プロポーズ小作戦75
君側の奸に従わず。
天子様を邪からお救いする。
新たな革命家達の息吹
2021年1月初旬
「不安なの」
さぞかし幸福であろうと訪ねた朱禁城の、天子のいる内宮。
たくさんののろけを期待していた神楽耶に渡された言葉は不安。
「星刻はいつも私に優しかったわ。どんな苦しいときも。私にだけは何の心配もさせてくれなかった。
でも、違う。今は優しくしてくれるわ。皆が驚くくらいに。こんな事は初めてなの。
それに星刻の目が、まるであの時ダモクレスに向かっていく時に似ていて。
怖いの。星刻がどこかに行ってしまいそうで」
神楽耶の狙いはある程度成功していた。天子は星刻を時に異性として意識し始めている。
だから、不安になる。
出会った頃の自分が幼い子供であった事を天子は知っている。星刻が愛してくれたのはいつの自分なのだろう。
何もできないままの自分。
今は必死でお勉強中だが、それでも対応できない分野も多い。
無力を嘆く天子に、星刻は優しく言う。
天子様が全てに責任を持つ必要はないと。
中華は大きい、広い、世界一の人口を抱えている。専門分野は専門家に任せるのがいい。その専門家を選ぶのもそれなりの専門家がいる。天子様は微笑んで、中華の華でいてくださればいいのです。
『天子は中華の華飾り』とはどこかでインタビューされたときの星刻の答えである。
記者は個人的感情を訊きたかったようだが、それに対して返された答えはこれ。
静かではあるが圧倒する星刻の威に記者はそれ以上の追及をできなかった。
皇帝の自室で、ナナリーは個人的な映像データを見ていた。アッシュフォードのアルバム。兄が自分の髪を漉く姿。
猫祭り。男女逆転祭り。世界一のピザ。
どの1枚でも自分は幸福そうに微笑んでいた。いつも自分の傍には兄がいた。アッシュフォードの小さな箱庭。
それがどれほど優しい世界であったか。失ってようやくわかる。自分のいた世界は優しい人ばかりだった。
このアルバムはミレイから贈られたもの。いつか、ナナリーの目が見えるようになったときに、思い出に映像が加えられるようにと。
ミレイは兄や自分を恨んでも良い立場。保護していた皇子によってアッシュフォードは貴族の位を失い、多くの親族も首都とともに死んだ。それなのにミレイは今も、自分を大事な妹のように想っていてくれる。
ミレイだけではない。ニーナも、リヴァルも。
ナナリーは映像を切り替えた。直径1メートルもある大きなホールケーキ。7月生まれののプレート。
リヴァルがアップした映像。
最初から嘘をついていた。リヴァルにも。本当のことは今も言っていない。ある程度察しているかもしれない。それでも今でもこうして兄の誕生日も祝ってくれる。兄が世界を壊して、戦いを巻き起こしたのは知っているのに。
(お兄様、私たちは本当に優しい人たちに守られていました。だから、お兄様も守ろうとしたのですね。優しい世界を造って)
兄の造った優しい世界。世界が戦い以外の方向を模索する世界。超合衆国連合はそのための機関。
しかし、それは2年足らずで壊れてしまった。
再び将官になったジノは国境紛争を指揮するため戦場にいる。あるいは、スザク・・・ゼロも今そこにいるかもしれない。
いくら皇帝とはいえ、軍事の機密もあるし、神出鬼没と言われるゼロ・スザクの行動は読めない。
(お兄様、あなたは優しい。私達の周りには優しい人ばかりでした。でも、世界は、優しくない人のほうが多いのです)
兄は優しい世界を造る道筋の破れ目を塞ぐためにギアスを使った。
しかし、兄が優しい世界を託したスザクにギアスは無い。
ナナリーの目に映る世界は今も戦っている。今のところ、紛争というレベルだが、それもいつまでなのか。
『不安なの』。
この天子の声を聞いたのがもしもナナリーなら、男が女には秘密で、女の為に何かをしようとしていると気が付いたはずである。それは兄ルルーシュがゼロになるとき、ナナリーにいつもより優しくしたから。
それに、幾度も会っているうちに気が付いた。星刻は兄に似ている。考え方や、時には行動まで。兄は、ルルーシュは、自分がどんなにつらいときでもナナリーにはそれを分け与えてくれなかった。
「私もお兄様を守りたい」
甘えに隠してそう伝えても、ナナリーは幸福でいてくれればいいんだよと微笑むだけ。
兄が本心からそう言っているのがわかるから、ナナリーはそれ以上わがままを言えなくなる。
兄が全てを与えてくれたのは、敵として。そして、死を受け入れるわずかの時間だけ。
できるなら、天子には同じ想いをさせたくない。
せめて、一人でも幸福でいてほしい。
だが、悪意はもうこのときには存在していた。
神楽耶の見立てと、ナナリーの想い。それはどちらも正しかった。
自覚された恋心。君主として立つ気持ち。
天子の中で急速に育っていくいくつもの想い。
体の2次成長とあいまって、天子はすばらしくきれいになった。
それは傍で見つめている星刻が、一瞬も目を離したくないと思うほどに。
ただ、天子の成長よりも、悪意の熟成が早かっただけ
