金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

プロポーズ小作戦105

2009-09-29 04:19:28 | コードギアス
プロポーズ小作戦105

風の音を天子は聞いた。
朱禁城の壁は厚く、外の音を遮る。実際に聞こえているのは天子と星刻の呼吸音。

「どうして?」
天子の声は弱い。
星刻はいつも優しくて穏やかで大きくて、いつもなんでも教えてくれた。こんな沈黙が二人の間にあったことなど無い。
「どうして」
天子はもう一度同じ言葉で繰り返す。
一度目の問いはどうしてそんなことをしたのという問い。二度目はどうして答えてくれないのという嘆き。
星刻はいつも天子の言葉を全てわかってくれた。まだ幼い頃から。それなのに今日天子の言葉は星刻には通じなかった。
風の音がする。
「どうして」
星刻は天子の言葉をそのまま返した。
(なぜ、お分かりになってくださらない。私はいつもあなたのことだけを、あなたを守ることだけを望み行動しているのに)
星刻は椅子を立ち、天子の前にひざまづく。
見下ろす天子の視線と見上げる星刻の視線が交差する。
天子の瞳に揺らぎがないことを星刻はうれしく、同時にさびしく思う。
(天子様はもう子供では、ない)
すでに国主としての自覚を持ち、民のことを考えている。
天子の成長はうれしい。だがその成長があの男、ジノに促されたゆえかとおもうと。
自分がそこにいれなかったさびしさと、強い嫉妬心が星刻を満たした。

プロポーズ小作戦104

2009-09-14 01:50:11 | コードギアス
プロポーズ小作戦104
2021年2月10日

返答はすぐには無かった。
それは天子の心を傷つけたが、星刻の側にすればどの件かわからなかったのだ。
何しろ殺した人数ならあの裏切り騎士に匹敵するほどだ。
そのどれが天子様のお心に傷を付けたのか。
星刻がようやくどの件かわかったのは天子の次の言葉を聞いてからである。

「ニュースで見たの。中華は売人だけでなく中毒者も処刑していると。
それをさせているのは」

天子の声が震えた。
「星刻」

「ジノが教えてくれたの。ずっと前にも似たようなことがあって、その時も中華は中毒者も処分したと」
「カレンさんとお話したの。日本では中毒者は被害者として治療されていると」
そのことはもちろん星刻も知っていた。しかし、日本と中華ではそもそも国の規模が違う。中毒者を保護することなど物理的に不可能だ。
また国民性の違いもある。日本でも中毒者が薬欲しさの為に犯罪に走ることはある。ただ、日本の場合それは個人の犯罪にとどまる。
対して中華ではたやすく暴動や反乱につながる。




もし天子が最初にジノの名を出していなければ、星刻はいつもの微笑みをうかべて天子に説明しただろう。今の中華には国民を保護するだけの力がないのだと。また長い間の悪政で国民に政府とは自分達を圧迫・搾取する存在だと思いこまれていること。
国民の思いを変えるためにも一日でも早く国を安定させねばならないこと。その為に不穏な行動の元となる中毒者を野放しにはできないこと。安心して暮らせる国を早く造らなければますます麻薬の類にのめりこむ国民が増えてしまうこと。
平和の為に未来の為に、今はあえて剣をふるうべきときであること。
これらのことを丁重に説明したはずだった。
天子にとってこういった国の事情を理解し、それを推し進めることはつらいことだ。
それでも天子は理解し納得しようと努めるはずだった。信頼し、大好きな星刻が教えてくれるなら。

しかし、この夜星刻が声にしたのは
「それはジノが言ったからですか」
いらだちを含んだ詰問だった。


プロポーズ小作戦103

2009-09-13 12:13:04 | コードギアス
プロポーズ小作戦103
2021年2月10日


それはジノが言ったからですか


言わなければ良かったと思うことがある。一生の悔いになる言葉がある。
だがたいていの場合、そういう言葉は言わずに終わることはできないものだ。
ある程度の年齢になるとそれがわかってくる。

