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ぼくとけっこんしてくにになろう9回目

2011-11-20 22:04:11 | APH
ぼくとけっこんしてくにになろう9回目 正当なリンチの記憶
 
 ヘタしたら2桁まで主人公も相方も出番なし・・・だな、これは。

南部の州。第2次大戦の後、東西分裂のおり「これでプロイセンと縁が切れる」と喜んだ。 
南部の州がプロイセンを嫌った理由、そもそもはプロイセンが成り上がりであること。そのプロイセンに無理やり統一され、独立国で無くなったこと。

 ただし、ドイツ統一の餌にされぼこぼこにされたフランシスには別の意見がある。
確かに北部ドイツは軍事力で北ドイツ連邦として統一されたが、南部の連中は違う。あいつらはこのお兄さんをぼこりたいというだけで帝国ドイツに自ら加わったのだ。つまり本来なら南部の連中にはプロイセンに文句を言う資格は無い。現にゲルマンの国であっても統一ドイツ帝国に加わらなかった国もある。ルクセンブルグは今も独立国である。
 フランシスの正直な感情としては、ドイツの南部の州よりもこの時に自主独立を選んだ小国への評価は高い。[ルクセンブルグはもともとフランス系の血が強く心情的にもフランス寄りだった]。


 (ベルリンにもお兄さんの子供たちはいっぱいいたんだけど)
プロイセン現役時代、フランシスの子供達の一部は[フランス人であるプロイセン国民]として幸福に暮らしていた。子供達のほとんどはプロテスタントで、フランス王ルイ16世に迫害追放され(火刑の公式記録がある)路頭に迷うところだった。それを救ってくれたのが大選定公。内密に連絡を取り足弱の年寄りや子供たちを護衛までしてくれた。
その護衛の中に目立つ銀髪の士官がいた。『ジル!』隠れて付いてきたフランシスは思わず叫んでしまった。たかが難民の受け入れに国家様本人が来るとは!

     

参考までに  1985年10月ルイ14世がナントの勅令を廃止。新教徒への迫害火刑略奪が始まる。翌月には選定公のポツダム勅令が出る。当時としては驚くべきスピード対応である。新教徒達は2万人以上が避難していき、1700年頃にはベルリンの人口の3分の1が新教徒のフランス人になった。

「よぉ、久しぶり」
ギルベルトはフランシスに気が付いていた。だからさほど驚きもせず声をかけ護衛の隊列を離れた。
 季節の挨拶から始めるような仲ではない。殺し合い、殴り合い、そのすぐ後に酔いつぶれるまで飲み合い、馬鹿な遊びを共にする二人の国家達はすぐに本題の話を始めた。当然使うのはお国様だけが使う国体語である。
「俺の子供達を頼む」
「もう俺のガキどもだぜ」
「ダンケ」
フランシスはあれこれ言わず、ドイツ語で礼を述べた。
隊列の兵が大声でそろそろ出発すると告げた。足弱の老人に合わせてなので隊列の進みは遅い。
「お前、もう帰れ。俺のガキは俺が守る」
ギルは乱暴な口調で、さらに付いてこようとするフランシスを押し戻した。すでにフランス国境を越えている。これ以上進むことはフランシスの身を危うくする。

 口調も所作も乱暴だが、それが自分の身を思ってのことだとわかっているからフランシスは素直に受け入れた。だが、すぐに隊列に戻ろうとするギルの肩を押さえた。
「何だ?」
「ルイ王は避難民に混ぜて工作員をお前の国に入れるつもりだ」
フランシスの声が低くなる。
「ま、それくらいのことはするだろうな」
ギルの返答はあっさりしている。
「俺が調べられるだけの工作員の名をここに書いてきた」
フランシスは隠し持っていた羊皮紙の束を出した。これを渡したくてフランシスは危険を犯した。まさか、途中でギルに会えるとは思わなかったが。
「ふーん」
その羊皮紙の束がどれほどの重さがあるのか。その価値の重さを知っているから逆にギルは軽く返答した。
フランシスは上司である王に部分的ではあっても逆らったのだ。それが国の体現にとってどれほどの決意であるか。
「俺の子供だったやつがお前のところで騒ぎを起こせば、他の子供達のことも疑われる。お前の上司が受け入れてくれなくなったらあいつらには生きる場所が無い」
だから危険を犯した。王の愛人達やら貴族の婦人達やらの寝室で聞き出して、それでもわからないスパイの名を知るため軍の書類室に潜入さえした。
常に似合わぬ沈痛な表情でフランシスは羊皮紙の束を差し出した。
「おい、休憩のついでだ。めしに付き合え」
どかりと座りギルはすばやく焚き火を用意した。
フランシスは羊皮紙を握り締めたままだ。力の入りすぎた手は血が流れにくくなって真っ白になっている。
つられてフランシスは座った。
「おい、それよこせ」
すっと簡単に羊皮紙の束がギルの手に移った。
ぱさり。
軽い音がした。
羊皮紙の束は特有の獣臭い臭いを出して炎に包まれた。
「ジル!」
「俺の昔の総長が言った。『人はだめと言われたらやりたくなるし、疑われたら反抗したくなる。強制されたらやる気を失くす。一番いいのは本人が自分からやりたくなるように環境を整えてやることだよ』そいつらだって好きで工作員になったわけじゃないだろ」
「ギル」
「そいつらが自分から『プロイセンでずっと生きていたくなる』ようにしてやる」
ギルはその言葉を実行してくれた。

フランシスの手が黒い血のしみをなぜた。ギル、お前は変わらず子供達を守ろうとした。あの時と同じように身を張って。「国として当然のことだぜ」あの時と同じように高笑いして。それなのに、『ドイツ』がお前を傷つけた。



あの夜、まだドイツが統一の喜びで酔いしれていた頃、ギルはフランス国境に近いドイツ南部で刺された。