君側の奸に従わず。
天子様を邪からお救いする。
新たな革命家達の息吹
2021年1月初旬
「不安なの」
さぞかし幸福であろうと訪ねた朱禁城の、天子のいる内宮。
たくさんののろけを期待していた神楽耶に渡された言葉は不安。
「星刻はいつも私に優しかったわ。どんな苦しいときも。私にだけは何の心配もさせてくれなかった。
でも、違う。今は優しくしてくれるわ。皆が驚くくらいに。こんな事は初めてなの。
それに星刻の目が、まるであの時ダモクレスに向かっていく時に似ていて。
怖いの。星刻がどこかに行ってしまいそうで」
神楽耶の狙いはある程度成功していた。天子は星刻を時に異性として意識し始めている。
だから、不安になる。
出会った頃の自分が幼い子供であった事を天子は知っている。星刻が愛してくれたのはいつの自分なのだろう。
何もできないままの自分。
今は必死でお勉強中だが、それでも対応できない分野も多い。
無力を嘆く天子に、星刻は優しく言う。
天子様が全てに責任を持つ必要はないと。
中華は大きい、広い、世界一の人口を抱えている。専門分野は専門家に任せるのがいい。その専門家を選ぶのもそれなりの専門家がいる。天子様は微笑んで、中華の華でいてくださればいいのです。
『天子は中華の華飾り』とはどこかでインタビューされたときの星刻の答えである。
記者は個人的感情を訊きたかったようだが、それに対して返された答えはこれ。
静かではあるが圧倒する星刻の威に記者はそれ以上の追及をできなかった。
皇帝の自室で、ナナリーは個人的な映像データを見ていた。アッシュフォードのアルバム。兄が自分の髪を漉く姿。
猫祭り。男女逆転祭り。世界一のピザ。
どの1枚でも自分は幸福そうに微笑んでいた。いつも自分の傍には兄がいた。アッシュフォードの小さな箱庭。
それがどれほど優しい世界であったか。失ってようやくわかる。自分のいた世界は優しい人ばかりだった。
このアルバムはミレイから贈られたもの。いつか、ナナリーの目が見えるようになったときに、思い出に映像が加えられるようにと。
ミレイは兄や自分を恨んでも良い立場。保護していた皇子によってアッシュフォードは貴族の位を失い、多くの親族も首都とともに死んだ。それなのにミレイは今も、自分を大事な妹のように想っていてくれる。
ミレイだけではない。ニーナも、リヴァルも。
ナナリーは映像を切り替えた。直径1メートルもある大きなホールケーキ。7月生まれののプレート。
リヴァルがアップした映像。
最初から嘘をついていた。リヴァルにも。本当のことは今も言っていない。ある程度察しているかもしれない。それでも今でもこうして兄の誕生日も祝ってくれる。兄が世界を壊して、戦いを巻き起こしたのは知っているのに。
(お兄様、私たちは本当に優しい人たちに守られていました。だから、お兄様も守ろうとしたのですね。優しい世界を造って)
兄の造った優しい世界。世界が戦い以外の方向を模索する世界。超合衆国連合はそのための機関。
しかし、それは2年足らずで壊れてしまった。
再び将官になったジノは国境紛争を指揮するため戦場にいる。あるいは、スザク・・・ゼロも今そこにいるかもしれない。
いくら皇帝とはいえ、軍事の機密もあるし、神出鬼没と言われるゼロ・スザクの行動は読めない。
(お兄様、あなたは優しい。私達の周りには優しい人ばかりでした。でも、世界は、優しくない人のほうが多いのです)
兄は優しい世界を造る道筋の破れ目を塞ぐためにギアスを使った。
しかし、兄が優しい世界を託したスザクにギアスは無い。
ナナリーの目に映る世界は今も戦っている。今のところ、紛争というレベルだが、それもいつまでなのか。
『不安なの』。
この天子の声を聞いたのがもしもナナリーなら、男が女には秘密で、女の為に何かをしようとしていると気が付いたはずである。それは兄ルルーシュがゼロになるとき、ナナリーにいつもより優しくしたから。
それに、幾度も会っているうちに気が付いた。星刻は兄に似ている。考え方や、時には行動まで。兄は、ルルーシュは、自分がどんなにつらいときでもナナリーにはそれを分け与えてくれなかった。
「私もお兄様を守りたい」
甘えに隠してそう伝えても、ナナリーは幸福でいてくれればいいんだよと微笑むだけ。
兄が本心からそう言っているのがわかるから、ナナリーはそれ以上わがままを言えなくなる。
兄が全てを与えてくれたのは、敵として。そして、死を受け入れるわずかの時間だけ。
できるなら、天子には同じ想いをさせたくない。
せめて、一人でも幸福でいてほしい。
だが、悪意はもうこのときには存在していた。
神楽耶の見立てと、ナナリーの想い。それはどちらも正しかった。
自覚された恋心。君主として立つ気持ち。
天子の中で急速に育っていくいくつもの想い。
体の2次成長とあいまって、天子はすばらしくきれいになった。
それは傍で見つめている星刻が、一瞬も目を離したくないと思うほどに。
ただ、天子の成長よりも、悪意の熟成が早かっただけ
これからも宜しくお願いします!