金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

プロポーズ小作戦90

2009-07-31 22:16:23 | コードギアス
プロポーズ小作戦90

ルーズベルトという大統領がいたことをご存じだろう。アメリカ唯一の4選された大統領であり、唯一の身体障害者であり、某イース人並みに日本人への区別(差別ですらない)意識の強さで知られた政治家。
直接の子孫かどうかは不明だが、ナナリーは法律家のジーク・ルーズベルトを公式の謁見に呼んだ。
法に詳しい彼に、今世界中の注目を集めている≪赤い水≫のトラブルにブリタニアが介入できるかを問うた。

ジークの答えは「法的には可能。政治的には無能」


プロポーズ小作戦89

2009-07-30 05:15:09 | コードギアス
プロポーズ小作戦89


にらみあいはもう5日も続いている。
その間、インド藩王連合軍は幾度か陣形を変えた。
「誘いだな。だが、付き合ってやる義務はない」
星刻はそう言い切り、白虎部隊には不動を命じる。
侵略皇帝シャルル、悪逆皇帝ルルーシュ、そしてゼロ革命。
永遠かと思えるほど長く続いた戦いの歴史。
この時期、世界は流血に厭いている。

「先に手を出したほうが悪役になる」
それは誰が見てもわかる構図。
だが、にらみあいを続けても解決しない。

暴走したがる現場、統制したがる上層部。どうもこれは人類発生以来の伝統らしい。
ことに指揮系統が1本化していないインド連合軍はしばしば突出しかけた。
現状、それでも戦闘が始まらないのは中華の白虎部隊が完全に統制されているおかげである。
「傭兵上りや、即席兵ばかりをよく訓練しているな」
世界中がこの小さな島々に注目している。ブリタニア軍人にして、ナナリー皇帝の姉婿であるギルフォードも書類を片手でさばきながら報告を聞いた。
その報告に被災した島民をヴァインベルグ卿の冒険仲間が保護しているという内容があった。
今では軍に復帰しているジノだが、つい先日まで世界中を駆け回っていた。そのとき冒険を共にした連中がダイビング目的で島の近くにいたらしい。
(ほう、偶然?にしては出来すぎているが)

中華とインドのトラブルはナナリーの耳にも入っている。
メディアを通じても、公式な報告でもあれこれ聞いている。そしてなによりもかわいい天子から相談があったのだ。天子の相談は公式ではない。
内容は恋する女の子の悩み相談である。
ただし天子の立場と恋の対象の立場が、純粋な恋の悩みを政治的な問題に変えてしまう。
このときの天子の相談は好きな人に手料理を食べてほしいというものだった。


プロポーズ小作戦88

2009-07-27 06:25:04 | コードギアス
プロポーズ小作戦88

緊張感からか、無臭のはずのコクピットに金属臭を感じた。
小竜にとってこれが初めての実戦での出撃だ。
白虎のコクピットは完全密閉式で常時快適な環境が保たれている。それなのに汗で操縦桿が滑りそうなのは小竜が大量の汗をかいているためだ。
「脱水症になりそうだ」
通信機は切っているので、一人声に出す。
白虎の計器がわずかに光った気がする。きっと気のせいだと小竜は思う。
ときどき思うのだ。白虎には
心があるみたいだと。
人に聞かれたら笑われそうだから、誰にも言っていないけど。

「閣下のご恩にむくいるためにもがんばろうな、白」
また、計器が光る。返事をしてくれているようで、孤独感や不安感が減っていくのがわかる。

小竜の言う閣下は黎星刻である。
漢族の血をひかない生まれでありながら臣下筆頭たる大司馬になり、あの悪逆皇帝と戦い世界を守った英雄。正義を体現するゼロのただ一人の対等の同盟者。
黎大司馬、神虎将軍とも呼ばれる人。
小竜が軍に入ったのは、あこがれの英雄を少しでも近くで見上げたいから。
雑族と蔑称される弱小部族生まれの自分では、軍でもろくな扱いをうけないと知っていたけれど。それでも軍に入った。軍で複数の体力テストや適性検査を受けたあと、エリート部隊である白虎のパイロットに抜擢された。
黎閣下ご自身の指名で抜擢を受けたと聞いた時は、廬山の大滝を昇り上がり、昇竜になったような気持ちだった。