若かった。言った方も若く、言われた方はさらに若く。
どちらもそういう言葉をどう処理していいか知らなかった。





ニコバル諸島での紛争未満が一応の決着を見た後、星刻は洛陽に戻った。公館に戻るとすぐ老齢の元女官の訪問を受けた。天子が会いたがっているという。
奇妙な話である。内容がでは無く伝達方法が。もし私的に早く会いたいなら直通電話を使えばいい。公的なら専用回線なり、公式な使者なりを使うべきだ。
もちろん会いたいという内容に異存があるわけではない。状況さえ許せば星刻は一日中でも天子の傍にいたいのだから。
ただ、天子の意思によっては公的訪問か私的訪問か区別せねばならない。
引退した元女官、公とも私ともいえない使者。
どう判断すべきか?

結局星刻は公的訪問を選んだ。どちらにしても帰還報告をせねばならない。
高級文管や女官達がずらりと並ぶ中で10メートルの距離を離して膝をつく。
現在この国で星刻が膝を屈するのは天子ただ一人。
数年前は大きな椅子の上にちょこんと置かれたアンティークドールであった天子だが、最近は身長も伸びたしそれなりの自覚もできたゆえか威厳らしきものを感じさせるようになった。
(ここまで来た)
ふいにそんな言葉が星刻の胸を満たす。
幼い天子に救われ、星達の立会のもとで誓いを立てた。あの日々からもう10年。あの頃の愛らしさけがれ無さはそのままにたとえようもなく美しくご成長された。
(もう少しです。もう少しで安全で平和な国を天子様に)

膝をつきうつむく星刻に天子が言葉をかける。
この報告は形式的な言葉をやり取りするだけである。
いずれはこれも改善するべきだが現状はまだそういう方面まで手が回らない。
なにしろ、あの悪逆皇帝に新生中華の中核となるはずだった1000人にも及ぶ文人を瞬殺されてしまったからだ。
星刻としては自分一人が助かるよりも、あの同士1000人が生きていてくれた方がよほど中華のためになったのにと、かの悪逆皇帝に苦情を呈したいほどである。

形式的な報告を終え控室に戻るとまた天子からの使者が来た。
下人時代は天子様の御用という一言で簡単に奥の宮に入れたのに、階級が上がった今では逆に不自由になった。
使者に導かれようやく中の宮の一室に入る。そこは偶然ながら天子がジノとお勉強していた部屋であった。
後になって思えば場所が悪かったのかもしれない。

「天子様」
星刻は無意識に(天子様専用の)この上なく優しい表情になる。
いつもなら天子はその星刻に飛びついてくる。あのちょっと巻き舌の丸い発音で「しんくー」と呼んで。
その手ごたえが少しずつ重くなって最近では柔らかくなって、星刻の至福の時間となっている。
しかし、今日は違った。
「星刻」
天子の声が固い。いつもの蕾がほころぶような微笑みがない。
(何者が天子様のお心を傷つけたのだ?!)
星刻の手は無意識に剣を探す。
そんなやからは私が処分する。
処分すべき対象が自分であることに星刻は気がつかない。

「星刻」
「はい、天子様」
固い声と優しい声が交差する。
天子は大きく深呼吸する。
それを慈父の表情で星刻は見ている。
「星刻」
「はい、天子様」
ようやく想いを決めたのか天子が声に力を込めた。
「どうして殺してしまったの。あの人たちは悪い人たちとは違うのに」

プロポーズ小作戦102

2009-09-13 00:04:18 | コードギアス
プロポーズ小作戦102
2021年2月10日

ゆるゆると撤退する両軍。
その動きに変化が起きたのはキイーンという特有の張りつめた音を聞いたから。
飛行型のナイトメアに特有の音。慣れたものなら音だけでその機体がどの世代に属するかわかり、さらには個々の機体まで識別する。

ランスロットいや、零の音か。スザク・ゼロまで呼んだとはナナリー皇帝は本気で介入したいらしい。
裾が長すぎて歩きにくい伝統衣装を左手で軽くさばいて星刻は音の方を見上げた。
漆黒の機体がすぐに近づいてくる。
黒、ナイトメアにこの色を使えるのはゼロただ一人である。
零はゆっくりと降り立った。神虎と背中合わせに位置に。

