【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

文字通り

2014-03-21 07:29:43 | Weblog

 私はときどきわざと「文字通り」に文字列を解釈して遊ぶことをします。遊びだと面白いのですが、それを真剣にやっている人もネットで見かけることがあります。そしてそれが原因で「炎上」が起きることも。
 たとえば甲さんが「木偏の文字は木製を意味する。だから金属製の柵を木偏で書くのはおかしい」と文字通りの解釈をして譲らなかったとします。それに対して乙さんが「木偏にこだわるのはあまりに頭が固い」とコメントをつけたとします。しかし甲さんは譲らず、結果として甲さんと乙さんの間で怒りのコメントのやり取りが生じたとしましょう。
 ところで甲さんが「文字通りにしか“柵”という文字を読んでいない」と解釈する乙さんの態度もまた「甲さんは“柵”を文字通りに“木偏の漢字”としか読んでいない」と、「甲さんの態度」を“文字通り”に頑なに読んでいることになりませんか? もしかしたら“文字通り”に読む甲さんの態度の裏には、何か“別の文脈”が潜んでいるかもしれないのですが。

【ただいま読書中】『星界の戰旗II ──守るべきもの』森岡浩之 著、 早川書房、1998年(99年9刷)、540円(税別)

 「幻炎(レニーヴ)」は成功し、アーヴ軍は次のフェーズ「狩人(ブレージュ)」に移行しています。
 ところで我らがラフィールとジントは、王女と伯爵という希有な組み合わせがたたってか、“貧乏くじ”を引かされています。今回二人が向かうのは、帝国の版図に組み込んだばかりの惑星ロブナスII。ところがここは、刑務所惑星だったのです。しかし、ロブナスの支配は人類統合体から帝国にうつっているので、そこに住むのは「囚人」ではありません。では惑星の主権は誰の手に?  「囚人ではないから」と他の惑星への移住を求める人々をどう扱えば?  そもそも刑務所惑星と交易するとして、その“産品”は?
 ドタバタさせられる二人をよそに、「狩人」作戦は着々と進行中です。「無くて49癖」くらい癖のある司令官と参謀長の組み合わせの双生児ネレースとネフェーの第4艦隊は突出を続け、その無軌道ぶりに戦争は混乱します。
 この「戦争」を難しくしているのが「情報の伝達速度」です。昔の地球での帆船時代の戦争と同じく、平面宇宙での情報伝達は「連絡艇」に頼らなければならないのです(ホーンブロワーやボライソーをここでも私は思い出します)。当然「最新情報」は到着した瞬間にすでに「古い情報」です。その古い情報を元に作戦を立てなければなりません。
 こういった“大きな戦争(宇宙空間での艦隊戰)”と、“小さな戦争”(惑星ロブナスIIでの内乱)とが交錯します。どちらの戦争でも、うっかり危ないものに触れてしまったらあっさりと命がなくなるのですが。
 遺伝子工学的に手を加えられたアーヴと地上に生きる人類という“異人種”であり、さらに身分違いのラフィールとジントですが、二人の絆は確実に強くなっています。単純な愛情ではなく、といって単純な友情でもない絆が。そして、その二人を温かく見守る周囲の“大人たち”がまた魅力的な人物造形をされています。これって、登場人物や挿絵などを見るとジュブナイルかヤングアダルトSFに分類されるべき作品なのでしょうが、実は「羊の皮を被ったオオカミ(ジュブナイルのふりをした本格SF)」なのではないかしら。



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