金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

星天祭り用

2015-08-21 04:32:20 | コードギアス
わたしは、すきです







 小さいころの天子は髪を梳かれるのも結われるのも嫌いだった。鏡に映る姿はいつも自分だけ違うから。
「なぜ、わたしはこのようなすがたをしているの?」
白い髪、赤い瞳、他に誰もいない。
問いに答えは無い。
返答はある。
宦官達は口をそろえて言う。
「天子様でありますゆえに」
女官達は困ったように視線を交わす。それから(しかたないわね)と言いたげな顔をして、朱王朝最初の天子、朱源天のお話をする。紅い瞳、白い髪の戦士が月の聖地より降り立って中華を統一するおはなし。天子にはおはなしが信じられない。だって、話してくれる人が誰もおはなしを信じていないから。

天子がむずかりあやしきれなくなると、面倒になった女官達はある下級官史を呼ぶ。
黎星刻、本来天子と直接言葉を交わせるような生まれではない。だが、大宦官の第1人者たる
高亥が手元においているゆえに、連絡役として重宝されている。



もう日も高いのにいまだに乱れたままの髪をしている天子に星刻は小さな櫛を手に白絹の髪を漉いた。さらさらの心地よい手触り。天子の髪は癖がほとんど無い。
黄金と朱玉に縁取られた鏡がうつすのは星刻のつややかな黒髪。天子の白い髪。
「しんくー」
「はい、天子さま」
「どうしてわたしだけこの姿をしているの」
その疑問を天子は初めて星刻に問う。
しんくーは答えてくれる?
鏡の中、珠玉の瞳が揺れる。
髪を漉く星刻の手が止まる。星刻は女官達から言われていた。もし、天子様が問うなら朱源天のおはなしを答えよと。
しかし。
それは彼女の聞きたい答えではない。
「わたしはすきです」
えっ?
鏡の中の揺れる瞳が止まる。
「天子様の髪も、瞳も」
さらり、櫛を手放して、星刻の指が直接に天子の髪を漉く。

止まっていた天子の瞳が大きく見開かれる。
「わたしもすき。シンクーの髪」
勿体ないお言葉と答えようとして星刻は固まる。

天子の小さな手が鏡の中の星刻の髪に触れている。
その手を離せなくて、星刻は動けなくなる。
「切ってはいや」



以後、黎武官は「軍人にあるまじき」とさんざん批判されても、髪を切ることは無かった。


メモの断片

2010-08-31 23:30:39 | コードギアス
1.夕方6時過ぎ
  朱禁城の外には海とか学校とか暖かい食べ物とか友達ってのもあるって
 そう言ったのは幼い自分。
外に連れて行ってくれると約束。
幼い自分との約束など覚えていないかもと思っていた。でも星刻は来てくれた。

 ためいきがひとつ。5メートルもあるテーブルに座るのは今夜も天子ひとりだけ。
後ろに控える女官がもの言いたげだ。
いつまでも食事に手をつけない天子に、次の予定がせまっていると言いたいらしい。
(予定なら知っているから、余計な事は言わないで)
女官が動く。
(わたしは星刻を待ちたいの)
そう言いたい。でも言えない。
星刻が私を本当の天子にしてくれた。
国の長はわがままを言ってはいけない。だから。
天子は冷めたスープにスプーンをいれる。
星刻はもう来てくれない。
スープは小さい頃より冷たく思えた。





16歳で成人して正式の天子になったのはいいけれど、星刻がお部屋に来てくれなくなってしまった。「もう子供ではないのですから」と周りに言われまくってしかたなくお部屋で会うのはあきらめたけど、せめて食事を一緒にしたい。
「天子様のお心のままに」公式回線で返された返事に心から喜べない天子。
その上、星刻はあまり来てくれずまちぼうけばかり。
というメモをどこかに落としていました。

プロポーズ小作戦128

2010-08-30 12:49:36 | コードギアス
プロポーズ小作戦128

歴史教師はさらに調べた。

天子に愛のさまざまな形やその不安定要素を教えるのは簡単である。
女性向け週刊誌を数冊読ませればいい。復興目覚ましい隣国、日本では週刊誌の再発行ブームである。天子の日本語能力はかなり高い。与えてやりさえすれば自分で理解するだろう。
問題はそれを自分が与えたと知ったとき、あの忠臣がどういう反応を示すかである。

