金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

プロポーズ小作戦21

2009-04-02 22:29:19 | コードギアス
プロポーズ小作戦21
翌朝、女官達は冷め切った料理を片付けた。結局星刻は来なかった。

今朝になって公館のほうに連絡を入れてみたがすでに出撃した後で連絡はできなかった。

結局天子は昨日夕飯を食べないまま眠り、今朝もあまり食が進まない。
「お腹が痛いの」
そう言って蘇(ヨーグルト)を少し食べただけで片付けさせてしまった。
女官はすぐ医師を呼ぼうとしたが、天子にそういう気分ではないと断られてしまった。


後になってわかったことだが、この腹痛は天子の遅すぎる初潮の前触れだった。


さて、後でわかってみればお赤飯でも炊いてお祝いと言う内容だが、その時点ではわからない。
もちろん個人的に頼んでいる女官から、極秘通信で天子の不調を聞いた星刻にもそんなことはわからない。
昨夜行かなかった事が悔やまれた。きっと何か相談事があったのだと、星刻は天子の言葉を無視する結果になった事を深く悔いた。
ただ、これは星刻のほうに理があった。天子の靴を抱きしめて、政治モードから戦闘モードに切り替えて公館に戻ると現地の同士から連絡が入った。
連絡によるといったんは起きた暴動だが、基地司令が暴動の原因となった兵士を公開処刑するという中華の伝統的解決法で収まりかけた。基地司令は基地の周りを囲んでいた難民達をとにかく基地の備蓄食料で救済した。
それでいったんは引きかけたのだが、光明信仰のトップ争いがこの時期にあった。少し劣勢の僧侶が自分の派閥を強めようと手を出してきた。その手口は彼らの信仰の同士でもある難民を毒殺する事に始まった。
それを軍がしたことにして、近隣の寺に檄を飛ばし信者を集め、軍基地を破壊しようとしていた。
ところで光明信仰にも派閥があり、他の派閥の信者が軍にその計画を密告した。
その密告には彼らの武器装備も含まれていた。ナイトメア50機、さらに航空機20機、重装備兵団が2個大隊。すでに戦争の装備である。
同士の報告ではすでに難民は死に、まだ生きている者も時間の問題である。僧侶甲櫓はすでに檄文を飛ばした。おそらく数日中に軍基地を襲うだろう。そうなっては暴動はたちまち全土に広がる。

だが、まだ間に合う。
星刻は神虎を全速で飛ばした。全速飛行は身体に負担がかかる。また、洪古がまだ洛陽に入っていないため天子の安全も気がかりだ。
(早急にことを収めたい)
星刻は神虎から暗号通信を送り、現地の基地に近い軍基地から5個大隊を用意させた。だが、現地の基地にはナイトメアが無い。今のところナイトメアが常時稼動可能なのは洛陽周辺の基地だけである。
一日でも早く国産型の白虎を量産しないと、また同じ問題が起きる。そして何よりもパイロットの育成が重要課題だ。星刻はギリリと奥歯を噛み締める。やるべきことが多すぎた。
(神虎だけで50機を相手にか)
しかも航空機の援護もあるだろう。
どう考えても無理である。
ちらりと浮かぶあの男の名。ジノ・ヴァインベルグ。あの男がいればあるいは。
だが、星刻はその思考を振り落とした。これは中華の問題だ。

ジノのことを思い出したせいではないだろうが、のどに不快感がある。
星刻は速度を緩めた。高速飛行中に発作を起こしては対処できなくなる。
慣れきった手さばきで星刻はのどに鎮痛剤を打った。
これで、しばらくは声が出せないが現地に着くまでには治るはずである。

皮肉なものだと星刻は思う。まだ1年と経たないあの頃、この身体は死を抱きしめていた。あの頃は死ぬ事も戦う事も恐れなかった。むしろ、天子様のために戦って死ねるならそれは甘美ですらあった。
今、この体の中の死の影は消えた。だが、今の自分は死ぬ事が恐ろしい。無論それにはこんな不安定な世界に天子を残していく事への恐怖感も大量にある。だが、それ以上にただ単純に死ぬ事が怖くなった。
(ゼロ、ルルーシュ 勝手な事をしてくれたな)
ゼロ・レクイエムにはスザクすら知らない裏舞台があった。
その主役はゼロ、そして星刻。
刺し殺された悪逆皇帝。その身体からは肝臓をはじめ多くの臓器がすでに取り去られていた。
もしあの時スザクが挿せなかったとしても、ルルーシュは死んでいただろう。
そして、消えた内臓は、今、死ぬはずだった男を生かしていた。
星刻がそれを知ったのは昨日の事である。

プロポーズ小作戦20 スープと靴

2009-04-02 16:56:35 | コードギアス
プロポーズ小作戦20 スープと靴
その日の夕食、このところジノと食べる事が多かったのだが、天子は一人で待っていた。
誰を?
女官達は2人分でなるべくのどに優しいメニューをと言われた時点で、星刻が来ると完全に信じた。
しかし、天子のいつもの夕食の時刻を過ぎても誰も来ない。
暖かかったスープは冷めてしまった。

黄金で縁取られた鍋の蓋をずらすと凝結した水分がスープの中に落ちた。
『外の世界には海や友達やあったかい食べ物があるんだって』
『私が天子様を外にお連れしましょう』
今より少し高い男の声。自分はずっとあの声を覚えている。
でも、約束をはたしてくれたあの人はもうそんな小さな子供との約束は忘れてしまったの。
今、あの人が私のところに来てくれるのは私が天子だからなの?


公式の謁見を終え、天子の伝言を聞きそれに返答し、ジノに八つ当たりした後、星刻は退出した。
公館に戻る前にある場所に寄る。
ここは星刻の隠れ家。士官学校を卒業したあと偽名で借りた小さな部屋。
この部屋には星刻の宝物が隠されている。

周り警戒し、すばやく部屋に入る。
そして部屋の大きさの割には大きすぎる金庫を開ける。
中には宝玉のビーズに飾られた女の子の室内履き。大切に1足ずつ白絹にくるんでいる。
隠し持っていた小さな包みを星刻は開く。
そこには今日天子がはいていた小さな靴が入っている。要するにこの男は少女の靴を持ち出してコレクションしているのである。数十足もあるから相当以前から集めているのがわかる。


天子様
宝玉で飾られた靴を愛しげに胸に抱く。
15歳と言う年に比べ天子の足は小さい。めったに長い距離を歩く事などないから彼女の足は幼女のそれのように柔らかい。その柔らかさを星刻は知っている。
誰にもふれさせたくない。
彼女の足が踏む大地がいつも幸福であるように、そのために私はいる。

今日の靴を他の靴と同じように絹に包む。
ドアに厳重に鍵をかける。

気持ちを切り替える。
出撃間近である。





これ打ってて、うちの星刻はもしかしなくても真正の    な気がしてきました。
出撃前にはいつも天子様の靴を抱きにここに来るとか・・・。