プロポーズ小作戦87

2009-07-26 13:54:28 | コードギアス
プロポーズ小作戦87

公式の理由として、中華軍には「違法に侵略された自国領を防衛し、住民をまもる」となる。
侵略者の名にインドの名を出さないのは、この時期に大規模な戦闘を避けたい中華の事情である。

中華の白虎部隊は一応形を成してはいる。
だがパイロットは即席だし、しかも9割が外国人である。
それでも一糸乱れず隊列を組んでいるのは、操縦補助プログラムが全力でサポートしているおかげである。
しかし、サポート分の負担は神虎にかかっている。現に普段なら自動操縦で現地まで飛び、その時間を仮眠している星刻は今回自分で操縦している。


一方インドもサクラダイトは欲しいが今回のそれが中華と正面衝突してまで手に入れるほどの価値があるのか、まだ疑問を持っている。

現状、両国軍ともにらみ合いである。

プロポーズ小作戦いいわけ

2009-07-25 16:16:49 | Weblog
プロポーズ小作戦いいわけ
少し、間が空きました。以前から調子が悪かったマイパソがとうとう本格的に故障しまして、やむを得ず買い換えたのですが、いまだキーボードの感覚がつかめません。
タワー型とノートには性能の差はなくても、大きな違いがあるようです。同じJIS配列でも横幅がせまい。手の動く範囲が狭い。
ついでに言うと新しく買ったばかりのマイパソは、製造メーカーが余計なごみプログラムを大量に付けていて、それを削除してワードやエクセルをトップに挙げてパワーポイントをいれて・・・一日つぶれました。

さて、気分を変えて先日指摘されましたが、小生の話には何気なくトイレの話がでてくるねと。そう言われれば、ほかの人のページではあまり出さないようですね。
これには小生の体験と経験が原因してます。以前内臓を削り取ってから、必ずしも排泄がうまくいかない。
でもそれを人に言ったことはないですね。
前にホームヘルパーの研修でも思ったのですが、個人にとって自力での排泄が最後のプライドの砦だと。
それだけに鋼の錬金術師のハボックが生き残ったとき、彼の排泄がどうなっているか、気になるのです。
ナナリーの場合は神経が生きていましたが、ハボックは完全に切れている。つまりいつ排泄されるのか本人にもわからない。
ひとことでいうと垂れ流しになりかねない。
じつは銀のシリーズでエド救出にハボックを活躍させると決めた時、その問題をどうするかで悩みました。今は方法がわかりました。ギアスが一区切りしたらそっちも続けます。高圧浣腸は鋼の時代にもあったんですね。あれ、いろいろ危険なので、今は使われていませんけど。
さて、扇がウォッシュレット完備社会を目指すと言ったのは、わかりやすい象徴としての意味です。それを目指すということは社会の基盤整備が必要。そして、人口配置を正確に把握しなければならない。当然水道も下水も浄化システムも。
今後の日本の復興を一言で表したのが≪ウォッシュレット完備社会≫です。



それに、国家目標に便所改善を挙げている国が、今後軍事国家になるとはだれも思わないでしょうし。

プロポーズ小作戦86 

2009-07-20 16:50:20 | コードギアス
プロポーズ小作戦86 

あるマスメディアは伝える。
「島の面積を埋め尽くすほどのナイトメアが集積しています。東方から来るのは中華の白虎部隊。純白の機体に青い空の色が映えます。輝く海の青とあいまして、観光ポスターにでもしたいような構図です」。
そこまで一息に言って、若いアナウンサーは一息ついて付け加える。
「これが戦争のためでなければ。世界はこんなにも美しいと言えるでしょう」



ここで、カメラは切り替わる。
「南岸に位置するのはインド軍、各藩王国軍の連合軍です。
公式インド軍ではありません。
現状、インド公式軍および政府はこの件を黙殺しています。」