ゼロが降りた。特にポーズを付けることなく仮設基地に歩きだした。
ゼロになりたての頃のスザクはゼロらしくポーズを決めようと努力したのだが、内心の気恥ずかしさが出るのかどうしても様にならなかった。シュナイゼルはゼロらしい決めポーズを50種類も作り演技指導も熱心にしてくれたのだが・・・そういう点間違いなくルルーシュの兄だなぁとスザクは思った。
結局鞘を持つ国を中華に変えた時から、無理な演技はやめた。


このとき全員の目が仮面の英雄ゼロに集まっていた。
その為に数十人の者が動いたのに、警備兵の反応がわずかに遅れた。

撤退中のインド藩王軍の一角が不意に崩れ、勢いのまま仮設基地に流れ込んで来る。
これは本来インド藩王国連合軍の司令官が掣肘すべき構図である。しかし、流れ込んできた重装兵士の一群が最初に攻撃したのは、当の司令官であった。
星刻は反射的にシュナイゼルを奥に押しやった。この場合個人的な好悪感情よりも軍人としての反射が先に立った。後で星刻が惜しかったと思ったかどうかは想像に任せる。
星刻は剣の使い手として高名だが、銃の名手でもある。当然撃ってくると見て兵士達は遮蔽物に隠れた。
しかし、この日星刻は丸腰であった。

時間にしたら1分足らずであった。奥に押し込まれたシュナイゼルが警備兵を呼ぶ。その声が銃声にかき消される。
硝煙と血の匂いが混じる。軍人にとってはなじみの臭いが空間を満たす。
十数発の銃声が重なる。
その交差する位置に星刻はいた。
銃弾から逃げ切れないことを星刻は瞬時に悟る。
こういうとき訓練された軍人の脳は恐るべき速度で情報を処理する。敵兵の位置や銃の角度から銃弾の軌跡を計算する。
致命傷にはならない。
淡々と星刻の脳は計算結果を出す。
星刻は動かない。そもそも人間の神経や筋肉の構造からして、脳の計算速度に追いつけるはずはない。

覚悟していた痛みは起きなかった。
代わりに足元の感覚がなくなった。
見慣れた黒い仮面がすぐそばにある。

銃声に反応してオリンピック記録を塗り替える速度で走ったスザクは、仮設基地の薄い壁を剣で一閃。そのまま剣を上に投げ、星刻を抱えて跳んだ。自由落下した剣は見事に敵兵の胸を貫いた。

噴出した血が呼び水になり、シュナイゼルの警護兵が飛び込んできて2分間でインド兵を撃ち殺した。


仮設基地内が騒然とする。
このときインドの司令官が死んでいれば、世界は再び流血の時代を迎えたかもしれない。
不幸中の幸い。老齢の司令官は軽傷であった。
すぐにゼロの指揮のもと生き残った犯人への尋問が行われる。
致死量を超す自白剤を打って聞き出したのは、この行動は彼らの宗教が原因であった。
復讐の女神ネティス、インドでの呼び名をガルラ女神。
あらゆる恨みの復讐を担当する女神。
驚いたことにこの行動にでた兵士達の復讐の対象を動機もばらばらだった。
殺害対象も目的も動機もそれぞれ異なる。
こういうテロは対応に困る。自殺目的のテロのほうがまだ扱いやすい。


シュナイゼルは何事もなかったかのように、優美に紅茶のカップを持ち上げる。
この優美さこそが皇族の最大の強さである。
この優美さの強さを星刻は持たない。
星刻がシュナイゼルを意識している理由の一つにコンプレックスもあげられる。



今回の紛争で星刻は全体に低調であった。政治的にインドに後れをとり、ブリタニアの介入を許し、さらにテロの現場で判断を誤りあやうく重症を負うところであった。ゼロがかばったので無事だったが軍人としてのプライドを大いに傷ついた。

