【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

寒い!

2016-01-24 13:56:22 | Weblog

 数十年来の寒波だそうですが、暖房をかけていても家の中で震えています。自動車はスタッドレスタイヤに交換してあるし、先週満タンにしたから何があってもとりあえず何とかなる、なんて思ってましたが、そもそも外に出る気になりません。

【ただいま読書中】『墓場の少年 ──ノーボディ・オーエンズの奇妙な生活』ニール・ゲイマン 著、 金原瑞人 訳、 角川書店、2010年、2500円(税別)

 児童文学の書棚にある本ですが、奇妙な、というか、陰惨な始まり方をします。一家が惨殺されるシーンです。たった一人生き残ったのはよちよち歩きの幼児一人。彼は近くの墓地に迷い込み、同情した幽霊の夫妻に育てられることになります。
 「幽霊の子育て」って、無理ですよね? その「無理」を通すために、協力者が必要になりますが、そのためにかえって新しい無理(と謎)が次々登場することになります。さらに、ノーボディと名付けられた子供(愛称ボッド)の家族を殺した「ジャック」は、まだノーボディを殺そうと探し回っています。なぜ? これまた謎です。
 墓地自体もまた「謎」です。ローマ人にブリテンが支配されていた頃からの“歴史”を誇るのですが、丘の中には幽霊たちにもわからない何か別の古いものが葬られているようなのです。ボッドは、初めての友人(スカーレットという少女)と墳墓を探検しますが、見つけた“お宝”はがっかりするようなもので、さらにその行為のために友人を失ってしまいます。だけど、ボッドはすくすくと成長します。育ちが育ちなので、姿を消したり人の夢を歩いたり恐怖を植え付けたり、なんてこともできるようになってしまいますが。そうそう、学校ではまるで座敷童のような存在になってしまうのですが、著者はもしかして日本の座敷童をご存じなのでしょうか?
 墓地の外、生者の世界にはボッドの死を望む者がいます。墓地の中、幽霊たちはボッドの生を望んでいます。なんとも不思議な世界です。そして、死者は己の生を全うしているけれど、生者はちゃんと生きられない者たちなのです。そして、ボッドはまた「ジャック」と再会してしまいます。多くの犠牲を払ってジャックから逃れることに成功したボッドは、ついに「自分の人生」の第一歩を踏み出すことになるのですが……
 一家皆殺しで始まり、墓地から自分の人生を始めることで終わるという、実に奇妙な本です。しかし、「生きる」ということについてこんなに平易な言葉で深く考えさせてくれる本も珍しいでしょう。カーネギー賞(イギリス)とニューベリー賞(アメリカ)を両方とも授賞するという、とんでもないことをしてしまったわけも、読んだらわかります。