金属中毒

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プロポーズ小作戦56

2009-04-29 15:25:56 | コードギアス
プロポーズ小作戦56

不安なとき、落ち込んだときには信頼している人の元で、気持ちを休めたい。これは誰にでもあることだ。

ただ、スザクの場合うかつな所には行けない。なにしろスザクは悪逆皇帝の騎士で、さらに最初にフレイアを撃った大罪人だ。
ゼロの中身が罪人だと知れたら、今はまだかろうじて大きな戦争は起きていないのに、また世界中が混乱する。
スザクはゼロの仮面を被った日から、ずっとそう思っている。だからゼロの正体を含めゼロ・レクイエムの真実に気が付いているらしい人たちにもゼロとしてしか接していない。
とは言っても、実はこの時期ゼロ・レクイエムの真実をある程度察している人は結構多かった。ただし気が付いた人はむしろそれゆえに、より強く悪逆皇帝を非難した。例えばEU連合北部ルーマニア地区代表もその一人。彼は日記に書いていた。
《私たち、超合衆国に参加した国の代表は2ヶ月の間捕虜として捕まっていた。その間、拷問も尋問も無く、むしろ保護されているようであった。
私たちは捕虜という立場に立って初めて腹を割った話し合いをできた。この2ヶ月間はもし生きていられたら世界がどちらをむいて歩き出すべきかの話し合いの場所であった。もし、かの悪逆皇帝がそれを意図していたなら、   破れがあり、読めない。   
この2ヶ月で特に中華の天子の変化が一番大きかった。今までまともな教育を受けていなかった天子には、世界のトップの本音は大きな刺激になったのだろう。
付け加えれば天子の存在が話し合いを支えた。対立を続け口も聞かない代表達もこの幼い天子の「どうしてそうなるの?」の言葉には返答したくなる。
美しさは暴力というが、この愛らしさも十分に破壊的だろう。今はまだ無自覚だが、10年もすればこの幼い君主は世界を手玉に取るかもしれない。》
日記は彼の死後100年後に公表され、悪逆皇帝にたいして、同時代人の視点から新たな評価が加わった。



2020年7月20日、千葉凪佐は逝去した。
藤堂と結婚してたった数ヶ月。軍時代から悩みの種だった生理不順が何とかならないかと、医師を訪ねたのがきっかけ。子宮が変形していると言われ、さらにかなり進行した卵巣がんが発見された。
子宮と卵巣を全て取らなければ命に関わると言われた千葉は、藤堂にはただおできのようなものを取るとしか言わずオペ室に入った。千葉のオペ中に世界的な停電が起きた。
停電から3分後、総理官邸から「他のことは後でいいから病院や医療機関の電気を回復しろ」との緊急命令が出たが、扇の想定よりも事態ははるかに深刻だった。
軍事総官の藤堂も軍の施設を開放して、ゲットーの難民を収容させ熱死の被害を最小限に抑えた。命令と復唱が飛び交う中、妻の死亡を藤堂が聞いたのは2日後だった。

記録的な暑さの中、死体はたちどころに腐敗する。多くの死者が家族の到着を待たずに火葬された。伝染病を防ぐための、やむをえない処置である。そんな中、藤堂の妻であり、英雄の一人でもある千葉の遺体は特別扱いされドライアイスにおおわれ原型を保っていた。



千葉の死亡後、藤堂は総監職を辞した。総理としての扇は藤堂を辞めさせたくは無い。だが、個人としてはこれ以上藤堂を縛る事はしたくない。もう彼は失いたくないものを全て亡くしたのだから。
「これからどうされるおつもりですか」
考えに考えて扇が口にしたのはそれだけ。
藤堂は後任人事が決まるまでの代行として、三木光洋を指名していた。すでに副総監の地位にある三木を指名するのは理にかなっている。
次の総理が新しい人事をするまでこの体制でいいと扇も思った。



藤堂が昔の道場の跡地に帰ったのは2020年8月である。