金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

すあし4

2012-02-13 02:52:20 | Weblog
おやおや、どうしてこんなことになっているかな。
声には出さずフランスはつぶやく。
ちょっと自分がいなかった隙に悪友たちは何か楽しそうな事をしている。
フランシスは声をかけようかと思ったが、おもしろそうだったので様子を見ることにした。

うーん、菊ちゃんに写メで送ってやりたいような顔だよ。この子もこういう顔できるんだね。でもどうせならお兄さんといるときにこういう顔してくれたらいいのに。

 どうやら兄の菊にしっかり注意されたらしく、桜はフランシスに用心している。
そんなに用心しなくてもお兄さんは嫌がる女の子に手を出したりしないのに。もちろん女の子が自主的にお兄さんを迎え入れてくれるようになるための策は講じるけどね。
 フランシスにとっては恋愛以前の駆け引きも楽しいものだ。
ただ、よほどきつく言われたらしく桜の用心は強い。それにギルベルトである。ギル本人は桜に触りたい放題しているのに、フランシスがちょっと近づこうものなら無言で威嚇してくる。ところが桜本人はギルが触ってくる意味をまるでわかっていない。桜の目にはギルは恋愛対象として認識されていない。桜の言動を見るに孫のような存在と思っているらしい。
 
 不憫なやつだね。見てるぶんはおもしろいけど。

すあし3

2012-02-13 02:30:52 | APH
すあし3

 熱い冷たい海が伝わる
ぱしゃり。水の音がする。その音に桜はうっかりと目を閉じた。すると自分がどこにいるのか、どういう状況なのかを忘れた。産まれたときの記憶。両足が暖かい水に浸り、この地のモノになるとわかった始まりの記憶。それが今の感覚とつながる。

 もう少し時間があれば、桜の表情の異常さに彼女に触れている男たちは気がついただろう。この時、冷たい手の男は桜の足の爪の内側を優しくなぞるのに集中していた。桜本人の手さえめったに触れないそこは、湯につかっていたせいもあり湿っていた。爪の堅さといつも守られている皮膚のたよりなさに同時に触れて、体温の低い男はそれを新しい感覚として認識した。一方でスペインは赤くなっている桜の肌にオリーブオイルを塗りこんでいた。暖かい手の男は普段のおおざっぱな雰囲気とは裏腹に丁寧にやわらかに塗りこんでいく。もう少し時間があれば、二人の男は自分たちが触れている女が快感を感じていることに気がついただろう。しかし、ここで第3の男が部屋に入った。食器をかたずけたフランスが部屋に入ってきた。
 

素足

2012-02-06 00:40:22 | APH
素足2

 どうしてこんなことになってしまったのかしら。
はぁ、と心だけでつぶやく。すると、聞こえているはずもないのに、赤い瞳が見上げてくる。
どくん。ただ、見上げられているだけなのになぜか違う人のように見える。いつも見慣れているのは、射るような強い瞳。そして私だけに見せる顔、孫のように甘ったれてくる瞳。そのどちらでも無い。うるんでいるように見えるのはきっと彼が酔っているから。私を見上げているからではないの。そうよね。みんな酔っているの。だからこんなことになっているだけ。

 右足の小指をこする熱い指の感覚。右足を持ち上げているのは太陽に国、スペイン。
 左足の薬指をくすぐる少し冷たい指。左足を持ち上げるのは、かっての軍国。

冷たい感触が小指の爪をくすぐる。爪、伸びていなかったかしら。桜は思う。前に切ったのは7日前。足のつめは伸びるのが遅いけど、さすがに少し伸びていた。そのほんの少しの爪を男の手が丁寧に洗う。男にしては柔らかい感触の指がいくども爪の表面をすべる。こするほど強くなく、でも存在を忘れさせない圧感で。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 
桜は呼吸を止めて数字を数えた。
少しでも落ち着くために。そうしないとうっかり声を出してしまいそうだ。
それから気がつく。数えている数字のリズムが冷たい手の男が爪にふれるのと同じタイミングであることに。
 熱い冷たい波打っている。いくつもの感覚を足の爪が伝える。
自分たちは国の化身である身だから、いま触れられている部分は私のどこなのかしら。私の始まった淤能碁呂島(おのごろじま)は滴り落ちて産まれたから
 数字を数えなくなってから桜の思考は乱れた。