そういう精神状態で会ったのがいけなかったのか、星刻は洛陽に戻ってからの天子との会話で自分でも許せないようなことを口にしてしまうのだ。


プロポーズ小作戦101

2009-09-11 20:32:08 | コードギアス
プロポーズ小作戦101

前日まだ普通に効いていた痛み止めが急に効かなくなる?
普通に考えればそういうことはあり得ない。しかし、現実にそうなった。
これは薬の中身を疑うべきである。
公館に帰ってからの話であるが、星刻はブリタニア人の医師(本職は人身売買)を殺している。

事実を述べると、医師が薬をすり替えた。結果として中華は不利益を受け、天子様のお心を乱すこととなった。星刻は自分の手で医師を処分している。
医師が薬のすり替えという行為に出たのは、痛みの発作が治まらなければ自分を呼び出すと考えたからだ。
公館の警備は厳しく、逃亡は不可能だった。だが、外に出れば逃げきる可能性はある。
星刻は自分の状態を他者に知られることを避けたい。ならばすでに事情を知っている自分を呼び出すだろう。その考えは当たっていた。ただし、そこが戦場であったのは医師の予測を超えていた。


プロポーズ小作戦マイナス4

2009-09-09 01:57:01 | コードギアス
プロポーズ小作戦マイナス4

子供の成長は早い。片言しか言えなかった星刻がしっかり話だし、近所の子供と一緒に駆け回るようになる。言葉の覚えが早いので4つになったとき近所の私塾に通わせた。そこでもぐんぐん知識を吸収し、私塾の教師が「もう私が教えることは何もない」とわざわざ言ってくるほどだ。
そこでなんとか工面して上級学校に行かしてやろうとして、父黎一籐は気がついた。この子の戸籍は無くなった息子の籍をそのまま使っている。同年代の子供よりも身長が高く、顔立ちも大人びているため3歳程度の違いは周りから見てもわからないほどだったが、戸籍の内容に問題がある。戸籍には脳障害が明記されている。この戸籍のままでは星刻の将来は閉ざされる。
結局頼るところは本家筋しかなくて、また黎一籐は相談に行った。
出た答えはまたしても軍への志願。ただ、今回は洛陽の近くの基地での仕事である。
ところがその基地はきわめて老朽化していた。
赴任して1カ月が過ぎたころ、基地の一部が突然崩れ100名近い兵士が下敷きにされた。
その一人に黎一籐が含まれていた。父の死を聞かされた星刻は泣く暇すら与えられなかった。貸し家だった小さな自宅を叩き出され、途方に暮れるしかなかった。いくら星刻の頭がいいといっても彼はまだ戸籍年齢15歳実際年齢13歳にすぎなかった。
このときさすがに気の毒に思ったのか本家筋が動いてくれた。
そのおかげで星刻はとにかくも朱禁城の下人として働くこととなり、路頭に迷うことは無くなった。

星刻が役所の無能ぶり腐敗ぶりに絶望するのにはわずかの時間しかかからなかった。
そして優秀さゆえに煙たがられた星刻はあちこちの上司のところをたらいまわしされて後、牢番の任に就いていた。このとき星刻は無実の罪で投獄され、殺されかけていた囚人に薬を届けてやり、それを罪として死罪になりかける。
もしこのとき天子が通りかからなければ、そしてたまたまそこに高亥大宦官がいなければ星刻の人生は終わっていた。その意味で星刻は極めて悪運の強い人だった。

プロポーズ小作戦マイナス3 2人目の黎星刻

2009-09-08 23:28:43 | Weblog
プロポーズ小作戦マイナス3

2人目の黎星刻

中華には『国家に損害を与えた罪』という法文がある。
この法は本来なら国家反逆罪などの重要犯罪にのみに適用されるはず。しかし、現実は。


息子はもうすぐ5歳になる。奇形で生まれた息子は成長が遅く最近ようやく歩けるようになった。しかし、それを見つめる父黎一籐の表情はさえない。
幼い息子が捕らえられかけている。『国家に損害を与えた罪』である。
多額の罰金を払えば服役を逃れることができる。ようするに役人どものこずかい稼ぎに狙われたのだ。そして、逃れる方法がない。
つまり、清貧と窮乏の間を行き来している黎一籐には罰金を払えない。
このままでは息子は牢にいれられ、そこで殺される。
思い悩んだ黎一籐は追放されていらい付き合いのない漢族の本家筋に助けを求めた。
得た回答は軍の補助兵に志願することであった。

