【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

世代間ワークシェア

2011-04-13 19:03:13 | Weblog

 若者の失業の多さを思うと、日本の将来が心配になるのは、震災の有無にかかわらず同じことです。ふっと思ったのですが、世代間のワークシェアリングは不可能なのでしょうか。たとえば「55歳定年制」の復活です。ただ、単に早期リタイアだけ進めるとそれはそれで「老」の側がきついので(そもそも55歳は、今では「老」とは言いにくいですよね)、再就職はする、ただしフルタイムではなくてハーフタイムで。同時に、子ども手当ではなくて大人手当(55歳超が受給資格)を配るのはどうでしょう。金額はかつかつ生きていけるだけ。全員ほぼ平等。
 面倒くさい年金制度をきわめてシンプルにしてみました。
 もちろんこのままでは実現は難しいでしょうが、とにかく何かを大きく変えないと、日本はこのままじり貧になっていくと思えて仕方ないのです。

【ただいま読書中】『死よりも悪い運命』カート・ヴォネガット 著、 浅倉久志 訳、 早川書房、1993年、1845円(税別)

 現在ハヤカワSF文庫に入っていますが、SFではなくてエッセイ集です。1980年代に著者が行なった講演やインタビュー、エッセイなどを、後日の回想文でつなぐという手法で編まれていて、著者は「自伝的コラージュ」と言っています。
 口調は、いつものヴォネガット流のままです。
 母の精神病(真夜中を過ぎると突然夫に対して純粋な憎悪と軽蔑を浴びせかける)が、アルコールと睡眠剤によるものではないか、という話から、祖父と父が建築家であること。子供たちのこと。ヘミングウェイについて、そしてヘミングウェイが称賛した数少ない作家の一人であるネルソン・オルグレンについて。
 著者の子供時代、黒人がリンチに会うのは日常茶飯事でした。そしてその犯人がつかまらないことも(その前の前の世代では“インディアン”に対するジェノサイドが行なわれていました)。それらと合衆国憲法との関係について、著者は本当にシビアなことを述べます。合衆国が「自由のたいまつ」だったことがあるのか? 「規律ある民兵」に武装の自由があるのは、誰に襲われるという恐怖からなのか?(“身に覚え”があるのか?)
 著者は捕虜となってドレスデンにいたときに、連合軍の無差別爆撃を受けました。まったく軍事的価値がない都市に英米軍が焼夷弾を振りまいたのです。その時の体験がのちに『スローターハウス5』を生みますが、このことに関する講演での著者の口調は、いつもに増してシニカルです。そこで著者はこうまで言います。「最近の爆撃は、見せ物だ」。のちの「テレビで見る戦争」の予告のようです。
 そして「死よりも悪い運命」について。反核の話ですが、著者はこの“説教”を教会でやっています。よくもまあ教会が著者にそれを許したものだ、というか、著者はたしか無神論者として通っているのではありませんでしたかねえ、よくもまあそんな人に教会で話すことを依頼したものです。
 ガチガチの右翼から見たら著者は「反米主義者」に見えるでしょう。それは著者が合衆国の“恥”を直視しているからです。ただ、私からみたら他人を攻撃することで“恥”を否認する態度の方が、よほど非愛国的なのではないか(というか、人としてどうか)と思えます。著者は個人の(従軍、捕虜、飢餓、そして友軍に殺されかけるという)経験をベースに「殺すことも殺されることもまっぴらだ」と発言しているのであって、その経験を他人が「愛国心」を根拠に軽々しく否定することはできないのですから。




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