天子の家庭教師として就任するときの挨拶では「天子様が知りたいと思うことは、何でもお教えするように」などと気さくに言っていたが。
あの言葉、どこまで信用できるものやら。
ブリタニア皇帝家が実質的に無くなった今では、中華の天子の家庭教師は最も権威ある座である。
なるべくならこの座を他者に渡したくはない。

家庭教師は勤勉に調べた。その中で朱禁城の女官がやけにおとなしい原因がつかめた。
ゼロ革命後、朱禁城の女官は大量に入れ替えられた。入れ替え理由の1つは80歳を超えていた老齢者の引退。そして大宦官の息のかかった女官の放逐。
新たに入ったのは軍上がりの女官兵。これは女官という名の護衛である。
軍人上がりばかりでは朱禁城を切り回していけないので、天子に忠誠を誓った豪族達から女官を献上させた。
ある女官とそれを献上した豪族が、一族郎党もろとも洛陽から追放された。
追放理由は公表されているがいいがかりに近いような理由である。
あれこれ聞き合わせるとその女官は朱禁城内で逢引したらしい。
逢引ごときはどこの王宮の女官でもやっていることだが、忠臣にとっては許しがたいことだったのだ。
「清浄にして高貴なうえ愛らしい天子様にお仕えするにふさわしくない!」
そのまま一刀両断しかねない怒り様であったそうだ。
当時はまだ洛陽にいた洪将軍が力ずくで押さえつけなければ、女官をはじめ相手の男も一族も切り殺されていたというのが目撃した女官達の言である。

(他人の色事にそこまで過剰反応するとは、あの忠臣は童貞かもしれないな。あるいは不能もありえる。たしか彼は宦官の養子だったか・・・。そういえば先代のゼロも童貞だったという噂があったな。ふーん、つまりそういう仲だった可能性もあるわけだ。)

天子様の家庭教師にとんでもない推測をされているとは知らず、忠臣とも独裁者ともなり上がりとも呼ばれる男は本日もメガバイト単位で政務を処理している。

プロポーズ小作戦127兼天子様のお勉強会その5あるいは自習の時間

2010-07-23 22:41:38 | コードギアス
プロポーズ小作戦127兼天子様のお勉強会その5あるいは自習の時間

『自分で調べてごらんなさい』
歴史教師は天子に宿題を出した。

先生はずるいなぁ。宿題を出すだけで、自分は宿題をしない。
今、学生である人も、昔学生であった人も1回くらいはこんなふうに思った事があるだろう。

天子様の家庭教師は自分にも宿題を出した。その宿題の内容は16歳にもなって、離婚の意味すら知らないとはどういうことか?なぜ知らないのか?自分以外の教師達はどうしてそういうことを教えていないのか。
そもそも普通なら16歳にもなればそういう知識を自然に身につけているはずだ。
天子の場合には育っている環境が特殊だから、普通の子供のように周りのおしゃべりや雑誌、テレビの知識から知る事は出来ないとしても。いや、天子が閉じ込められて何も教えられずに育てられていたのは13歳までで、その後はメディアを見る事も自由に出来るはずだ。現に天子はパソコンを使っている。
ただし、朱禁城のサーバーにはかなり強い禁止項目がある。歴史教師である彼も大学の友人とデータをやり取りするときに、禁止事項に引っかかったらしく何度も送信停止措置を受けた。
あれは歴史の資料でそれほどたいした内容ではなかった。それなのに引っかかったという事は、どうやら離婚とか浮気とかが検閲事項であるらしい。だから天子もそういうことを知らないのだろう。
さて、それでは誰がその検閲を命じたのかである。

「やはり、彼か?」
歴史教師は口の中だけでつぶやく。
彼、黎星刻。
朱禁城の守護者。天子の第1の忠臣。先の革命の首謀者。今の大浄化の指揮官。中華の最高権力者。2代ゼロ唯一の同盟者。3代ゼロの同盟者。世界の3分の1を実質的に支配する男。
そして何より重要な要素は、天子を愛している男。
もっとも、この最後の項目を星刻は決して認めない。どんなインタビューにたいしてでも彼は固い声でこう答える。「私は天子様の臣下にすぎない。」
答える声は静かで淡々としているが、眼光は鋭い。たいていのインタビュアーはその視線に貫かれただけでそれ以上声が出せなくなる。