さらにカメラは切り替わる。
「映像ブリタニアが、世界に送る。これが発見されたサクラダイトの新種。ご覧の通り、真っ赤な色をしています。現地では悪魔の血と呼ばれ、すでに多数の死者が出ている模様です」



テレビ日本からは、あくまでも新種(といっていいかもわからないが)のサクラダイトの調査隊の記録係として来ている。サクラダイトがらみの話ではいつ日本にも火の粉が飛ぶやらわからない。「ここは慎重に」と扇総理からじきじきに連絡があった。
今は日本の復興に全力を注ぎたい。
扇曰く。
「離島でもウォッシュレットが完全装備される社会」
それが日本の復興目標となっている。

プロポーズ小作戦99あるいは

2009-07-20 13:55:28 | コードギアス
プロポーズ小作戦99あるいは
番外


東の窓 風 遠くから見ている

月に秘密を預けたい、あなたのところに飛んでいく。あなたにだけ見せる銀の翼を広げて。





天子の歌声「星夜」にある。この歌は死・別れを強く暗示している。
おそらく星刻はゼロ革命の後、中華を安定した形で漢族支配下に戻し、宦官を廃止しその眷属や、漢族と同化せず、対立を続ける部族を殺し終え(あの中華を取り押さえるにはこの方法以外ないだろう)、その全ての責任をとる形で引退、あるいは引退前に病状が悪化し死亡したと、推察できる。


その後,幼かった少女は皇帝として中華に君臨し、ナナリーと並び立つ唯一の支配者として東方世界を支配したのだろう。

皇帝となった彼女の手には生殺与奪を自由にできる多くの駒が常に握られていただろう。
生前の星刻が決して天子に見せなかった世界の影。
それさえも支配して、天子は完全な皇帝となる。



「本当に望むたった一人の人が奪われたなら、世界全てを手にしても満足できない」
それが、その人自身の意思だったとしても。
世界を支配し愛した東西の皇帝の偽らざる想い。
強い共感と真実を共有することが、世界を支える。


東方の皇帝と、西方の皇帝。時には平和にチェスを打ち合い、時には手の中の駒で戦争というチェスを打ち合って。


ゼロ・レクイエム、世間的にはゼロ革命の真実を知る者は死んでいく。真実をかかえたまま。
皆先に逝く。寿命という許しを得て。
残されたのは、世界を半分ずつ抱いた少女達。


彼女達の許しはまだ来ない。


プロポーズ小作戦97

2009-07-20 13:39:09 | コードギアス
プロポーズ小作戦97
花笑
はなえみと読む。
蕾がほんのわずかに開きかけて咲き初めることを表す。
転じて、幼い童女が少女にそして恋を知り染める事も指す。

金属中毒はあえて、この題名のみを次の98章にあげる。
それが何故か、その間に何があったかは言及しない。



プロポーズ小作戦85 

2009-07-10 01:46:17 | コードギアス
プロポーズ小作戦85 

2000年代にはインド領だった島々だが、その後インドは中華に侵略され、[実のところは都合のいい部分だけで独立したい藩王達が当時の中華宦官と組んで茶番をうったのだが、]その加減でこの島々は一応中華預かりになった。
形式的な国名が変わっても島民の暮らしは変わらない。島民は半農半漁の生活を送り、ろくに文字も読めない。平均余命は35歳である。いわば世界から忘れられた土地であった。

世界に神がいるなら、きっと公平なのだろう。資源に乏しいこの島に高純度サクラダイト、その色から赤い石と呼ばれる貴重な資源を配分したのは。

世界に神がいるのなら、きっと公平だ。誰に対しても悪意に満ちているという意味で。そのフレーズを星刻は思い出した。ずいぶん昔に読んだ本だ。星刻はブリタニア語で読んだが作者は日本人だった。

