2009年10月23日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> 良心的なオリジナルCD集
 最近、「こんなCDを出してくれることもあるんだなぁ」と思えるようなCDが手に入ってなんだか得をした気分になった。ジョン・ウィリアムスのCDなんだけれども、40年以上前ジョンがレコードを出していたレーベルがCBSコロンビアからCBSソニーに変わったのち発売された録音の中から、初期の5枚を選んでセットにしたものだ。しかもお値段がなんと通常のCD1枚分より安いというから、なんともお得感一杯!
その5枚の中にはRCAビクターから発売になったブリームとの二重奏の録音も含まれているのがよく理解できないが、とにかく5枚のCD全てのジャッケットが裏・表とも発売当時そのまま。(従って裏の解説文などは文字が小さくて虫メガネでもないことには読むこともできない。もっとも全部英文なのであまり読むつもりもないが。また二重奏のレコードのジャケットは国内盤とは違っているが、海外で発売されたものはこれなんだろう)しかもその気になれば2枚か3枚のCDに詰め込むこともできたはずなのに、全て1枚のCDが1枚のLPに対応しているため、どれもジャケットが発売当時のまま再現されているというわけ。
LP5枚分がCD5枚とは少しもったいないような気もするが、しかしレコードというのはその演奏家の歴史であるはずだから、やはり再発売のときも初出のときのジャケットをそのまま再現するのが正しいやり方だと思う。
一般的には再発売となると、おおよそジャケットも安直な風景写真なんぞになって、どこかの占い師風に「こんなん出ましたんやけど」と、少し控えめにレコード店に並ぶのが普通だろう。しかしそれなどはまだましな方で、売れ筋と思われる曲目だけ集め直してくるのが普通になっているのはなんとしても許せない。そもそも歌謡曲じゃあるめぇし、売れた曲だけ集めてきてどうするだぁ。

以前セゴヴィアの英国デッカへの録音を集めた全集がCDになって発売されたことがあったが、収録された曲を作曲家別にまとめてしまったため、演奏年代がむちゃくちゃになってしまっていた。これなんぞは大きなお世話というかまったく腹立たしい限りで、収録された内容とそのジャケットが合わないだけでなく、使われずに捨てられたジャケットも出てきてしまった。(そもそもおいちゃん達の年代はセゴヴィアのLPのジャケット写真やイラストにはなんともいえない愛着というか郷愁を感じておるのよ。それを無視してあんなCDにしてしまうとは「許せんぞぉ!」と怒りつつ次へ話を続ける)しかも演奏年代を無視しているので、当然モノラル録音とステレオ録音が混在しており聴き難いこと夥しいだけでなく、偉大な芸術のレコード(記録)としての価値を半減させてしまった。

そこで今回手に入れたジョン・ウィリアムスの5枚組のCDは、とにかく何も手を加えず当時のまま。製作する方もいとも安直にできたはずだ。しかしその方が我々にとってはありがたい。
まず1枚目はCBSソニーになって初めに発売された「ある貴神のための幻想曲」とドッヂソンの「ギター協奏曲」。これはのちに同じジョンの演奏で第2番が出たので、このときに出た作品がギター協奏曲第1番ということになる。これは私が初めて聴いた時はあまりの斬新さに正直「かっこいい!」と思ったものだったが、当時何とか言う解説者(名前は分かっているが)の批評にはたしか「毒にも薬にもならない、どうでもいい曲」というような表現がされていて、随分憤慨したことを覚えている。「ある貴神・・・」の方も当然スペイン色は薄いがごまかしの無いしっかりとした構成感を具えた立派な演奏で、今でも私の一押しの演奏だ。バックはチャールス・グローブス指揮、イギリス室内管弦楽団で、次に出たテデスコの協奏曲の覇気の無い指揮振りに比べれば、これらの曲はこの指揮者の気性にも合っているのか、はるかに良い演奏をしている。

次はジョン自らの編曲で有名になったグラナドスの「詩的ワルツ集」の入った独奏集。冒頭のアストゥリアスなどはものすごい迫力で圧倒されるような名演だ。今回CDになって音がより明瞭になったためか、激しいラスゲアードの部分でジョンにしては珍しく他の弦を引っ掛けてしまったミスというか雑音もしっかり聴き取れる。しかしこのレコードに見られるジョンの演奏は、若さにまかせて溌剌とはしているが、出っ放しの水道のようにするどい音の連続で、今聴くと正直次第に疲れてくる。もう少し力を抜く部分もあってくれたらと思ったことはたしか。

次の1枚はバレンボイム指揮でアランフェスとヴィラ=ローボスの協奏曲の入った一枚だが、私は正直言ってこの演奏はあまり好きではない。バレンボイムという人の演奏がもともとのピアノの演奏からしてあまり好きではなかったので、多少偏見があることも否めない。今回改めてもう一度ゆっくり聴いてみたいと思っている。(聴きなおしてみたら案外良い演奏なのかもしれないという予感もする)

そしてもう1枚は以前このブログでも取り上げたことのあるパールマンのヴァイオリンとの二重奏でジュリアーニとパガニーニ。これは以前も書いた通り、全曲を通じてしまりが無く、面白くもなんとも無い。しかしこれもジョン・ウィリアムスという偉大なギタリストの記録の内のひとつ。大作曲家といえども生涯を通じて名曲ばかりとは限らないのと同じで、ジョン、パールマンといえども「やらなきゃよかった」というのもあるようだ。

そして最後はブリームとの二重奏で最初に出た録音。ソルの作品34「慰安」も入ったものだが、お互いに遠慮があるのか、あるいはぶっつけ本番に近いのか、ギターの二重奏としてレコードで聴くにはなんとも物足らなくて、フラストレーションが溜まりそうだ。やはり二人はソリストですなあ。わざわざレコードまで出さなきゃえがったのにねぇ。

なんだか紹介しておいてあまりいいことは言ってないようにも見えるが、私としては若い頃から大好きなジョン・ウィリアムスのレコードが「あばたもえくぼ」、当時のジャケットのままCDに焼き直して出してもらえるということだけでも大いに価値のあることなんですなぁ。
内生蔵幹(うちうぞうみき)

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