中華軍では正規兵は徴兵制をとっているが、福利・厚生・医療などの専門分野は志願制を併用している。
黎一籐は医師ではないが、祖父が洋学の医師であったため医療知識がある。
地方出身兵士の部隊にはそういう医師が回されるのが常であった。

半年間の軍生活がもうすぐ終わるという頃、黎一籐は少数の兵と巡回任務に就いていた。そこでたまたま野盗に襲われて全滅したらしい村を発見。
死臭と糞尿臭が漂う村で繋がれたままのヤギが鳴く。
そんな中で黎一籐は子供を見つけた。ヤギの小屋にいたために野盗の目を逃れたらしい。
2歳になるかならないかぐらいの年。黒髪に黒い瞳。
その瞳の漆黒に黎一籐は親族の分家に預けてきた息子を想った。
他には似ているところはない。
子供の顔立ちは幼いながらもすでに秀麗で、どうやらこの村の生まれではないらしい。
黎一籐は子供を連れ帰った。この時点で黎一籐の意図は、息子の弟として育てるつもりだった。兄弟として育てれば、自分が死んだ後も息子を守る存在になってくれる。
この考えを身勝手と思う人もいるかもしれない。しかし、黎一籐が助けなければ子供は廃村で餓死するしかなかった。中華軍には難民を助ける伝統は無い。子供を連れ帰った黎一籐を他の兵士は不思議なものでも見るかのように眺めた。

そしてようやく半年が終わり、黎一籐は洛陽の片隅に戻った。もちろん連れ帰った子供も連れてきている。まずは息子を預けていた漢族の分家の家に息子を引き取りに行く。
しかし、息子はすでに死んでいた。
唖然とする黎一籐に分家の者が言い訳する。遊んでいて水路に落ちたのだという。
渡されたのはわずかな遺骨。
小さな自宅に帰った黎一籐は虚脱したまま一日を過ごした。
不意に子供の泣き声がする。いきなり知らないところに連れてこられ、丸一日ほったらかされて空腹に耐えかねた子供が泣いていた。
見上げてくる漆黒の瞳。

その瞳に自然に黎一籐は呼びかけた。
「星刻、ごはんをつくろうな」

この日、2人目の黎星刻が洛陽に産まれた。

プロポーズ小作戦マイナス2

2009-09-07 05:33:33 | コードギアス
プロポーズ小作戦マイナス2
1995年 のちに黎星刻と呼ばれる赤ん坊誕生

マリアンヌ 16歳は士官学校試験に落ちた。頭が悪いわけではない。運動神経も超絶に良い。ただ、マリアンヌの生まれが庶民でさらに北ヨーロッパの血を引いていることが問題になった。頭の固い役人に腹を立てたマリアンヌは民間の警備会社に就職。そこから傭兵に転じ、ある作戦で中華に渡った。そこには運命の出会いが待っていた。

ふんずけられたタラバガニのような面相で知られる玄武だが、若いころは結構いい男でさらにとんでもないほど強かった。単純な個人戦闘家としての強さだけでなく、指揮官としても優秀でことにゲリラ戦では並びたてる者はいなかった。
玄武は名家の生まれだが、親とそりが合わなかった。その為軍人となり家を出た。その後、軍のある作戦で傭兵の身分を得て中華に潜入した。そこには運命の出会いが待っていた。


