内生蔵さんと言う名前が私のブログにも時々登場しますが、彼は富士通テンのスピーカーの普及に尽力されていて、大阪在住ですがよく名古屋まで来てはギタリストへのPAシステムのサポートをされています。とても評判がよくミューズでもこの富士通テンのスピーカーを使ったPAシステムを販売させていただいています。そこで内生蔵さんにこのPAシステムに絡んだ記事をブログに投稿してくれないかとお願いしたところ快く引き受けていただきましたので今夜から紹介していきます。
このタイトルは内生蔵さんによって付けられたのですが、漫画家「東海林さだおさん」の週刊誌に連載しているエッセイの題名が「あれも食いたい、これも食いたい」というもので、その題名が面白いのでそれにあやかって「あれも聴きたい、これも聴きたい」としたいと思ったそうです。とても面白い文調で書かれていますので是非お楽しみください。以下、彼の投稿文です。
ミューズ亭主人山下さんから「ブログに何かコーナーを」との要望がありましたので、「2006年日本経済の展望」か何かをと思いましたが、最初の一字から書くことが思い浮かびません。そこで今販売をお願いしている「クラシックギターのためのPAシステム」に使用している、富士通テン㈱製のオーディオスピーカー「イクリプスシリーズ」を中心に、オーディオのことなど順を追ってお話してみたいと思います。特にクラシックを含むアコースティックギターファンの方々が、お持ちのCDやレコードが少しでも良い音で聴ける一助になればと思っています。
何故ならほとんどのCDは、思ったよりもはるかに良い音で録音されており、上手に再生することができれば、ぎょっとするほどのリアル感と共に、演奏の内容、演奏者の表情や表現までもがまったく違って聴くことができるため、あまり興味を引かなかったCDが実は何といい演奏であるかと気づかされ、何か得をしたような気がすることがあるからです。また今後このシステムをコンサートのPAとして使っていただいたリポートもやっていければと考えています。
まずオーディオのスピーカーをえらく乱暴に大きく分けると、
① エンクロージャー(箱)をなるべく上手く鳴らそうとするタイプと
② 反対にまったく鳴らさないことを目標としたタイプ
との2種類に分けられます。世に出回っているオーディオスピーカーのほとんどが①に属するもので、ある意味では理にかなっています。何故なら、スピーカーはユニットが音を出す時に当然前後に振動するのですが、その振動がユニットを固定してある箱、いわゆるエンクロージャーに伝わり一緒に振動してしまうため箱が鳴ってしまいます。
この箱の振動を止めるのはなかなか難しく、今までに成功している例を私はあまり知りません。では何故箱が鳴ると困るのかというと、箱が振動したために発せられる音は、そのCDが録音された時には入っていない音だからなのです。CDには演奏家やディレクターなどの、演奏したスタジオなりホールなりの響も含めて意図した音が入っています。スピーカーにはそれだけを出して欲しいのですが、残念ながら先ほど申し上げたとおり、どんなことをしても箱が鳴ってしまいます。そこで今までいろいろなメーカーがなんとか箱の振動を止められないものかと悪戦苦闘、七転八倒、孤軍奮闘、四面楚歌、焼肉定食といった四文字熟語の連続をしたのですがどうしても箱は鳴ってしまいます。そこでどうせ止められない振動ならと開き直り、逆に上手く鳴らしてしまえ、というのが今ほとんどのスピーカーの属する①に相当する製品なのです。
勿論箱を鳴らすのはそれだけではありません。何せ小さなスピーカーユニットで大オーケストラの演奏も鳴らすわけですから、考えてみればムチャクチャなのですが、スピーカーユニットが出した音を、箱の中で上手く共鳴・増強してやって、時にはちょっと「味の素」なんかも振り掛けたりして、広がり感やスケール感を出してやろうとしているのです。むしろ現在のようなステレオというものが存在しなかったころは、一本のスピーカーで(いわゆるモノラル)雄大なオーケストラの響きを表現しようとすると、やはりエンクロージャーを共鳴箱として使用した方が都合がよかったのですね。
と言ったところで、今日はこれくらいにしておきましょう。
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