歴史教師は結構綿密に調べた。

確かに天子は年齢の割に小柄だし精神的にも幼い気がしていたが、離婚という単語すら知らないとはどういうことなのか?
女官達はそういう色ごとめいたおしゃべりをしないのだろうか?そういえば、朱禁城の女官はやけに静かだ。普通なら上官の目が届かないところでは若い女官達は仕事そっちのけでおしゃべりするものだが。

歴史教師は天子の過去を順に調べていった。
ゼロ革命後、天子は朱禁城に帰った。この時星刻は同行していない。彼はエリア11改め日本で入院中であった。
この時天子は自分だけが先に帰国する事にかなり抵抗したらしい。
非公式メディアに天子のこんな言葉が書かれていた。
「こういうときにはこいびとが側にいるのでしょう。わたし星刻の側にいたいの」
本当に天子がそういう言葉を言ったかは不明だが、日本人の目には天子の恋はまるわかりだったらしい。


この時星刻の入院が長引いたのは、悪逆皇帝による拷問の傷もあったがそれ以上に、裏切り騎士との戦闘時に受けた負傷が悪化したためであった。公式記録によると星刻ののどは組織が3割ほどつぶれていた。あの戦場で黒の騎士団の医師は出来るだけの応急処置をしたが、その後続いた激戦の中で悪化したらしい。
花のパレード後に開かれた国際会談、そこで星刻はシュナイゼルを完全に圧した。
その後の世界の方向性を決めたのはこの会談と言われている。その会談で中心になっていた星刻は今の世界の設計者と言ってもいい。だが、会談の後戻ったホテルで星刻は呼吸困難をおこした。幸いホテルに腕のいい医師が泊っていた。医師の診断によると崩れた組織が気管を圧迫していた。治療方法は有るが年単位の時間がかかる。
 星刻にはのんびり治療を受けている暇は無い。そこで、その医師を中心に緊急チームが組まれ狭くなった気道を回復させる手術を行われた。気道を確保する代わりに食道を半分近く犠牲にした。

最近天子は星刻と食事を共にしている。そのメニューが流動食めいたものなのは星刻の負傷が理由であった。


星刻の手によって朱禁城の真の主となった天子のその後の生活である。星刻はまだ日本で入院中の身であったが、病室内に高性能の通信システムを置き本国中華を始め、各国に指示を出していた。
病室には連日複数の見舞客が訪れた。その見舞客の顔ぶれはいずれも各国の指導者達である。時には数カ国のトップがはちあわせることもあった。この時期に世界では数多くの友好条約や商業条約が結ばれている。その多くがこの病室で作られた。ゆえにこの時期の条約を後世の歴史家は見舞外交条約群と呼んだ。
 見舞客の中には天子と一緒に人質とされていた各国代表達もいた。大国もあれば小国もあった。大国の代表は条約の目算が立つと自国から迎えを呼んで帰国して行った。しかし小国にはそんな余裕は無い。中にはいまだに本国との連絡が付かない者さえもいた。
 星刻はそんな小国の代表達を友好条約というお土産を持たせて本国に送り届けさせた。
 天子は帰国後少ししてから、星刻のすすめでいくつかの国を友好訪問している。この時に訪問先として選ばれた国はあの時星刻に帰国させてもらった国々であった。どの国も中華には恩義を感じており、天子が多少の失敗をしても全く問題にならない。天子はそうやって外交のコツを覚えていく。
 
歴史教師は本を閉じた。これまで読んだ資料では天子が男女の色ごとや愛や恋にも終わりや裏切りがある事を知るチャンスは無い。それが単なる偶然か、誰かの強い意図の結果かは、・・・(証拠は無い)。歴史教師は今日の調べたことは自分の日記にだけ書こうと思った。

イタリア地方のニュースから転載

2010-04-17 00:52:49 | コードギアス
イタリア地方の食卓事情

――原材料費の高騰をサクラダイトの品薄による値上げが後押し

 イタリア地方の代表的な料理として世界中で愛されているピザ。大戦後の食物価格の高騰が危機的状況を続けている影響で、本場イタリアでもピザが贅沢品になっている。
 ローマ長期滞在者のCCさん(17歳)は「私が日本にいた頃は、ピザの値段はかなり手ごろだった。チーズ君と一緒によく食べたものだ。本場の味を楽しみに来たのだが、こんなに高くなってしまっては、思う存分食べられない」と話す。

