【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

○リンピック

2013-10-03 06:56:28 | Weblog

 「リンピック」で検索をかけてみると、様々な競技が登場します。そこで私も一つ、しょーもない“競技”を考えてみました。鼻くそリンピックです。自分の鼻をほじって鼻くそを丸めて飛ばす競技。再トライは何回でも可能ですが、自前の鼻くそがなくなったらそこで競技は終了です。飛距離の部門と的当ての正確性を競う部門とがございます。ドーピングの代わりに、“それ”が本当に自前の鼻くそかどうか、サンプルを取ってDNA検査も行います。
 さて、人気が出るかな? いや、世間では広く行われているでしょ?

【ただいま読書中】『人類の星の時間』シュテファン・ツヴァイク 著、 片山敏彦 訳、 みすず書房、1996年(2001年2刷)、2500円(税別)

 個人の一生の中でも、歴史の中でも、まれにしかない「星の時間」、ある一日・あるひとときに凝縮された「瞬間」に時を超えて生き続ける決定がなされる「瞬間」。そういった「星の時間」がいくつも集められた本です。
 パナマ地峡を横断して、スペイン人として初めて太平洋を発見したヌニェス・デ・バルボア、彼は実はスペイン国家から追われる犯罪者でした。彼は偉業を成し遂げることで一発逆転を狙い、成功します。しかし……
 バルボアはパナマ地峡を自分の足で越えましたが。ビザンチン攻略戦を戦うトルコ皇帝マホメットは船に山越えをさせようと決心しました。それも「船」ではなくて70隻の「船団」を。この奇跡のよ一瞬に、マホメットの特別な天才が存分に発揮されています。
 経済的に苦しく脳卒中で倒れたヘンデルに、オラトリオ「メシア」が“降りて”きた日のことも印象的な筆で描かれています。ヘンデルの場合には「星の時間」以後も活発に作曲活動を続けることができましたが、人生に一晩だけだったのがルジェ大尉です。ストラスブール市長の依頼で行軍のための軍歌を作ることになったルジェに「星の時間」が訪れ、愛国的な軍歌「ライン軍のための軍歌」が生まれます。その歌はなぜかマルセイユに伝わり、志願兵たちはその歌を歌いながら行進していきました。タイトルは「ラ・マルセイエーズ」と変わり、マルセイユ兵の歌を聴いたパリ市民も熱狂、国民的な歌になっていったのでした。皮肉なことに、作詞作曲をしたルジェは忘れ去られ、のちに「反革命」の罪で投獄されたときにそのことが思い出されたのでした。
 大病に倒れた後の「星の時間」は、ヘンデルだけではなくてゲーテにも訪れました。ゲーテがそこで生み出したのは「マリーエンバートの悲歌」です。ゲーテのもっとも重要な詩についての章だからでしょう、それを紹介する著者もなんだか詩的な気分になっているような文章です。
 あとはトルストイやレーニンなど、本書に取り上げられるのはわずか12の「星の時間」ですが、おそらくそれ以外にも劇的な「星の時間」は山ほどあるはず。歴史を変えるほど大きなものでなくてもよい、と条件を緩めれば、人の数ほどあるかもしれません。たとえば私個人にだって「星の時間」と名付けて良い瞬間は見つかりますもの。それらをテーマに捕まえることができたら、それだけで一つの小説が書けるのでしょうね。