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足立直義の丹沢・大山山麓だより

生き物との出会いを楽しみに今日も山麓を歩いています

No. 1706 ~ 続 スミレサイシンに思い出す ~ 

2020年06月29日 | 植物

観察月日  2007.5.8.晴 17℃

観察場所  岩手県 安比高原

 13年前、山岳雑誌「山と渓谷」2007年3月号にスプリング

・エフェメラル“春咲く山の妖精たち”の特集に、岩手県・安

比高原が紹介されていた。そのページには、広いブナ林の

地上一面を埋める”キクザキイチゲ“の花、夢の様な写真が

載っていた。花期は5月上旬~下旬とあり、まだ私が見た事

の無い、「日本海側要素の植物スミレサイシン・・・なども咲

き乱れている」とあった。

 2007年5月8日8時56分発上越新幹線の車中に私はいた。

盛岡で花輪線に乗換、安比高原駅13時49分着で下車したの

は私一人であった。1本のホームと小さな朱塗りの可愛い駅舎、

勿論無人。原野の中で家はなく、ホームの垣根越しに見降ろ

すと、そこはミズバショウの咲く湿原であった。

 電話して、車で迎えに来てもらい、ホテル着。4階建の立派な

建物、宿泊者は私一人だと言う。つい数日前の連休中は、スキ

ーヤーで賑わっていたのだと言う。ここは、“東北有数のスキー

リゾートとして有名な地”である事を私は知らなかった。 

 早速ホテル裏の原野へ出ると、そこはブナを交えた雑木林、

雪解けしたばかりの湿地状、林床は開いたばかりの“キクザ

キイチゲ”の花で埋め尽くされ、夢の様な秘密の花園の最中

に足が止まってしまった。

 その時大事な事を忘れかけていた。雪国特有の”スミレサ

イシン”に出会うのを目的に来た事を。その後、雪解けの進

む原野を探し歩いてみたがスミレサイシンに出会う事は出来

ずその日は夕暮れとなってしまった。残念! 

花輪線は原野を行く。

 

安比高原駅のホーム

 

ホームの垣根から下を覗くと、ミズバショウの湿地。

 

立派なホテルの今日の宿泊者は、私一人。

 

早速 原野へ 視野一面に キクザキイチゲの花園。

 

 

花は 淡紫色~白。

至る所 雪が残っている。

芽生えたばかりの植物も多い。


No. 1705 ~ 目立った もの ~

2020年06月13日 | 植物

観察月日  2020.6.4.晴 28℃

観察場所  秦野市 渋沢 渋沢丘陵

 2月以来、丹沢山麓を歩く事を自粛していたら、足がだるくて

歩くのに自信が無くなる感じがした。そこで、思い切って渋沢

丘陵へ、出掛けて見た。

 街を抜け丘陵に上がる坂道に入ってみると、両側がノハカタ

カラグサで埋め尽くされ、自然が造られた見事な花壇になって

いた。通る度に見ていたのだが、緑の絨毯の中に斑入りの葉

がチラホラある事に初めて気付いた。昭和の初め、葉に白色

斑紋のあるそれを園芸品種に輸入されたが、野生化してしまい、

班は消失したのだと言う。その名残がここに現われているのだ

ろう。

 私の好きなアカショウマが咲き、造りの美しさに立ち止まる。

 アオオサムシが草の下から道端へと出入りしている。オオヒ

 

ラタシデムシも何匹も歩き回っている。暑い。餌に出会えないのか。

 ヤマトシリアゲが体にぶつかるように、飛んで来る。

 新鮮なダイミョウセセリが多い。食草のオニドコロの芽先が光る。

 真新しいテングチョウが目の前にとまる。越冬したチョウが舞っ

ていたのは、ついこの前の事。世代が進んだのだ。

 家籠りは、季節の、自然の、地球の生命観を忘れさせてしまう。

再来の時は、科学的・医学的・・な施策を考えて欲しい。

坂道の両側は、自然が造った花壇が続く。

1cm程の白い花。ツユクサの仲間。南アメリカ原産。

斑入りのものを園芸種として導入したのだが?

アカショウマの花が咲く頃を、忘れていた。

何故か アオオカムシが目立つ。

 