 実際、民間の世論調査会社であるGPF調査研究所の調査によると、最も好んで食べる料理はなにかという質問に対して、ピザと答えるイタリア系人の割合は、ここ5年間で34.5%から8.7%に減少している。

 専門家は、穀物価格が上昇した影響でピザの生地に使う小麦も値上がりしていると指摘する。EU連合農産物・食料品市場サービス研究所によると、小麦価格はこの3年で23.2%も上昇している。また、伝統的なナポリ風ピザには欠かせないオリーブオイルとモッツァレラチーズも同様に値上がりしており、統計のある3年前の価格に比べると、オリーブオイルの価格は10.9%、モッツァレラチーズの価格は14.3%上昇した。

 イタリア地方の農業生産者組合コルディレッティのセルジオ・リーニ会長は「これは、最近のエネルギー相場の変動に主な原因がある。われわれはサクラダイトがなければ、温室や牛舎を暖めることも、機械を動かすことも、製品を輸送することもできない。しかしイタリア地方だけでなくヨーロッパは、そのサクラダイトの8割を輸入に頼っている。サクラダイトの国際価格がイタリア地方の農業に及ぼす影響は極めて大きい」と話す。

 イタリア地方統計局によれば、さまざまな食材のこうした値上がりを受けて、ピザの価格はこの3年で24%も上昇している。だが、ピザ店の経営者などが加盟する「真のナポリピッツァ協会」の会長、アントニオ・パルチェ氏は、ピザの値段の中で原材料費が占めている割合は20~25%にすぎないと指摘する。「ピザ店を経営するには、原材料費だけでなく、人件費や店舗賃貸料などのさまざまな経費が必要になる。いまこうした経費のすべてが原材料費と同じように増大しており、店の経営者はそれに対応せざるを得ない」。


日本を中心に発展したピザの大手であるピザ・ハットのオーナーは以下のように語っている。
「このまま異常な高沸が続けば、地元の味はすたれてしまう。伝統を維持するためにも思い切った手段が必要です」
その一環としてピザ・ハットはヨーロッパへの進出を計画している。しかし貿易摩擦が問題視されている現状では、この進出は南ヨーロッパ当局に認められない可能性が高い。
ピザ・ハットは今後進出予定の他の産業の為にもなると、来月予定されている扇総理の外遊に期待している。

南ヨーロッパ当局も「このような異常事態を終息させ、人々の財布を守るためには、なんらかの措置が必要だ」と指摘する。

 昨日、イタリアの主要な消費者団体は物価高騰に抗議するため、「一日小麦製品ストライキ」と称して、商店やレストランで小麦製品を一切ボイコットするよう人々に呼びかけた。大手消費者団体の代表エンツィ氏は「政府には、非常事態宣言を発令して、行政介入による物価引き下げを行ってもらいたい」と提案している。

プロポーズ小作戦最後のあたりから

2010-04-16 21:46:47 | コードギアス
プロポーズ小作戦最後のあたりから


部屋は荒れていた。カレンあたりなら廃倉庫に必要最低限の荷物を入れて住んでいるだけとすぐわかっただろう。
もし天子がもう少し世慣れていれば、この部屋の様子を見ただけで、男の今夜の行動が衝動であったと理解しただろう。大切な天子を連れてくるのに何の準備もしていないなど、星刻にはあり得ない。
 今夜、まだ数時間前に天子は愛の告白を受けた。

「あなたを愛している」
いつも低く心地よく響く星刻の声。いつも落ち着いて穏やかな優しい表情を見せる星刻。それが今夜の彼は強い力で天子を引き寄せ、震える声で言った。
「愛している」と。

そのまま抱きしめられて、それを思い出しただけで天子のほほは紅潮する。
抱きしめられたまま、ここに連れてこられた。

実のところ天子はどうやってここに連れてこられたのかはっきり覚えていない。
「愛している」
こう聞いたとたんに天子の心はとろけてしまった。
周りの様子など目に入らない。