プロポーズ小作戦84 アンダマン諸島とニコバル諸島

2009-07-07 09:58:34 | Weblog
プロポーズ小作戦84 

トラブルが起きたのは国境が入り乱れる南洋。2000年代の世界地図では、ミャンマー・タイ・カンボジア・ベトナムかひしめき合うあたり。
ギアス世界ではミャンマー・タイはずいぶん以前に中華に統合された。ただし、タイは形だけでも王制を維持している。余談であるがタイには20歳の独身の王子がいる。
この辺りは独立運動が盛んで、北のキルギス・タジキスタンと並び星刻の胃痛の原因である。
国際的にもブラックマーケットの中核地点で、表に出ない物資が大量に行きかう。あのシュナイゼルがトロモ機関をカンボジアに置いたのは、この辺りがそういうモノの最大マーケットであるからである。
そんな火薬庫のような土地のすぐ傍にアンダマン諸島とニコバル諸島がある。アンパンマンの親戚みたいな名の小さな島だが、よりによって高純度のサクラダイトが発見されたのである。
この発見を島の住民は悪魔の血と呼んだ。

プロポーズ小作戦83 

2009-07-06 09:13:28 | コードギアス
プロポーズ小作戦83 
2021/1/28深夜

「人魚姫は自分の城を出てみたかったから、王子を好きになったのを理由に魔女と契約したのよ」
星刻は何も答えない。実のところ一瞬で変わった天子に圧されて、声が出ない。
天子にはそんなことはまだわからない。だから心の波打つままに言葉を続ける。
「本当に王子が好きなら、王子を海の城に連れ帰るべきなのよ」
神楽耶に似た口調で天子は言い切る。
「海のお城で王子を幸せにする自信が無かったから、何があっでも幸せにできるほど愛していなかったから、人魚姫は自分を代価にしたの」
代価などという単語がさらりと出てくるあたり、このところの天子の読書内容がわかるというものである。
つまりは天子の考えでは、人魚姫は愛が少なすぎた。それは王子に対してだけではなく。自分自身に対しても。だから欲望と引き換えに自分の生きる世界を離れた。
人魚姫は愛されてはいた。父王たる海王にも姉妹達にも。その姉妹達の犠牲に対しても人魚姫は応えず自滅した。王子はそれを知ることさえなく幸福になった。これでは悲恋というより、愚劇である。
天子の言葉を文章に訳すなら、上のようになる。

星刻はゆっくりと天子をベッドに降ろした。
その手触りの柔らかさが、星刻に教える。天子はもう子供ではない。
法的にも16歳。そして心ももう幼い日のままではない。

「天子様」
ようやく星刻が口を開く。
「明日の式典に差し支えますから、もうお休みください」
言い終えると星刻は丁重に辞去の挨拶をする。
このときちょうど星刻の胸ポケットの緊急用に携帯が音を立てた。
「私は公館に戻ります」
どうやら、星刻が直接仕切らねばならないほどの何かが起きたらしい。
「星刻は私と一緒に水の底に来てくれる?」
自分を人魚姫になぞらえての問いかけ。
天子はただ一言が欲しい。あわただしく立ち去ろうとする男に強く問う。
「お守りいたします。永久に」
星刻の応えはあのときの言葉。


プロポーズ小作戦82 

2009-07-06 04:39:33 | コードギアス
プロポーズ小作戦82 
2021/1/28深夜

「靴の職人を変えられたのですね」
宝玉のビーズでかわいらしく飾られた以前の靴とは違う。すっきりした刺繍のみのそれは大人のデザインだ。

いつもの優しい星刻の声。しかし、言葉には意味が無かった。天子にとっては。
たった一言。それだけが欲しい天子。
その先のことはまだ天子は知らない。
ナナリーによれば、その先は星刻が教えてくれるはずである

一方の星刻にとっては、意味のない言葉ではなかった。出合った頃、天子はまだ幼くて、星刻の宝物の天子の靴はどれも片手に左右両方が乗ってしまう。
この愛らしい御足が自由に歩いても、決して傷つかない世界を造る。
それが星刻の望み。この男の想いには、野望や妄執の方が言葉としては似合う。

そして今宵、成人した天子の靴は星刻の手からわずかにはみ出た。

靴を整える途中で、止まってしまった星刻にじれて、天子が先に口を開いた。
「人魚姫は王子をそんなに好きではなかったのよ」
それは星刻が初めて聞いた声、強い意思を持った女性の声。