強く生命力にあふれたオスと、若く野心家で強い存在が好きなメスの出会い。
それが、交わりになるのは自然な成り行きだった。

その結果、マリアンヌは17歳で子供を産んだ。黒髪黒瞳の赤ん坊。赤ん坊は健康そのものに見えたが、問題が起きた。マリアンヌは乳が出なかった。一滴も。
そのために父親である玄武は近くの山岳民族に赤ん坊を預けた。
このときの玄武に後で引き取るつもりがあったのかどうかはわからない。
ただ多額の金品を渡している点から見て、この時点では捨てた意識は無かったようだ。

さて、傭兵として玄武の指揮下で磨かれ、名をはせたマリアンヌである。
その噂をブリタニアの某高級軍人が聞き興味を持った。
マリアンヌはブリタニア軍のスカウトを受けると、実質的に夫であり、上官でもある玄武をあっさり捨てて帰国した。このときマリアンヌは自分が産んだ赤ん坊のことなど思い出しもしなかった。

マリアンヌに捨てられて、どうもそういう方面では純情だったらしい玄武は傷心を抱えて日本に帰国。帰ってみると実家の兄が急病で死亡していた。かくして玄武は急遽跡取りとなった。さらに兄の死が応えたのか父が死亡。当主になった玄武は軍人から政治家に転じる。以降は皆様もよくご存じのとおりで、ついには息子スザクの手で殺されることとなる。

プロポーズ小作戦100

2009-09-07 04:24:58 | コードギアス
プロポーズ小作戦100

三星堂、その前身は第一次世界大戦の起こる少し前某財団の末娘が設立したトリスター社の化粧品部門。
怒りのままに斬り殺した、いや間違えた、悪しき大宦官の手先に殺された亡き尊父高亥(享年43歳)も使っていたメーカーである。
星刻はメーカーを変えたかったのだが、生憎三星堂以外のメーカーは肌質に合わない。

舌打ちしながらも星刻の手は器用に素早く動く。さんざん高亥の化粧の手伝いをさせられたからすっかりうまくなってしまった。



数時間ぶりに通信回線を開く。
この数時間で中華はすっかり出遅れた。
すでにブリタニアが仲介して平和的解決をすることはインド政府との話し合いで決まっており、ここで中華が話し合いを拒否すれば平和の敵は中華となってしまう。

星刻は軍服の上に豪華な金糸で装飾された伝統的衣装をまとい、話し合いのテーブルに着いた。華やかで美しくはあるが、重いしだらだら長いし歩きにくいので、星刻は普段はあまり伝統的衣装を着ない。しかし、今回は仕方がない。
顔色の悪さをカバーするにはかなり濃い化粧をせねばならなかった。それに合わせるとなると軍服では違和感がある。

話し合いのテーブルにはすでにインド公式政府特使、ブリタニア皇帝の特使シュナイゼル、日本の扇総理の第一秘書兼特使、そして今回の藩王連合軍の総指揮官を押しつけられた老将軍がいた。
この日、長い裾を翻し部屋に入った星刻のことを老将軍はこう書いている。
〈威厳と言い、風格と言い、まるで王侯貴族が臣下の前に現れたようであった〉
のちに明らかになる星刻の血筋を考えると、この表現もそう的外れではない。

この会談で星刻はあまり目立った発言をしていない。
そのために話し合いはインド正式政府側がリードした。
シュナイゼルはナナリー皇帝の命令のままに調整役に徹し、日本はオブザーバーの立場を守った。
結果出た結論は両軍とも平和的に秩序を守って撤退する。この撤退行動にはゼロも立ちあう。
なお、インド国内のことはインドが解決する。
インドと中華は近いうちに学生の文化交流を実施する。これはナナリー皇帝の勧めであり、ブリタニアも参加する。


こうして話し合いのもと、両軍はゆるゆると撤退を始めた。
この頃ゼロ・スザクはナナリーの要請でニコバル島を目指して飛んでいた。


さて、先の話し合いの内容を見ればわかるが、中華側は何も要求していない。本来なら、インド側の国境侵犯に対して強く出て、何らかの利益を獲るべき状況であるのにだ。
これを政治的深慮遠望と見る歴史家もいるが、事実は異なる。
椅子に座って威厳を保つだけでも星刻にはつらかった。
話し合いを早く終わらせたいのが星刻の本音であった。

