早く「死語」になってもらいたいことばですが、中国ではまたその濃度がどかんと上がったそうです。
すりガラス越しに眺めているような街頭写真を見て私が思い出すのは「霧のロンドン」。中国では暖房に石炭を使っているそうですが、ロンドンでも石炭を使っていて、そのため19世紀から何回もひどいスモッグが発生し、1952年には有名な「ロンドンスモッグ事件」で1万人以上が死亡しています。中国政府から見たら「1万人なんか“誤差”の範囲内」なのかもしれませんが、それはそれで「PM2.5以上のひやりとする怖さ」ではあります。
【ただいま読書中】『世界の市場』松岡絵里 著、 吉田友和 写真、国書刊行会、2012年、1800円(税別)
夫婦合作の本ですが、著者紹介を読むとすごいですね。新婚旅行が607日の世界一周だったそうです。本書は、そういった旅好きの著者二人が10年かけて集めた世界各地の市場体験の集合体です。
のっけから私は食欲を刺激されまくりです。じゅうじゅうと音を立てているような牛肉のどアップが登場するメヒコのリベルタ市場。噛めば噛むほど口の中に肉の旨味と塩気が広がってきそうな生ハムがてんこ盛りのバルセロナのサンタ・カタリーナ市場。
見たこともない魚、見たこともない色鮮やかな野菜や果物……旅先でそんな物を見て指をくわえているばかりではなくて、著者は「旅先で料理をする方法」を複数伝授してくれます。面白かったのは「現地での料理教室に参加」という手です。制限はいろいろありますが、中には市場での買い物からコースに組み込まれている嬉しいものもあるそうです。
なんだかお腹いっぱいの気分になってきたら、こんどは雑貨市場。やはり女性は「カワイイ小物」が好きなのかな、なんてことを思っていたら突然「魔女市場」(ボリビアのラパス)が登場します。魔術・呪術用グッズばかりの「市場」です。誰が買うの? 何のために?
イスラムは男性優位社会ですから、市場も「男性優位」です。女性は家に閉じ込められているので、買い物は男の仕事です。女性の下着も男が買いに行きます。で、けっこう派手なのを買っていたりするそうです。
市場は、雑多な「もの」と雑多な「人」の混合物です。本書にも、様々な魅力的な人と魅力的ではない人が次々登場して読者を飽きさせません。日本の市場でも人と人が毎日いろんなことをやっているんでしょうね。