昨日、酒井康雄ギターリサイタルに行って来ました。
台風の接近で荒れた天候だったので、コンサートが実施されるのか、中止にならないかとの電話問合せが何件も入っていましたので、ご来場者が少ないのではないかと心配でしたが、上々の入りでした。
流石に酒井先生はギター界以外にもお顔が広く、歌の方、ピアノの方など普段のギターコンサートでは見かけないような方々も大勢お見えになっていました。
酒井さんは2本のギターを手にステージに登場されました。1本は長年愛用されているホセ・ルビオ、もう1本は昨年完成した加納木魂さんの630mmの傑作です。
先ずはルビオでタレガ前奏曲2番と5番を演奏されたのですが、第1音を聴いて驚きました。なんと大きな音で会場全体に響き渡ることか!以前にも書いたことがあるのですが、楽器と腕(銘器と名手)が揃うとこれ程違うものなんだと改めて感じました。そして、当夜の一番の冒険と酒井さん本人が言われた「バッハのトッカータとフーガイ短調BWV565」もルビオで素晴らしい音で聴かせてくれました。これは原曲はニ短調を酒井さんがギター用にイ短調に編曲したもので、見事なギター曲として聴かせてくれました。
そして、池辺晋一郎作曲「ギターは耐え、そして希望し続ける」を加納ギターに持ち替えて演奏。第1音が出たときに驚きました。マイクが入っているのかと思うほどの音量で聞こえてきたんです。ルビオに引けを取るどころか、それ以上に鳴っているんです。しかも、酒井さんは言わなかったのですが、弦長が630mmなんですよ。以前から、「上手に作ってあれば、630mmでも標準サイズに比べて鳴らないと言うことはありませんよ。」と言ってきましたが、昨夜でそれは正真正銘、証明できた思いです。確かにルビオは長年弾き込んで来た音色、絞まった音、密度の高い音がしています。加納ギターは昨年出来たばかりの楽器です。それでこれだけのホールで通る音、ホール全体に響き渡る音、しかも630mmで、と本当に驚きました。ショートスケール推進委員の私としても新たな認識と興奮を覚えました。私自身も現在加納さんに630mmを注文してあり、益々完成が楽しみになってきました。
第1部最後はタレガの「ヴェニスの謝肉祭による変奏曲、序奏、主題と9つの変奏」。また第2部のトップに「アルハンブラ宮殿の想い出」、メンデルスゾーンのヴェニスの舟歌、カンツォネッタと、タレガの編曲が続きます。これはタレガの没後100年に因んでのこと。
最後の2曲は、クチェラの「日記」~チェ・ゲバラ参加~とイルマルの「バーデンジャズ組曲」とチェコの作曲者二人の作品を取り上げました。
クチェラを再び新しい加納ギターで演奏されました。酒井さんは若い頃から同年代の作曲家集団の作品発表演奏会などを含め、昔から現代曲への取り組みをされてきた人ですから、現代作品を演奏させたらこの当たりでは彼の右に出る人は居ないでしょう。奇を衒った音の遊びではなく、しっかり歌わせて聴かせてくれました。最後のバーデンジャズ組曲はよく弾かれる曲ですが、きれいに、くどくなく歌い、新鮮さを感じさせる好演でした。
また、酒井さんのトークがいいですね。豊富な知識をバックグランドに、これまたくどくなく、楽しいお話と演奏で本当にいい演奏会でした。
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