てんしさまのお勉強会4

2010-04-11 02:11:39 | コードギアス
てんしさまのお勉強会4
中途半端で置いておかれるメモ。



この問いはむしろ問われた教師こそ気の毒であった。




地形が入り組んでいたり山岳地帯があったりすると、距離的には近くても交流することはむずかしくなります。
交流が無ければ、遺伝子的にも文化的にも異なった存在になります。
ヨーロッパに国が多いのはその為です。これは戦争を増やす弱点になりますが、利点もあります。新しい技術や思想が一つの小国で受け入れられなくても他の小国で使えます。また、他の国が新しい技術で発展しているのを見て、受け入れなかった国も新たに導入します。そうしなければ戦争で征服されますからね。




教師は天子の疑問に答えず、本来の歴史の講義に戻した。鮮やかな原色の絹をまとった女官達。その女達からの殺気が消えない。
そして、授業の終わりご自身で調べてごらんなさいと小声で付けくわえた。

天子様のお勉強会3

2010-04-09 18:26:23 | コードギアス
天子様のお勉強会3

ヨーロッパの海岸線はとても入り組んでいます。
次の歴史の時間は教師のこの言葉から始まった。
半島が5つ、スウェーデンとノルウェー、デンマーク、イベリア、イタリア、ギリシアがあった場所です。今もそうなっていますね。

侵略国家ブリタニアが消え去り、平和を希求する国家ブリタニアになってから世界は大きく変わった。安定した国である中華にいてはあまり実感は無いが、ヨーロッパは再び独立と繁栄を目指して大きく変化していた。
ミスターEUと尊称されたEU幹事長が老齢の為死亡した後、EUはちょっとしたきっかけで分裂した。
 そのきっかけと言うのは離婚問題と子供の親権問題。

歴史教師は時事問題として、ヨーロッパ分裂のきっかけになった問題を解説した。
ここで教師は天子が信じられないほど世間知らずであるのに気が付いた。
「りこん?それはなんですか?」
赤い瞳をぱちくりさせて天子は真顔で尋ねた。

天子様のお勉強会続き2

2010-04-08 22:59:06 | コードギアス
天子様のお勉強会続き2

歴史の教師は赤くなった天子様に気が付いたが、そこは大人の分別で気が付かないふりをした。
 さて、鄭和の航海ですが1405年から1433年まで7回行われています。これがこのまま続けば世界の歴史は大きく変わっていたでしょうが、現実にはヨーロッパがその後をリードしました。船団の派遣を中止したのは宮廷内の権力抗争が原因です。
国際派だった宦官達が抗争に敗れて、変わって保守派の官僚達が権力を握ります。造船所は解体され外洋航海すら禁止されました。ただ一度の権力抗争の勝敗により、中華全部が世界から撤退したのです。
 先にも言ったように中華は世界でもまれにみる、政治的に大昔から統一された国です。この場合政治的に統一されていたことが裏目に出て、その撤退が正しい決断だったのかどうかさえ検証できなくなったのです。

ここで教師は少し虎の尾を踏んでみることにした。それを考えれば1国2政府体制も利点はあるのですと付け加えた。とたんに歴史教師は強烈な殺気を感じた。隣室で警備している女官兵達である。やはり朱王朝正統政府たる朱禁城内では上海政府の話はタブーらしい。

この歴史教師は漢族の血を25%受けている。産まれたのは上海。育ったのはフランス領、大学はブリタニア。彼の恩師はシュナイゼルの教師でもあった。彼自身もクロヴィスを教えていた。もしルルーシュがブリタニアで育っていればこの教師が教えたはずである。
国際的に高名な学者だが、中華ではしょせん雑種と見られることも多い。教師としては天子の家庭教師になることで中華本国民の偏見を少しずつでも失くしていければと思っていた。しかし、こののちすぐに彼は失脚する。彼自身の責任ではない。星刻が中華人では無かったことで国内が騒動とし、そのあおりを受けて辞職させられた。その彼を素早く亡命させ、客員教授の名目で受け入れたのは扇総理。これは扇の政治判断として最高の部類に入ると言われた。



