【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

ベルリンの壁

2016-01-12 07:05:47 | Weblog

 この前平成生まれの人と話をしていて、「ベルリンの壁」はなんとか通じましたが「鉄のカーテン」は知らないと言われました。私はどんどん古くなっているようですが、まあ良いです。今の若い人もその内に21世紀生まれの人たちに「アベノミクス? 何それ?」などと言われることになることでしょうから。

【ただいま読書中】『ベルリン 分断された都市』ズザンネ・ブッデンベルク 著、 トーマス・ヘンゼラー 画・著、 エドガー・フランツ 訳、 深見麻奈 訳、 彩流社、2013年、2000円(税別)

 ベルリンの壁にかかわる5人の実話をコミックにした本です。コミックと言っても、題材が題材だし、画調は欧米流のコミックですから、ちっともコミカルではありませんが。
 地下鉄がまだ通っているときに、西ベルリンの学友の身分証明で脱出した少女。ベルリンの壁を越えようとして射殺された男性。ビルの屋上から西ベルリンに張ったケーブルを伝って脱出しようとする一家。東ベルリンで写真撮影をしていて逮捕された青年。18歳の誕生日に「壁が開いた」という噂を聞き、みなと一緒に西ベルリンに入ることができた青年。
 西ベルリン国会議事堂前でのデヴィッド・ボウイのコンサートの話ではブランデンブルグ門が登場します。「東」に向かっても歌いかけるデヴィッド・ボウイの歌声を少しでも聞きたいと、若者がブランデンブルグ門前に集まり、それを恐れた警察は暴力的な反応を示したのです。しかし「民意」を止めることはできませんでした(そういえば昨日デヴィッド・ボウイの訃報が報じられました。好きなミュージシャンの一人だったので残念です)。
 ベルリンの壁の建設は、きわめて精密に計画されていました。しかしその破壊は、混沌の中で進みました。それが最後のコミックで読み取れます。なにしろこの青年は、誕生日の当日まで「自分が西に行ける」なんて信じていなかったのですから。歴史って、なかなか人間の計画通りには進まないもののようです。というか、歴史を自分の思い通りに進めようとか変えよう、と思うことが傲慢の証明なのでしょうね。