アンヘル・ロメロがやって来た その3 - ミューズの日記
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夜の更けるのも忘れて、口オケでコンチェルトの練習をやり続けるアンヘル・ロメロにつき合わされた佳織さんほか我々も、その後やっとの思いで夕食にありつくことになり、そこそこのお年をめしたおいちゃんとしては、不健康極まりない夕食を摂る事になった。そして翌日、とうとう本番が来ちまった。

会場は大阪中之島にあるフェスティバルホール。おいちゃんも以前ブリームなんかの演奏を聴きに来たことはあるけども、ステージに上がったのは初めて。なんとまあでっけえステージだこと。訊いてみたらステージの横幅がなんと30メートルもあるんだと。下手から上手を見ると遥か向こうじゃねえか。マイクやスピーカーのケーブルがものすごく必要になってくる。ここにオーケストらの人たちも入るわけだから、そこをうまく迂回しなけりゃあいけない。さらに長いケーブルが必要になるってもんだ。今回は機材セッティングの助っ人にとても心強い味方が登場してくれました。イクリプススピーカーを開発した富士通テン㈱の音響技術部の「小脇宏さん」と、我らがミューズ音楽館の浣腸、いや失礼、館長「山下高博さん」そして私のかみさんと小料理屋の女将。「え?小料理屋の女将?」とお思いでしょう?それがまたほれ、とっても若くて美人で、かっこよくて、しかも昔からの村治佳織さんとおいちゃんの大・大・大ファンときたもんだ。(おいちゃんが女将のファンなんだけどね)その4人で機材のセッティングを始めて、それから佳織さんの楽器を借りておいちゃんが佳織さんとアンヘルの代わりに音出しをし、それに対し山下さんと佳織さんのお父さんである村治昇先生とが音チェックをします。なんと我らがミューズ音楽館の館長、山下高博さんは、村治先生ともども、超ビッグな大阪国際フェスティバルの音響総監督を勤められたのですぞ。「皆の者、頭が高―い!」
 
オケ(大阪センチュリー交響楽団)の皆さんが入場してきます。皆さん昨日からイクリプスの卵のスピーカーには興味津々。また出てくる自然なギターの音にも驚いている様子。ゲネプロが始まりました。まず佳織さんのソロで武満徹作曲の「夢の縁へ」からです。昨日気が付いたんだけども、このときのオケの人数の多いこと多いこと。数えたわけではないけれどもおおよそ60人や70人はいそうな感じ。まるっきりベートーベンの交響曲でも始まりそうな雰囲気だ。これだけの大人数のオケをバックに、我らが村治佳織!一歩も譲らず堂々たるもんだ。「かっこいい!」の声もどっかから聞えてきそうだ。しかも先にも言ったように、彼女は全て暗譜で演奏します。あの難しい武満徹の曲を、みなさん暗譜でっせ。ほんとにもお、こちらとしちゃあ心底頭が下がりっぱなし。

前日彼女に尋ねてみたら、楽譜は印刷した紙のページ状ではなく五線が横にずっと繋がっているような感覚で頭に浮かんでくるそうだ。そういえば亡くなったイエペスもそんなことを言っておった。頭の中で楽譜のページをめくっているようではだめだ。五線の音符が横一列に左から右へ流れていくように頭に浮かんでくるようにならなければ・・・と。さすがだねえ。やっぱり我らが佳織さんはそんなことを簡単にやっておった。「すごい!」おめえらも少しは見習わなあかんぜ。

この武満徹の曲はCDではジョン・ウィリアムスがエサペッカ・サロネンとやったものと、ブリームが祭文、いやサイモン・ラトルとやったものと2種類出ていて、ここ最近は自宅で何度も何度も繰り返し聴いていたので、随分馴染んできていたが、それでもおめえ、あの曲を暗譜で弾いちまうたあなんちゅう度胸と気風の良さ!ちょっと若いけど、これから佳織姉御と呼ばせておくんなさい。(肩から背中にかけて緋牡丹の刺青が入っていたりして)
 
さあ、いよいよアンヘルの登場。アランフェスだ。これを聴きたかったのよん。まあレコードとおんなじよ。最初から爽快に弾きまくりますなあ。そのかっこええこと、かっこええこと。そしてその音のバカ(失礼)でかいことでかいこと。ありゃあマイクなんかいらんがな。2楽章も歌いまくるし終楽章も快速快速、通勤快速。さっそうと弾き飛ばしまする。本人も楽しくて仕方が無い風で乗りまくり。
 
そして、ついに我らが佳織姉御とアンヘルの二人で弾くロドリーゴの「マドリガル協奏曲」の始まりはじまりい。音楽としちゃあアランフェスとは比ぶべきもないけども、冒頭からかっこよく始まります。「やっとこやっとこくりだしたー」のおもちゃのマーチのテンポ。まあそれが二人が生で、しかも目の前で弾いてくれると、そのかっこいいことかっこいいこと。からだがうきうきしてまいりますなあ。
 つつがなくゲネプロが終わってしばし後、本番が始まりました。裏方のおいちゃん達はドキドキ・ハラハラ。「何かにぶちあたってマイクがあさって向いてねえべが」「ひょっとしたらアンプのスイッチ入れ忘れていないかしらん」「オケの誰かが途中でスピーカーケーブルを踏んづけて切れちゃいねえべが」とか、しょーもないことばっかり考えて、楽屋裏をあっちへうろうろ、こっちへうろうろ。動物園の白熊かウォンバットみたいにほっつき歩いてまわっておりました。そしてついに大阪国際フェスティバルの最終日、アンヘルロメロ&村治佳織、指揮山下一史によるコンサートはあちこちから上がる大きなおおきな歓声に包まれて終了しました。やっぱり我らが村治佳織は最後まで前に置いた譜面を1ページもめくることなく、むしろ隣のアンヘルの出す音やちょっとした動きを見逃すまいと堂々と余裕をもって弾き通しておりました。「偉い!」そして「えがった、えがった」

ところで残念ながらいろんなことで振り回されておって、当日の写真が一枚も撮れていないことに気が付いた。申し訳ねえ。

その4に続く・・・
内生蔵 幹(うちうぞう みき)


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