では、この頃のヨーロッパの情勢は。
歴史教師は何も気が付かないふりで話題を転じた。
海賊とも冒険家とも山師とも表現出来るイタリア人、クリストファー・コロンブス。コロンブスはフランス、ポルトガル、スペインと各国王に仕え船団の為の費用を出させようとしました。
当時、今もそうですが、ヨーロッパは統一国家ではありません。あの狭い土地に多いときには1000もの国がありました。戦争や政略やらで増滅を繰り返し、今は約50の国家があります。
ここで歴史教師は地図を2枚出した。
1枚は天子がいつも見慣れた中華の地図。もう一枚はひとまわり小さい地図でヨーロッパの地図。
世界地図を印刷するとき印刷屋が嫌がるページはヨーロッパです。
せまっくるしいところにたくさんの国を描かなければいけない。それに国名も書かなければいけない。おまけにどの国もプライドばかり高くて、どんな小国でも自分の国が入って無ければ裁判沙汰にしたり出版規制してきたりします。
歴史教師が笑い顔を見せると天子もくすくすとかわいい笑顔を見せた。
笑った拍子に肩にかけられた上着が落ちた。
天子はすぐひらおうと手を伸ばす。だが、立ち番の女官兵のほうが早かった。
立ち番というのは24時間必ず高貴な方の側にいるのが役目の役人である。
天子が16歳になった後、昔からのお役目として立ち番が付くようになった。
立ち番は形式上何も見ないし、聞かないことになっている。
しかし、実際は見えているし聞こえている。
天子としては一日中見張られていることになる。
以前に天子はこの立ち番のことをナナリーにぐちった。するとナナリーも自分も色々困っていると言い、「どうしても一人になりたいときには外に出てもらうようにおねがいしているの」と教えた。それはナナリーにとっては入浴や排せつであった。天子は星刻がいるときにそうしている。
俗に高貴の姫は羞恥心を知らないと言われる。
産まれたときから面倒見てもらうのが当たり前の生活をしているから、そこに他人がいても恥ずかしいという感情が無い。
そういう点、天子は純粋な高貴育ちであった。


「中華とは逆の道を行ったのが当時のヨーロッパです。
大航海時代。新大陸。植民地。こういうキーワードが当時のヨーロッパの状況です」
天子が少し疲れたように見えるので、教師は少し早めに切り上げた。

メモ 他

2010-03-29 21:42:07 | コードギアス
土壌問題   窒素の枯渇 浸食  
塩性家 塩分が土壌と地下水に集積していく現象。
土壌水分中の塩類の濃度が海水の2倍に達した場所もある。
ある種の塩類が作物に害を及ぼすことに加え、塩類の濃度が上がると土壌水分の浸透圧が上がり、浸透による作物の根の水分吸収が困難になる。旱魃と同じように、作物に全般的な悪影響が及ぶ。

天子様のお勉強会続き。

「宦官と官僚の対立は中華にとって伝統的と言えるほど一般的です。たまたま現政権では宦官が欲悪の限りを尽くし、さらには売国さえ行おうとしたのです。歴史を振り返れば、専横を極めた軍や官僚を抑えるため、皇帝が宦官を支援した時代もあります。」
 歴史の教師は続ける。
「例えば、先ほど大司馬がおっしゃつた鄭和の時代です」と。
天子のほほはそう聞いただけでほんのり染まる。だが、あることに気が付いて次には違う理由で赤みが増す。最初は好きな人のことを聞いたから。次には、この教師は聞いていないはずなのになぜ知っているのかという怒り。つまり星刻との会話は聞かれていたのだ。おそらくは女官兵達にも。
 星刻はそれを知っていたのだろう。だから、触れてくれなかった。

あの夜があってから、星刻は自由に内宮に入れなくなった。

天子は思う。
確かに自分は成人した。もう子供ではない。それはわかっている。でもだからといって他の男はともかく星刻まで入れないなんて。
星刻は、私の大事な人なのに

プロポーズ小作戦126

2010-03-23 10:37:39 | コードギアス
プロポーズ小作戦126
この頃生きていた人のそれなりのやり方。

ここでまた少し寄り道する。計画性とは縁が無いサイトである。


天帝八十八陵の戦いの後、さらに色々あった後、中華と黒の騎士団は同盟を結んだ。
黒の騎士団は中華を舞台に世界を同盟者としブリタニアと対抗したい。中華は腐れた自国の改革の為に黒の騎士団を利用したい。さらにはブリタニアとの対抗の為に、世界同盟は中華の為にも必要だ。
 だが、そんな理由よりも星刻を決意させたのは(黒の騎士団は天子様の味方である)という一事であった。
それが無ければこの男にとっては何もないのと同じなのだ。
天子は黒の騎士団の女性陣に懐いた。
その中でも特に近しい存在になったのはラクシャータである。

