アンヘル・ロメロがやってきた その2 - ミューズの日記
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 その日、村治佳織さんや佳織さん所属の事務所の社長土屋さん、そして私達みーんなのお腹の虫が合唱を始めている時、当のアンヘルさんはそんなことにはおかまいなしにマエストロ(指揮者 山下一史さん)の指揮に合わせての大音響の口オケが延々と続き、夜も深々と老けて、いや更けていきましたが、とにかくアンヘルさんは上機嫌です。アランフェスの時なんぞは、ひょっとしたらこの人、クライマックスのところへきたら、フラメンコよろしく踊り出しちまうんではないかと、少なからずドキドキ・ワクワクしておりました。

本番のマイクセッティングの都合があるので、デュオのコンチェルトの時、佳織さんにお願いしてアンヘルさんに「コンサートの本番は楽譜を見ながらお弾きどすか?」と訊ねてもらいました。(もちろん佳織さんは京都弁ではあらしまへんが)そうしたらアンヘルさんの答えは「楽譜?オレがマドリガルを弾くのに楽譜なんか見て弾くわけねーだろが!オレを誰だと思ってるんでい!天下のアンヘル・ロメロだぜい!第一この曲はオレと兄貴が初演したんだ。音符のひとつひとつ、楽譜の隅から隅まで、ぜーんぶオレ様の頭に刻み込まれちゃってるのさ!」だと。(本当のところは大きな声で「NO!」と言っただけだけどね。でもその「NO!」には今言ったようなニュアンスが充分込められていたように私には感じられた)

 では何故佳織さんにそんなことを訊いてもらったのかというと、私が担当するマイクのセッティングの時、楽譜のスタンドがあるとセットするマイクの位置に随分制約を受けてしまうので、そこのところを懸念して訊いてもらったというわけ。そもそも最初から今回は二人とも楽譜を見ないで弾くので、全てマイク位置最優先でやってくださいとのことだったし、しかもアンヘルさんの答えは今言ったように自信をもって「NO!」だったので、ひとまず安心したのですが・・・・。
ところがところが、一筋縄ではいかないのが彼のアンヘル・ロメロさん。翌朝、コンサートの当日、「あのね、あのね、アンヘルがね、急にね、楽譜をね、見てね、弾くってね、言ってね、聞かないらしいんです」との電話が入った。「ええ?!なんちゅうこっちゃ。昨日考えていたマイクセッティングを考え直さんとあかんがな」第一アンヘルがどこに譜面台を置きたいっていうか分かったもんじゃない。変に「おらぁ譜面台をこっちに置くから、おめぇマイクはこっちへ置いてケロ」とかなんとか言われた日にゃあ、奏者の斜め後に置くはずのPA用に使用するイクリプススピーカーとマイクが正面から向き合っちまって、すぐにハウリングを起しかねない。さあ大変!「あのやろう、昨日偉そうなこと言いやがって、結局のところは楽譜見るんじゃねえか。なんてこった」と、こちらとしてもぶつぶつ文句を言いながら会場である大阪フェスティバルホールに向かった。
 
 それにしても前にも言ったように、佳織さんに「アンヘル、あんさん本番では譜面を見ながらお弾きになるおつもりどすか?」と訊ねてもらったんだけども、佳織さんはなんと、あの長大なコンチェルトの第2ギターパートを全てアンプで、いや暗譜でお弾きになるんどすよ。(なんか変だな)というのも、佳織さんはちょっと前にアンヘルの自宅で合わせの練習をした時に、やっぱりアンヘルは暗譜で弾くというので、「こりゃあなんとか自分も暗譜しないと」と思って、超短時間で覚えちまったらしく、ご本人は「最初はこんなところほんまに覚わるんどっしゃろか思いましたんどすが、やってみたらなんとかなるもんどすなあ」と言っておりました。(佳織さんが京都弁でしゃべるわけはないんどすが)確かにオケとの音合わせの時も、全て楽譜を見ないでオケと合わせておりましたなあ。言っておきますが、佳織さんの弾いているパートは2nd.でっせ。だからその場に居合わせた人達も、その曲を知らない人達にとってはいったいどんな旋律の曲なのか、ちっともわかんない曲を聞かされたことになるんどすなあ。なにせ、主旋律を弾くはずの金髪怪獣「アンヘル・ロメロ」なしで音合わせをやったんどすから。
 
 そう考えたら佳織さんは偉い人だねえ。10楽章もある長大なコンチェルトの、しかも第2パートを顔色ひとつ変えずに、終始暗譜で弾いちまうんだから。アンヘル・ロメロはロスアンジェルスの金髪怪獣だったけども、村治佳織も日本の超・可愛いモンスターどしたなあ。本番でも佳織さんは、アンヘルさんに合わせて一応譜面台を立てておりましたが、置いた楽譜を見ることも無く、そしてついに1ページもめくることもあらしまへんどした。(やっぱりなんか変だなあ)

その3に続く・・・
内生蔵 幹(うちうぞう みき)


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