金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

プロポーズ小作戦36

2009-04-16 22:38:24 | コードギアス
プロポーズ小作戦36

ジノの勘ではいざ顔を見れば天子のほうが動くと踏んでいた。
11も年下の女の子から逆プロされる・・・男としては幾分情けない光景だろうが、天子と星刻の公的な関係を考えに入れるとむしろその方が自然である。
それに、(姫天子ちゃんはもう子供じゃない)
つい、さっきのことだ。いつも庭の池に蓮の花を見に行く天子が今日はおとなしく本を読んでいる。星刻が置いていった本である。
「今日は花を見に行かないのかい」
「私ね、もう赤ちゃんを探さないの」
「(ヘッ)」
声にならないジノの反応。
「もう子供じゃないもの。赤ちゃんがお花にはいないってわかったの」
「・・・。(オイオイ、まさか今まで親指姫を信じていたのかい)」
「もう知っているもの。赤ちゃんがどうやってくるのか」
ここでジノが訊けば天子は答えただろう。自信を持って。
女の子が大きくなると、コウノトリが赤ちゃんを連れてくるのよ。
ここでジノは尋ねなかった。赤ちゃんがどうして生まれるのかを。これはジノのミスではない。男としてのデリカシーというものである。
天子の自信は揺るがない。だって、星刻が教えてくれたのだもの。

プロポーズ小作戦35

2009-04-16 21:31:08 | コードギアス
プロポーズ小作戦35

通信機の前で間抜け面をさらす男。それを見ている女。
かわいいクリオネが餌を食べるだけの時間が無音で過ぎた。

「なんですか、それ」
ようやく出たのは間抜けな質問。
それに対してナナリーはデータ送信に切り替えた。自分で確認してくださいという事らしい。
100を越すサイト名がそこにある。どれでもいいですから見てくださいとナナリーが即す。
適当に見てジノはあぜんとする。
 《中華連邦とブリタニア、正式なご成婚は未定》
 《世界をすべる両大国に新たな絆》
 《英雄ジノ・ヴァインべルグ卿。中華にてすでに同棲関係!!》
《英雄はロリコン!》
そんな見出しが飛び込んでくる。要するにジノが天子とそういう仲とされている。
さらに他のサイトを見ても似たような記事が続く。
《ブリタニア宰相は公式コメントを出す段階ではないと発言》
《ヴァインべルグ卿が正式な軍事活動を停止しているのは、中華への婿入りの準備か》
ほとんどは無責任な記事だが、ひとつだけジノの目を強烈にひきつけるコメントがある。
中華連邦大司馬黎星刻の発言。
《「天子様のお心しだいだが、わが国とブリタニアの間に友好関係が築かれるのは、望ましい事だ」》
まるで、認めているような発言である。
「あの、狸野郎!!」
思わず怒鳴ったジノにさりげなくナナリーが提案する。
「ジノさんには他のお考えが有って中華にいらっしゃるのでしょうけど」
この通信が盗聴されている危険もあるから、当て馬役との発言は控えた。
「放っておくと既定の事にされてしまいます。今ならまだ天子様のお言葉一つで」
要するに天子が「私は星刻と結婚するの」と言えばまだ間に合う。
それはそれで大きなスキャンダルになるだろうが、その場合の後見やフォローにナナリーは力を貸すつもりである。
(お兄様が造った優しい世界。もう崩れてしまった。でも、一人だけでもお兄様の望んだ優しい幸福を得てもらいたい)
声にされないナナリーの言葉。それをジノは聞いた。
「わかりました。あの腹黒狸を引きずってきてでも、天子ちゃんに会わせます」
そこから先はあの狸しだいだが、むしろ天子が動くのではとジノは考えた。

プロポーズ小作戦34

2009-04-16 15:21:15 | コードギアス
プロポーズ小作戦34
天子の婿殿

1時間後ナナリーからジノに連絡が来た。
「ジノさん、大切な事だから良く考えてほしいの」
ナナリーは声の調子を変える。
「ヴァインべルグ卿は天子様の入り婿になるお考えが本当にありますか」

プロポーズ小作戦33

2009-04-16 05:15:12 | コードギアス
プロポーズ小作戦33
イチゴムース


イチゴムースの話をしているときの天子がとても幸せそうに見えたので、ジノは女官におやつをイチゴムースにするように頼んだ。
結果は正解だった。
それまでどんなご馳走を並べられても、「欲しくない」で終わってしまった天子が、喜んで平らげた。
女官達のデータバンクに天子様の特別にお好きな物。イチゴムースと入力された。
さて実際は、天子はイチゴムースを好きだが特別というほどではない。
ただ、イチゴムースは幸福な記憶につながる味であった。
あの処刑の日、ずっと姿を見ることができなかった星刻が隣にいた。
星刻の漆黒の瞳に自分の白い姿が写り、彼が微笑んだ。
それだけで天子は幸福だった。その後のパレードの途中で、休息したホテルで出たのがイチゴムース。
あの日のイチゴムースは、美味を味わいつくしているはずの天子さえも夢中にさせた。その一瞬だけ、星刻のことの心配さえ思考から消えるほどに。残念な事にあの日の菓子職人は不明でもう食べられない。

天子の知らない事実がある。
あの日のイチゴムース。それはナナリーがいつも食べていた味。
世界の敵。史上最悪の存在。かの悪逆皇帝の手作りだった。

ナナリーの食べたイチゴムース。慣れないパレードに疲れているだろうと兄が作ってくれていた優しい味。
兄のイチゴムースには、隠し味にほんの一粒の塩分がいつも入っていた。
パレードの日に食べたイチゴムースはいつもの兄の味よりほんの少し塩分が多いようだった。
あの日以来、ナナリーはイチゴムースを食べていない