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プロポーズ小作戦112

2009-11-01 05:41:07 | コードギアス
プロポーズ小作戦112
星刻が執務室に戻るまで3時間が必要だった。

中華の大司馬である黎星刻は3個の携帯を持っている。1台は公式電話で番号は公表されている。むやみやたらとかかってきても困るからこの番号への電話は秘書室に繋がり、そこで認められたもののみが繋げられる。もう一台は私的番号で蒼天講時代からの親しい人物達からの連絡用。そして存在さえ隠している・・・本人はそのつもり・・・もう一台。これは天子様との直通電話。星刻は最大の極秘事項扱いにしているが、世間では『中華のラブラブテレホン』として知れ渡っている。
なにしろ対の電話の持ち主である天子様が、記者会見やら会議やらのたびにお花のストラップを付けた電話をいつも手にしている。目ざとい女性アナウンサーに訊かれたとき天子は素直に答えた。「星刻にだけ繋がる電話なの」「それでは愛のホットラインですね」
アナウンサーに愛のホットラインと言われて当時13歳の天子は数秒固まった。それからその愛らしい白い頬を桜色に染めた。その姿がどんな答えよりも正確に少女の恋心を世界に知れ渡らせる。
星刻はこの3年間3台の携帯を身から離したことがない。だから3時間の間星刻がどれほど苦悩したか携帯達は知っている。


感性は国により時代により異なる。日本人は恨みつらみのある相手でも死んでしまえば清算されたものとして水に流すが、中華はそうではない。500年前の先祖の恨みを子孫が果たし、それが美談として絶賛される社会。死体を墓から引きずり出して鞭打ち首をはねる。それが今日ですら当然に行われる。
ヨーロッパ世界でも700年前の戦いであの国に村が滅ばされた、だからあの国の味方はしない。そういう例は多い。
むしろ日本が、例外的に切り替えが早いといえる。
実際にブリタニアのエリアだった場所で、最も多くのブリタニア人を隣人として受け入れているのは最大の激戦地であった日本である。


星刻は中華で産まれて中華で育った。彼が中華の感性を持っているのは当然である。
大司馬公館の地下5階には、かっての大宦官の一人の死体がずっと転がされている。
その宦官は天子様を売り払おうとした中心人物で、あの日結婚式場から逃亡しここに隠れていたところを星刻に追い詰められ切られた。すでに骨となり、床に黒い脂染みを残す死躯を星刻は踏みつける。



さて3時間も落ち込んで人前に姿すら見せられなかった星刻に対してもう一人の当事者、天子はどうだったか。
女官兵達に抱きかかえられるようにして自室に戻されたあと、天子は。
ちょっとびっくりした。ドキドキした。あのままだったらどうなったんだろう。ナナリー様がおしえてくれたみたいに星刻は私を愛してくれたのかな。そうだったら。
「とってもうれしい」
天子はパンダのぬいぐるみを抱きしめる。
ただし、天子の知識には愛してくれるの中身の愛し方の知識が欠けている。

残念なことに自分は部屋に戻されてしまった。時間が経つほどに(惜しかったわ)そういう思いが強くなる。
明日、星刻に会ったら一番にこれを言おうかしら。
そしたら星刻はまたぎゅつと抱っこしてくれるかしら。


男も女もさっきの出来事をまじめに真剣に考えている。しかし考えている内容には100度近い温度差があった。



ここで疑問に思われるだろう。ではあの「いや、離して」はでは何だったのかと。
天子が嫌がったのは星刻の行動そのものではなく、それがごまかしではないかと感じたからだ。
あの時天子は星刻になぜ罪なき者まで殺すのかを訊いた。それに対する星刻の反応があの行動だった。

天子はいろんなことをお勉強している。その中には「愛を深めるため、彼の考えを読む」という本もある。それによると『男が普段より優しくなったり、急に愛を囁いたりしてあなたを求めるとき。それは彼が都合の悪い隠し事をしていて、ごまかすためかもしれません。こういうときにはちょっと抵抗してみて、彼の反応を見ましょう。浮気の痕跡が見えるかもしれません』