プロポーズ小作戦81 

2009-07-05 14:48:16 | コードギアス
プロポーズ小作戦81 
2021/1/28深夜

星刻はどうするかしらと、そっと見上げる。どきどき波打つ心臓の音。ふと星刻の声が止まると、天子に聞こえるのは自分の心音だけ。その音さえも、好きだと言っているように聞こえてしまう。
(深い透明な黒)
ずっと前に詩や文学の教師が、たまたま入ってきた星刻を見てそう評した。
教師によると本当に純粋な水は、全ての波長の光を吸収し尽くし、深い黒に見えるという。
黒河はその透明さゆえに黒の名を得た。もっともそれは昔の話で、今では水源が枯れかけ、どこが黒河だったかさえはっきりしない。

今黒に写るのは白。星刻は自分の髪を見ている。こんな時小さい頃は、いつも優しく漉いてくれた。今宵、天子は動かない彼の手に不満を感じる。
私を見て。天子は星刻に視線を合わす。
星刻は一度瞬きした。
目を開いたとき写っていたのは、優しい桃色。中華の誇る桃花園を刺繍した室内履き。
星刻の視線は天子の足元を見た。
まるで、彼女の瞳を見ることに耐えられないかのように。
天子は泣きたいような怒りたいような気分になる。
神楽耶様やナナリー様に聞いた話や、本の知識によると、この後は強く抱きしめられるはずなのに。
星刻は動かない。
『あちらは立場の差や年の差を気にしておられるのでしょう。でも、そんなものなど乗り越えてこそ恋ですわよ。天子様。だから、ぜひここらで天子様からラブアプローチしましょう』
『いろいろお考えのようですし・・・(そういうところまで、お兄様に似ていらっしゃる)。以外に急なイベントやアクシデントによわいかもしれません。天子様が強く迫ればうまくいけば押し倒せます』
いつの間にか2人に増えた恋愛ナビゲーターの期待を込めた予測もむなしく、星刻は動かない。

プロポーズ小作戦80 

2009-07-02 23:19:26 | コードギアス
プロポーズ小作戦80 
2021/1/28深夜
人魚姫と、同胞の犠牲

愛を得られなかった人魚姫は魔女との契約により海の泡になって消えねばならない。しかし、絶望に浸っていた人魚姫を救おうとするものが現れた。姫の姉妹達。姉妹達が魔女に代価を払い、人魚姫が結んだ契約を破棄する力を得たという。王子を殺しその血を浴びよ。そうすれば契約は無効になり、人魚姫は助かる。
王子の寝室でナイフをかざす人魚姫。


ここで天子は星刻に抱きついた。天子に他意はない。小さい頃からそうだった。幼い天子に他意はない。7匹の子ヤギが狼に追い詰められる場面や、3匹の子豚が食べられる場面で幼い天子は星刻に抱きついた。天子の気持ちは幼い頃と同じ。
いや、違う。すでに天子は愛や恋の駆け引きを知っている。
天子は知っている。小さい頃と同じ事なら星刻に抱きついてもいいと。それが、星刻にとっては違う意味になってしまうとわかっている。それなら星刻はどうするかしら。
私は星刻が好き。星刻も私をすっと守ると言ってくれた。でも違う。私が欲しいのはそれだけではないの。
大宦官達に追い詰められた、3年前の冬(2018年12月)天子は叫んだ。
『私はあなたと外に出たい。あなたといたい』
爆撃の中、天子の声は半分ほどしか伝わらなかった。

半分でも星刻の思いは満たされた。ここで天子様の盾となって死んでいいと、甘美に酔うほどに。その星刻の酔いを一瞬で醒ましたのはゼロ。結果的にうまくいったのだから文句を言うつもりは無いが、それでも星刻はほんの少し不満がある。あの時、あの甘美な思いを抱いて死んでいたらと。なぜなら、これから星刻は計画通りに、天子の傍を離れるのだから。
それが(天子の安全と幸福を守る一番いい方法だ)と考えぬいた結論だから。