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プロポーズ小作戦45

2009-04-23 12:10:08 | コードギアス
プロポーズ小作戦45

時間を早回しさせていただけるなら、星刻の今回の独断は人権問題でうるさく言ってくるヨーロッパ世界へのけん制だった。
中華は自分で変わりつつある。お前たちはわが国の事に口を出すな。
それを見せるのにこのキルギスほどふさわしい場所は無かった。
それまで、人身売買どころか、正規の輸出品として売られていたキルギス女性が解放された。キルギスには公式には女はいない。戸籍に載っているのは男のみである。女性の地位はアラブ世界並みに低い。キルギスが洛陽に反発している理由のひとつに今の天子が女だという事もある。
この女性地位の向上にはキルギス内の経済界からの反発が予想されたが、星刻が選んだ新しいキルギス代表は、ちゃっかり中華軍の攻撃部隊をそういう連中の本拠地にも送り込んでいた。
付け加えるならそういう場所に送り込まれた中華の兵士は出荷予定だった女性50人を戦利品として持ち帰った。
その女性達を偶然にも、星刻が目をつけていた人身売買組織に売った。それを知った星刻は自ら剣を片手に乗り込み、当の兵士を含めた小隊全員を斬首している。




さて、時間は44章の冒頭の台詞の少し後に戻る。
ずいぶん長く星刻と洪古は話していたがまるでかみ合わない。
星刻はこのとき意識下でシュナイゼルを対象に戦っていた。だが、それを声に出した事は無い。
一方洪古は星刻がまた一人で行動したこと。どうして他の将官を送るだけにしなかったのかを責めた。だが、「お前が無茶をするのが心配なんだ」とはっきり言う事はできない。お互いに立場もある。
何よりも、星刻の性格だ。そんな風に言われて素直に聞くタイプではない。
だから言葉はすれ違う。
「部下を信頼するのも上官の仕事だ」
洪古の言葉に星刻が言い返す。
「能力を把握しておくのも仕事だ」
今の中華軍には政治的な問題が絡んでいる場所をうまくこなせるやつはいないと、星刻は言う。
それも当然で、いままでそういう政治がらみの問題は宦官が執り行ってきた。朱天革命前、軍は宦官の後に付いて行って宦官と利益を分け合った。
今の中華軍で政治的配慮をできるのは星刻はじめ10名にも満たないだろう。
洪古自身も政治は苦手とは言わないが、なるべくなら剣で解決したい性質だ。
実のところ星刻自身もCCの言葉を借りれば「政治もできる軍人」だった。本質は剣にある。



ダモクレス戦で星刻はあの裏切り騎士スザクと戦った。そのとき、神虎の背を大きく断ち切られその衝撃でのどを痛めた。あの混乱の中、治療できなかったため後遺症が残り、長時間の会話には耐えられなくなっている。
それに他の将官も出入りする場所で、最高司令官と右将軍がいつまでも言い合っているのはまずい。星刻は決め付けるように言い切り立ち上がろうとした。
「とにかく、今回の事はすでに私の権限で決定した事だ。これ以上の抗議は」
聞かないとの言葉は星刻からでなかった。声がでない。息が吸えない。
自覚よりも身体は疲れていた。それに気が付いたときにはもう遅かった。
視界が急に暗くなる。
「星刻?」
急に言葉を切った星刻を洪古はじっと見る。
顔色が悪い。これでは前に貧血で倒れたときと変わらない。周りを歩いていく将官達が、まったく騒がず敬礼だけをして行ってしまうのを見ると、自分がいない間星刻はずっとこんな状態だったのだろう。
「星刻」
そっと呼んでみるが返答が無い。

(こいつ息を!)
星刻は呼吸していない。意図的なのか、できないのか。いずれであってもあまりいい状態ではない。
一秒で洪古は行動を決定した。将官服のコートを脱ぎ、まだパイロットスーツのままだった星刻をくるむとそのまま肩に担いだ。

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