オオヒラタシデムシも 目立つ。

ヤマトシリアゲも 目立つ。

新鮮な ダイミョウセセリが多い。

真新しいテングチョウが。


 No.1704 ~ スミレサイシンに思い出す ~

2020年06月02日 | 植物

観察月日  2020.6.1.雨 20℃

観察場所  丹沢山麓 他

 2月末、宮ケ瀬の林道で崖に咲くナガバノスミレサイ

シンの群落を見上げて以来、2か月余り外出は自粛、庭

の小さな野草園と菜園の手入れに明け暮れた。本来は、

山麓を歩くことを日課にしている者にとっては、現在

失業中だ。

 ナガバノスミレサイシンに出会った時、つい思い出

した事がある。それは昔自然観察会に参加した時の事

で、ある里山の古い神社のわき道に差し掛かった時、

案内人が立ち止まり、「これが、ナガバノスミレサイ

シンですよ」と話され、参加者は興味深く観察を始め

た。すると案内人はリックの中から図鑑を取り出し

「これは、スミレサイシンと言うスミレです。名前が

似てますね」と。実物がないので参加者の反応は鈍か

った。

 その後、案内人が図鑑を出した意味が解からないの

で、先ずは、図鑑のナガバノスミレサイシンのページ

を開いて見た。

 そこには、「太平洋側に分布し、葉が長いのが特徴

・・・・」とあった。その中でも「太平洋側に分布」

の記述が気になり、意識して歩くことにした。

 丹沢山麓は太平洋側、歩くと各所にある。多くは初

春は日光の入る雑木林、時には杉林、湿り気のある落

ち葉の中から突き出るように花が咲く。その時には、

葉は伸び始めで落ち葉に埋もれている事が多く、そ

の後は、別物かと思う程に伸び、始めて出会った時に

は違う物かと驚いた事があった。

 ところで、その当時“スミレサイシン”を見た事がな

かった。

 このスミレは、ナガバノスミレサイシンとは対照的

で、日本海側の多雪山地に生え、雪が解けると一斉に

咲きだす種類なのである。

 太平洋側に住む私は、積雪の季節には動物撮影に何

度も訪れているが、雪解けの初春には尋ねた事がなか

ったのである。

2月25日 宮ケ瀬の林道で見上げたナガバノスミレサイシン群落。

宮ケ瀬でのナガバノスミレサイシン。

落ち葉の中から突き出たナガバノスミレサイシン。石割山。

ナガバナスミレサイシン 石割山。

花 石割山。

葉も出ているナガバノスミレサイシン。石砂山。

花弁が細目だ。石砂山。

 

 

 


No. 1695 ~ ゆめが丘駅あたり ~

2020年02月18日 | 植物

観察月日  2020.2.4.晴 12℃

観察場所  横浜市 泉区 下飯田

 高架駅のホームに立って見ると、東側は住宅が立ち並び、

西側は広大な宅地造成中で、トラックが走り、建設重機が

動き、砂漠状態だ。

 その後方に深緑の林が南北に続く。シラカシやスダジイ等

の常緑広葉樹だろう。その林の向こうには境川が流れ、川が

削った東側の段丘の外れだ。私はその樹林に向かい、土埃

の立つ宅地造成地の真っただ中を歩く。やっと昔、農家の牛

車が通る幅の道を見付け林に着くと、道は下り坂になり河岸

丘陵を境川に向かっているのを感じた。

 ウメ畑があり、今は作物の無い畑の向こうに、神社らしい社

が見えた。地図を見ると、”サバ神社“らしい。カメラのファイン

ダーを覗くと、今は無いひと昔前の長閑な風景が写っていた。

鎮守の森はケヤキの老木に囲まれ、社殿は飾り気の無い長

方形、前の扉は赤錆び色に塗られている。見上げると〝左馬

神社”の額が掛けられていた。何気なく目を落とすと、大豆が

幾粒か落ちていた。「そうだ、今日は立春。昨日は節分だった

のだ」私は家で“豆まき”をした。だが、近所からは、声が聞こ

えなかった。ここの神社も、落ちていた豆の数からして、豆ま

きに来たのは一人だったのだろう。昔は賑やかだったろうに。

 社殿を離れ振りかえると、ヤブツバキの落花が境内を飾り、

凝灰岩で掘った不動明王像が神域を守っていた。厚木から

伊勢原に掛けて石切り場があり、石工がいる事から、造った

物だろうか。

 道を下り境川に出た。川砂の溜まりに、コガモの群れが休

んでいた。

うめが丘駅は高架駅で、眺望がいい。

大規模宅地造成の先に見える林は、境川の河岸段丘上の林。

私は林に向かって、宅地造成地の中を行く。

畑の向うに、神社らしい社が見えて来た。

神社の正面に行き見上げる、「左馬神社」の額が。

目を落とすと、大豆が幾つぶかが。 昨日は節分だったのだ。

振り返るとヤブツバキの落花が。

不動明王 境内を守る。

境川を渡る。

砂地に眠る コガモ。

 

 

 

 

 

 


No. 1689 ~ 年賀状に寄せて ~

2020年01月05日 | 植物

観察月日  2019.10.20.晴 21.5°

観察場所  厚木市 七沢 (県自然環境保全センター)

 今年の年賀状には、“ミゾソバの花に来たホソヒラタアブ”を取

り上げました。

 ミゾソバは湿地に生える野の草で、田んぼや水辺でよく見られ

る。草丈は0.3m~1m程で、よく群生し、保全センターの湿地に

はそれが見られ、見事だ。

 和名は、江戸時代には付いていたらしく、暮らしに重要な“そば

の花”と似て、溝に生えている事から付いたのだろう。この他”ウ

シノヒタイ(葉の形から)、カイルグサ(カエルが住んでいるから)、

コンペートー(花の形から)、等よく目にする名前だ。

 日本植物方言集成を開き、全国各地の方言名を数えて見たら

100以上に登り、農村の大人や子供に、日常的に親しみのあった

植物であった事が伺い知れる。

 花は小さく花弁状の蕚片は5裂し、先を紅色に染め、集合花で

目を引く。

 ところが開花の様子を見ると、雄蕊雌蕊を出しているのは1~2

花で、寂しい。訪れる昆虫を見ると、もの静かなホソヒラタアブで、

静かに飛来し、静かに止まり、静かに花粉を食べる。花を全開し、

元気なマルハナバチが訪れ、花の上を賑やかに走り回るそれとは、

対称的だ。

 長い時間と歴史の中で、花も虫もそれぞれの個性を生かし、命

を繋ぐのに最良の方法を見付けだした様に思えるのだが、どうだ

ろうか。

今年の年賀状の原画。

ミゾソバの群生。

アブの仲間は、花粉を舐める・・・・・・!

ヒラタアブは静かだ。