天子にとってラクシャータは物知りの学者さんである。わからないことはなんでも訊いてくる。
例えば、「よーろっぱはここが昼のとき、暗いのでしょう。星刻は危なくないかしら」
星刻は根回しのためにヨーロッパに飛んだ。その星刻が危なくないかと天子は心配している。
「暗くてもできることはあるし、昔取ったなんとかっていうじゃない」
ラクシャータはこう答えた。
天子はこの返答に満足した。実のところ「(具体的に)どうするの?」と訊かれたら答えに困るラクシャータであった。
なにしろ星刻は根回しのためとはいえ、古なじみの女達を抱きに行ったのだから。
今のところ天子は返事をもらえるだけで満足している。逆にいえば大宦官達がいかに天子に何も教えなかったかである。

大宦官の筆頭であった高亥はヨーロッパに行く時は必ず星刻を同行させた。
名目は護衛である。実は護衛以上に大事な任務があった。
それは各界の大物やそのご婦人方の相手をすること。
何の相手かは16歳未満の読者を配慮して単語にはしない。
本場の後宮で教え込まれた星刻の技はヨーロッパのご婦人達をとろかした。
一晩に三ヵ所もまわることもあったらしい。10代にしかできない体力技である。
そのおかげで星刻はヨーロッパ園の制財界に強力なパイプを持つことができた。
ルルーシュはそのあたりの事情を知らなかった。知っていたら、何かが違っていたかどうかはわからない。

この頃ヨーロッパはすでにブリタニアの攻撃を受けていた。政府関係者や財界人は地下にもぐり、まともなルートでは接触すらできない。星刻は自分の個人的ルートを利用して世界同盟を実現した。



黒の騎士団と中華の間に同盟が結ばれた夜、ラクシャータは星刻と寝室を共にしている。星刻の夜の腕前であるが、ラクシャータの手記には具体的な単語は無い。
書いてあるのは神虎と星刻に偶然では済まない“縁”を感じたこと。原語の英文ではリンクと表現されている
一方の星刻はラクシャータの寝室で祖国インドに対する彼女の思いを見た。
ラクシャータの寝室の天井はオレンジ色。壁は白。床は碧色。白い壁には珍しいタイプの時計があった。一見ただのアナログ時計なのだが、よく見ると文字盤が24個ある。つまり24時間タイプのアナログ時計である。

たいていの男はこの時計を見ても珍しがるだけだ。
それからすぐ寝台に直行する。それでなければ酒になる。
今までこの時計のこの部屋の意味に気が付いた男は誰もいなかった。
ラクシャータは星刻にも期待していなかった。しかし、星刻は気が付いた。この部屋の床と天井の色の意味と時計の意味を。それは古のインドの国旗のデザインであった。
オレンジはヒンズー教、緑はイスラム教の色。白は両者の調和や和解を示す。壁に掛けられた時計は実は車輪のデザインで24本の軸は1日の時間を表す。
この国旗が使われなくなって久しい。インドの完全独立を目指す過激派の統一インド戦線でさえもこの国旗を使っていない。過激派によればこの国旗は妥協の産物であるからだ。

すでに過去のものとなった国旗は、国が自国のあり方を受け入れてその中で最善の道を探ろうとした時代の墓標である。

天子様のお勉強をのぞき見する

2010-03-22 22:59:46 | コードギアス
天子様のお勉強をのぞき見する

人類の進化の中で中華は常に先を行っていた。農業の始まり、磁針、火薬、印刷術、航海技術。すべて中華が起源である。
 さらに15世紀の初めにはアフリカまでにも大船団(鄭和の大航海)を送っている。しかし、中華が世界のトップを走れたのはこの頃までである。この後、中華はヨーロッパにリードを奪われる。
 「中華が世界から脱落した理由は宦官でした」
星刻はテキストを机の上に置いたままゆっくりと続けた。
「宦官がお船を壊してしまったの?」
「いいえ、大船団の艦長は宦官でした」
「宦官が?」
天子の瞳にびっくりマークがうかぶ。
天子の知っている宦官は国の財産を私利私欲のためにむさぼるばかりであった。
ぶよぶよと太り甲高い声でしゃべる。
天子の知る宦官と海の男のイメージは重ならない。そもそも天子は船をあまり知らない。
天子の知る船は空飛ぶ船、斑鳩である。斑鳩と思いだしたとたんに天子の心はあの日を思い出す。

