金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

斑鳩縦ロール

2008-07-31 23:35:12 | コードギアス
斑鳩縦ロール

あの扇が温厚で親切で無欲で、指導力は皆無と思われていた扇が、初めて自ら命じた作戦。それが斑鳩縦ロール。
前方にしかついていない艦首波動砲。それを上方の敵を打つために使った。敵はアヴァロン。文字通りの旗本艦決戦である。
作戦自体は単純だった。波動砲は上には打てない。それなら斑鳩の方向を変えて上に向ければいい。
かくして「全館に命令する。これより斑鳩は上を向く。落ちないようにしっかりつかまるように。」
「はぁ、なんだそりゃ。小学生のお遊戯か」
と気の抜けた反応をしめす玉城を無視して、扇は自ら航海長席に走り、操縦桿を90度傾けた。

結果、見事に斑鳩は上を向き、アヴァロンに波動砲を打ち上げた。アヴァロンは50パーセントを超えて大破し、もはや旗本艦として機能しえなくなり迷走した挙句自爆した。
これをきっかけにブリタリアを倒せるという気風が世界に爆走した。
エリア独立宣言、さらには国内での分裂騒ぎを抑えるのに国力を疲弊したブリタリアはついに帝国制度から王制度への転換宣言を発布。これをもって革命は成し遂げられた。


無欲で無能な男が、世界を蹴飛ばし転がす事もある。




単語表現がヤマトなのは入力者がそういう世代だからです。調べられたら入れ替えます

上海事変 その4 桃華園にて

2008-07-31 22:39:34 | コードギアス
上海事変その4
星刻が天子を連れて行ったのは小さな桃華宴。あいにく花は盛りを過ぎていたが、それでも遅咲きの品種が優しい色に空気を染めて、天子を喜ばせるのには十分だった。
シンクー、シンクー
淡い肩衣をまとった天子が桃の木と戯れるかのように走り回る。肩衣がふわりと風の形にうかぶ。はしゃぐ声が春の風に舞う。
破邪の木ともいわれる桃の老木に寄りかかり、シンクーはこの10日間まったく浮かべたことのない表情になる。穏やかな微笑。この10日間、黎武官は上海の戦場で殲滅戦を指揮し、反乱軍の指導者を文字通りの意味で一刀両断した。

神虎での白兵戦。体調を考えれば絶対に避けるべき事態だった。しかし、司令官としての立場が黎星刻に戦いから逃げる事を許さなかった。相手の司令官も同じような立場だったのだろう。
鋼剣で切り裂いた一瞬、見えた相手の顔。若かった。いや、まだ子供だった。15か16ぐらいか。黎星刻自身も軍では小僧扱いされる年だが、さらに若い。純銀の髪、濃いブラウンの瞳。雑種と蔑称される立場の子供だった。雑種たちが居場所を求めて、生きられる国を作ろうとして、上海の乱は起きた。だが、政治的思惑や経済的利益が錯綜する中、その理想は世界に発信される事さえなく潰された。
 あるいはゼロと成りえたかもしれない少年は、名を知られないままこの世界から消えた。

反乱軍の指揮官を白兵戦で切り裂いたあと、黎星刻は兵士達の歓声に答える形で神虎から降りた。
神虎将軍万歳。兵士達の声が英雄を呼ぶ。歓呼の声に答え黎星刻は愛剣を高く掲げる。
剣が煌めく。兵士達がそれに答えて軍刀を掲げる。
このとき、黎武官付けの侍従兵士が気が付いた。
「将軍、返り血・・・?」
黎武官の軍服は黒い血汚れで染まっている。
「あぁ、後で着替える」
簡単に返答されて、侍従兵士は納得してしまった。しかし、ナイトメア戦で返り血など浴びる事はありえない。神虎のコクピットは完全閉鎖型なのだから。その性能は宇宙にでもいけるほどの。


上海内乱その3

2008-07-27 14:06:13 | コードギアス
上海内乱その3

『シンクーお外に連れていって』
そう言われたとき、軍人としての黎武官は断るべきだった。これから、軍の幹部達と協議しこの先の方針を決め、さらに今回の内乱の後始末を決めねばならない。誰を殺し、誰をこちらに取り込むか、その決定権は黎武官が握っている。星刻が行かねば協議が始められない。しかし、このとき天子の背後に星刻は星空を見た。それは実際には天蓋の天球図であったが星刻にはあの夜の星空に見えた。
「いずれ私が天子様を外にお連れいたしましょう」
「救っていただいたお返しとして……」
よみがえる誓いと小さな手の感覚。
天子は大きな瞳を見開いて星刻を見ている。『また後ほど』などと言ったら、その瞳から涙が落ちそうな気がする。
「では、少しの間だけなら」
後になってみれば、これが最大の間違いだった。

 中華連邦朱禁城の女官長は大変厳しい人だ。勝手に天子を連れ出すなど、もし女官長に出会いでもしたら5時間はお説教を受けるのは間違いない。すねに傷持つ身である星刻は女官長の通る道を巧みに避けた。そのためにまずは表の宮から外れて後宮に入る。いつも深夜の時間帯に通っていた道であるのでしばらく通らなくても身体が道を覚えている。仕官学生だったころさんざん通った道だ。何のために通ったかは・・・言わぬが華である。
明かりのついていない後宮は薄暗がりである。天子はこんな暗い場所を通った事などない。ちょっとびっくりしたが(シンクーがいっしょだもの)と怖くないと結論付けた。
「ここはなに」
「後宮です、急ぎましょう」
ぱちくりと、大きな瞳で見上げてくる天子、それに対して星刻の返答は機械的だ。天子がもう少し世慣れていれば星刻があせってごまかそうとしている事に気が付いただろう。でもまだ天子は何も気が付かない。
ちなみに天子がシンクーの後宮通いを知るのは、星刻が人である事をやめてからである。
 
