた人身売買組織に売った。それを知った星刻は自ら剣を片手に乗り込み、当の兵士を含めた小隊全員を斬首している。




さて、時間は44章の冒頭の台詞の少し後に戻る。
ずいぶん長く星刻と洪古は話していたがまるでかみ合わない。
星刻はこのとき意識下でシュナイゼルを対象に戦っていた。だが、それを声に出した事は無い。
一方洪古は星刻がまた一人で行動したこと。どうして他の将官を送るだけにしなかったのかを責めた。だが、「お前が無茶をするのが心配なんだ」とはっきり言う事はできない。お互いに立場もある。
何よりも、星刻の性格だ。そんな風に言われて素直に聞くタイプではない。
だから言葉はすれ違う。
「部下を信頼するのも上官の仕事だ」
洪古の言葉に星刻が言い返す。
「能力を把握しておくのも仕事だ」
今の中華軍には政治的な問題が絡んでいる場所をうまくこなせるやつはいないと、星刻は言う。
それも当然で、いままでそういう政治がらみの問題は宦官が執り行ってきた。朱天革命前、軍は宦官の後に付いて行って宦官と利益を分け合った。
今の中華軍で政治的配慮をできるのは星刻はじめ10名にも満たないだろう。
洪古自身も政治は苦手とは言わないが、なるべくなら剣で解決したい性質だ。
実のところ星刻自身もCCの言葉を借りれば「政治もできる軍人」だった。本質は剣にある。



ダモクレス戦で星刻はあの裏切り騎士スザクと戦った。そのとき、神虎の背を大きく断ち切られその衝撃でのどを痛めた。あの混乱の中、治療できなかったため後遺症が残り、長時間の会話には耐えられなくなっている。
それに他の将官も出入りする場所で、最高司令官と右将軍がいつまでも言い合っているのはまずい。星刻は決め付けるように言い切り立ち上がろうとした。
「とにかく、今回の事はすでに私の権限で決定した事だ。これ以上の抗議は」
聞かないとの言葉は星刻からでなかった。声がでない。息が吸えない。
自覚よりも身体は疲れていた。それに気が付いたときにはもう遅かった。
視界が急に暗くなる。
「星刻?」
急に言葉を切った星刻を洪古はじっと見る。
顔色が悪い。これでは前に貧血で倒れたときと変わらない。周りを歩いていく将官達が、まったく騒がず敬礼だけをして行ってしまうのを見ると、自分がいない間星刻はずっとこんな状態だったのだろう。
「星刻」
そっと呼んでみるが返答が無い。

(こいつ息を!)
星刻は呼吸していない。意図的なのか、できないのか。いずれであってもあまりいい状態ではない。
一秒で洪古は行動を決定した。将官服のコートを脱ぎ、まだパイロットスーツのままだった星刻をくるむとそのまま肩に担いだ。