斑鳩で、星刻は。
天子の心はあの結婚式の日に戻る。
つらかった。こわかった。でも星刻が来てくれた。

天子の手は無意識に約束のかたちをとる。
重なり合った指先。
思い出しただけで天子のほほはくれないに染まる。
でも、今は天子の指先に星刻はふれない。

「天子様」
ふわりと柔らかくて暖かいものが天子の肩にかけられる。
「冷えてまいりましたので」
天子を包むのは星刻の上着。
わずかな金属臭を天子は感じる。

「天子様、お部屋にお戻りください」
バルコニーの二人に女官長が声をかける。

歴史の授業中、神虎の降下音を聞いた天子は「どうしても会いたいの」と女官長にわがままを言い、星刻を呼ばせた。
以前のような2人きりは許されない。30人もの女官兵に見張られてのお茶の時間。
天子の心は満足していない。もっと会いたい。話したい。
抱かれたい。
でも、星刻は今の状態に何も思っていないように見える。


不満なのは私だけ?好きなのもわたしだけなの?
星刻の胸を叩いて彼の思いを訊きたい。

メモ代わり

2010-03-22 15:31:52 | コードギアス
中華は世界で一番人口の多い国である。今日の中華は政治的にはともかく…(上海政府の問題がある)・・・文化的、言語的には、一つの国である。というのが国際的な認識である。
 歴史をたどると、中華は紀元前221年には政治的に統一されていた。それ以来、多少の混乱はあっても統一状態が続いている。文化面では文字システムは最初から同じ物が使われていた。(過去形なのは今日の中華ではすでに漢字識字率が2パーセントを切っているためである)

メモ代わり

2010-03-22 15:24:04 | コードギアス
戦争が文明を進化させるとはよく言われる言葉だ。例えば自動車であるが、1769年に最初に作られてから150年近く経った1905年になっても高価なおもちゃににすぎなかった。交通の主力は相変わらず馬と汽車であった。それが、第一次世界大戦でアメリカ陸軍がトラックを主力としたために、社会に自動車が浸透した。その後、50年で馬車や荷車は自動車に駆逐された。
最近の例ではナイトメアがこれに該当する。その進化や社会への浸透は自動車よりはるかに早く、最初のナイトメアと言われるガニメデから兵器としての金字塔と言われるランスロットまで20年である。

プロポーズ小作戦125

2010-03-20 14:22:37 | コードギアス
プロポーズ小作戦125
この頃生きていた人のそれなりのやり方。

ここでまた少し寄り道する。計画性とは縁が無いサイトである。

シェンマー、これが中華におけるラクシャータの正式名である。
中華の守護神である神虎を生みだした者という意味で神母、中華の読み方ではシェンマーになる。
天子に公式に認められた中華名を得て、世界の3分の1を抑える男の信任を得て、さらに英雄ゼロがラクシャータに愛機の整備を任せている・・・世間ではそう思っている。
今や科学技術界でラクシャータの意思に逆らえる者はいない。
テロリストの手伝い人から悪逆皇帝の捕虜、そして死刑囚。それが今は科学技術界の天下人。
この世をばわが世と思う望月の・・・とでも唄い出しそうなラクシャータなのだが、実際にはこのところ彼女の表情はさえない。

ラクシャータの部下である研究員達は所長の様子をいぶかしく思っていた。
チャウダー所長は何を気に病んでいるのか。
組立てが悪くて機動が安定しなかった白虎は、工場の人員を大幅に入れ替えることで解決した。(現在、白虎を造っているのは日本人ばかりである)。
こういう点は最高権力者が付いているのは対応が早くて助かる。
研究予算も潤沢だ。
来月からは白虎に続き、青竜のテストも始まる。テストパイロットの黒山羊もすでに待機している。
最高純度のサクラダイトも日本から直輸入された。
日本がサクラダイトの輸出に規制を掛けるというニュースを見たが、他の国はともかくここ蓬莱研究所だけは別枠にしたようだ。
そんなこんなで気に病むようなことは無いはずなのに。
蓬莱研究所の天下人は、鬱屈を抱えていた。それはラクシャータの生まれ育ちや、神虎の生まれにも関係する話であった。