上海の乱は裏に多国籍企業の資源占有権が絡んでいた。俗にレアメタルと呼ばれる31種の希少金属。その中でも特にタングステンは世界生産量の95パーセントを中華連邦が占めている。
中華連邦は大国だ。人口は世界人口の3割を超え、(正確な人口統計がないので推測値。別のデータでは4割との意見もある)公式人口は13億人。50を越す民族がひしめき合う多元的な国。それが中華連邦。その頂点に位する天子は、いまシンクーの上着にくるまって朱禁城の壁を越えた

上海事変  いきなりギアスの続き

2008-07-16 23:53:27 | コードギアス
上海事変その2


シンクーが軍務で出かけた事を知っているのかいないのか、カグヤから天子に通信が入った。
「シンクーさまは大きな方だから何かとはじめはたいへんですね。でも優しい方だからタブン大丈夫ですよ」
キャピキャピキャピと効果音が入りそうな声で神楽は天子に《おんなのこの内緒話》をしかける。
「ゼロ様は愛人がたくさんいるのですけど、正婦人である私を立ててくれますから。ですからあまり気にしません。それに殿方にとってそういう事は活力の元ですし、なによりのそういう関係でしっかり押さえておけば絶対に裏切りません。ですから私もカレンさんもシーツーさんも信じています」
きらきらお目目でつぎめもおかずに話したてるカグヤに、天子は目をまんまるにしてぱちくりまばたきするばかり。
天子にはカグヤノ言う内容はさっぱり分からないが、この間の斑鳩号の話の続きのような気がする。
カグヤの息継ぎの隙にようやく天子は返答を返せた。
「シンクーは大きくてやさしいわ」
「まぁ、それでは!もうそうでしたの。うわぁ、さすが年上!
やさしくしてくださるのですね。すてきだわ。きっと技巧派なのね。手が大きくて指が長くて指先が細くて最高のタイプですもの」
きゃぴきゃぴだったカグヤの声が後半うっとりに変わる。

男が直面する戦場を知らず、少女たちは恋話に夢中になる。


『中華連邦諸事情』より
 前半省略
中華連邦軍の兵士達全員が必ずしも天子に心酔しているわけではない。むしろお飾りの天子など邪魔なだけと思っているものの方が多い。地方の軍閥も外国資本がらみの大企業も、これからの中華連邦には過去の遺物である天子など消すべきだと明言さえしている。彼らの声を抑えているのはただ一人、劉星刻の存在。
星刻は人民に向けてあるいは軍閥に向けて説得を繰り返す。
『天子を中華連合政権の精神的総帥とし、外交に活用する。天子、および天帝の制度は中華の大地と人民が5000年かけて造ってきたシステム。それをこの時代の感情や都合で消し去るのは歴史に対する罪であり、天子システムこそ中華連邦の統一を守る未来への投資である』
同じ内容を大宦官たちも公式声明に発表していたが、彼らの末路はご存知の通りである。
内容的な新しさはないが、それを語るのが革命将軍とも神虎将軍とも呼ばれる星刻である限り、現在の天子の存在意義は保障される。その代価としてシンクーが上海の暴徒たる中華人民を焼き討ちしたことを天子が知る事はない

上海事変  いきなりギアス。3作以上続けば金属中毒ギアス部屋に移します。

2008-07-12 18:50:32 | コードギアス
上海事変 
(いきなりギアス、ほんの出来心です。)


黒の騎士団との戦いがほのぼのポエム調に終わった後、エリア11にも中華連邦にも政治的現実が待っていた。そのうち、中華連邦に起きたのが上海事変(上海内戦)である。内戦は10日かけて平定された。その10日間、星刻はほぼ24時間神虎と共に前線にいた。黒の騎士団との戦いで負った傷もまだいえぬままの従軍に軍関係者さえも難色を示したが、結局星刻が出なければどうしようも無かった。付け加えると今度の戦いは完全に同国人を相手にしてのもの。しかも相手の唱える正義とこちらの掲げる正義は同じもの。《この国を救うために》。それゆえに兵士達の精神的な負担も大きかったし、それを鼓舞せねばならない司令官は。
上海の内戦(公式記録では内戦ではないが)から戻り、天子に拝謁した星刻はいつに無く疲れて見えた。その理由は共に従軍した軍人達に訊けばすぐに分かることだった。だが、13歳と言う年齢に比べてさえ、幼い表情を見せる天子には〈他の軍人さんに訊く〉という簡単な発想が無かった。
「しんくー、外に連れて行って」
ひざを突いたまま報告を終え、「では、私は軍に戻ります」と言いかけた星刻を、天子はすかさず捕まえた。彼女には大きすぎる豪華な椅子からぴょんと飛び降りると、てってってっと星刻に走る。そしてお約束のようにカクンと裳裾を踏んづけて顔から床に突っ込みかける。それを星刻がこれも前世からのお約束のようにふわりと受け止める。
星刻の体からはまだ汗と鉄の匂いがした。その匂いを天子は初めて知った。今まで、真綿と絹にくるまれて、真実を何も見ていなかった天子は男の汗の匂いすら知らなかった。でもいやなにおいではなかった。
汗の匂い、これはシンクーの。鉄の匂い、これは・・・神虎のにおい。
天子はそう思った。実際には最新型のナイトメアは鉄で出来ているわけではない。天子は知らない。彼女が始めて感じたにおいは彼女の男を取り殺す病の匂いだと。