このときの星刻の対応は、のちに中華国内から大非難を受けることになる。

プロポーズ小作戦マイナス1 星刻の過去捏造

2009-09-04 22:39:02 | コードギアス
プロポーズ小作戦マイナス1
星刻の過去捏造。(金属中毒設定)。でも公式でも在りえたかもしれないと思える。
1993年

星刻の父は下級役人であったとは公式設定に在る。
ただし、それが実父とは限らないのが中華の常識である。養子制度が当然のこの国では、血のつながらない親子はめずらしくない。それは家の事情が大半だが、中には情で幼児を引き取り育てる者もいる。
星刻の養父黎一籐はそういうタイプであった。




黎星刻は母を持たない。

星刻が親と思うのは、亡き養父黎一籐だけである。

黎一籐、歴史的にはまったく意味を持たない名である。
もし、黎一籐が養子にしたのが〔星刻〕でなければ、芥の民の一人として終わったはずである。

ゼロ革命から約1年後の今日、黎一籐は贈り名として中華第2位の地位を与えられている。養子である星刻が贈ったものである。
その墓は日本人の目から見れば、墓というよりりっぱな寺院である。校庭ほどの敷地に風格のある建物に風流な庭。表門のわきには拝観口があり、幸運にあやかりたい者が黒山をなす。
生前には想像もできない栄耀栄華。
すべて養子からの贈り物である。




黎一籐はかろうじて漢族の末端の生まれである。
しかし混血の女を正妻にしたため、一族から追放されている。
立場より愛を貫いた。
黎一籐は風采のあがらぬ小男だったが、魂は熱いタイプであったようだ。
その後、運命は黎一籐につらくあたり、妻は産熟で死亡。
さらには産まれた男の子には頭部に奇形があった。
額、つまり前頭葉部分が大きくへこんでいた。
中華社会の常識では、こういう子供が生まれた場合死産だったことにする。
しかし、黎一籐は子供を大事に育てた。
役所に金を払い正式の戸籍までつくった。
「この子は人と同じ時間を生きない。
この子は星の時間を持って生まれた」
一人目の黎星刻の誕生である。

プロポーズ小作戦99 化粧品はうちの子達の必須アイテムです。(^v^)

2009-09-04 22:07:48 | コードギアス
プロポーズ小作戦99 化粧品はうちの子達の必須アイテムです。(^v^)
2021年2月10日

痛み止めを常用しているとだんだん効果がなくなる。これは常識である。
星刻は身をもってそれを体験している。
だからこそ、動けなくなる前にと星刻は≪大掃除≫を急いだ。

大掃除、それはルルーシュ・ゼロが行動を起こす前からあった計画。ゼロの行動により多少の変更はあったが大筋は変わらない。『われらの祖国を食い散らす寄生虫どもを打倒し、世界に冠たる中華の栄光をとり戻す』
そして、生まれ変わった中華の中核は漢族。

そのために漢族の名門の生まれである洪古達には絶対に汚れ仕事をさせない。
こう決めたのは星刻であった。
実際に恨みを残しそうな場面では必ず星刻が出ている。
大宦官達を斬り殺したのも、上海の内戦も全て星刻が出た。
この件について当時洪古は反対したのだが、『天子様の御世を支える漢族には傷を付けてはならない』と、普段の温厚さを捨てたかのように星刻がむりやり押し切った。

そして今、同じ理由で星刻はニコバル島にいる。  
指揮下に置くは精鋭白虎軍団。



また、通信機が反応している。
3時間ほど前から、もう何度目かで星刻はそれを取らない。
インド側が何か動いているのか、日本から赤い水のデータを送ってきたのか、あるいはシュナイゼルあたりが何か動いているのか、星刻の脳は素早く動き対策を立てる。しかし、星刻の手は通信機を取ろうとしない。
通信モニターの黒い画面に移す自分の顔、とても人前に出られる状態ではない。
しかたない。
星刻は舌打ちしながら小さなポーチを取り出す。出てくるのは三星堂社製の高級メンズ化粧品。