自己満足で完結している人間は、つきあうときに扱いに困りますが、自己満足に満足できなくなった人間はもっと扱いに困るものです。
【ただいま読書中】『二代目が潰す会社、伸ばす会社』久保田章一 著、 日経プレミアシリーズ、2013年、850円(税別)
「二代目が大きく発展させた企業」がこの世にはあります。本書ではユニクロが例示されていますが、父親の代には年商一億円だったのを二代目はその1万倍の規模にしました。逆に「二代目が潰した企業」もあります。どちらかといえばこちらの方が多いでしょう。ここ数年の統計をみると、倒産した企業の3割は「法人設立30年以上」なのです。おそらくその多くは「社長が二代目(以降)」のはず。
さらに、社長が55歳以上の中小企業へのアンケートで「自分の代で廃業」が3.6%、残りの半分は「まだ後継者が決まっていない」となっていました。
会社を存続させるためには「後継者」を定めなければなりませんが、そこで日本独特の「保証人制度」が出しゃばってきます。中小企業の場合銀行に認めてもらうためにはこの制度を突破しなければならないのです。
後継者を選ぶ側は大変ですが、選ばれた方も大変です。何しろ会社の体制は“先代”が構築したものです。そこにいる人たちはみな“先代”の方を向いています。ではそこでどうやって「求心力」を得ることができるのか。「たった一つの正解」はおそらくありませんが、本書にはいろいろなヒントが散りばめられています。さらに後継者が取り組むべきことは「経営革新」です。無難に「前例踏襲」ではありません。企業が“老化”することを防ぎ“アンチエイジング”をするのです。経営革新は「事業革新」と「経営システム革新」に大別されます。これは別に経営者が新しくても古くても常にやるべき“事業”ですが、中小企業の場合、経営者の交代がちょうどよいチャンス、ということなのでしょう。
こういった本を読んでいて思うのは、「どんな経済状況でも、どんな会社でも通用する“完全なる法則”」は存在しない、ということです。もしもそんなものを発見できたら、ノーベル経済学賞ものでしょう。同じことをやっても成功する人もいれば失敗する人もいる。共通点が見えたと思っても、別の状況ではまた話が違ってきて、科学と違って再現性がありません。
まあ、だからこそ、こういった本が売れ続けるのでしょうけれど。