初めてのロッシニアーヌ - ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> 初めてのロッシニアーヌ

 このジャケット写真のレコード、発売は今から33・4年前になるだろうか。ブリームさんもギター抱えてこっち見なくても、ギターを弾いているところの写真の方がいいのになぁと思う間もなく、正直言って私はびっくら腰抜かしちまった。
たしかこの頃は、しばらくブリームさんはレコードを出してなくて、久しぶりに新譜が出たというので喜んで購入したんだけれども、ジャケットをよーく見たら、えらく頭が禿げ上がっちまっているではないか。思わず「こらぁ、おめぇ、どうしちまっただぁ!?」と、田んぼの肥溜めに落ちてべとべとになって帰ってきたわが子を見た時の母親のような心境になって叫んでしまった。(おっと、お食事中の方には失礼。でもこれは私の子供の頃の実体験。しかも懲りずに2回も。あの時おっかぁに死ぬほど笑われた。)たしかにブリームさんのそれ以前のいろいろな写真を見るにつけ「なんだかあぶねえなぁ」とは思っていたが、ここまでおいたわしいことになってしまっていたとは。

内容を見ると、ジュリアーニのロッシニアーヌなどという、それまで一度も聞いたことのない曲2曲にA面全部。裏のB面にはソルの大曲、第2ソナタ1曲。
ブリームさんもこんな古典の曲弾くんかぁ。でもしょーもない曲だったりしたら・・・とも思ったけども、家に帰ってそのレコードをかけてみるとぶったまげた。どえりゃぁかっこええでねえか!そしてその演奏がまた上手いの上手くないの。(どっちなの?)勿論とびっきりの超名演。しかも録音が当時としちゃぁこれまた飛びっ切りのいい録音で、ブリームさんの弾くギターの細かいニュアンスがレベル一杯に入っていて、下手なオーディオ装置では針飛びを起すか、さもなくば音割れを起こしちまうんではないか?ちゅうくらいギリギリの素晴しいものだった。
ブリームさんも、旬の鰹か秋刀魚みたいなもんで、この頃が一番脂が乗っていい演奏をしていたんじゃないかなぁ。それにしても、脂が乗っていると魚でもなんでも、なんであんなに旨いんだろ?焼きたての熱々に醤油をジュッとかけたらたまんないほど旨いんだけど、コレステロールは高いし脂肪も高い。おまけに店に並び始めたころは値段も高い上、塩分もカロリーも高いので、血圧が上がるだけでなく血糖値も上がる!
どうして健康に悪いものに限ってあんなに旨いのか。たまにはたまらんほど旨いのに健康にはもってこい!なんていう食いもンがあってもよさそうなものではないか。
人間は肉を食うより魚、魚よりも大豆のような植物性たんぱく質。それからひじき、わかめなどの海藻類、白菜やキャベツ、レタス、ほうれん草など野菜を沢山などということをよく耳にするが、私は常々食物というものは、生物の「種」として見た時、人間から遠く離れれば離れるほど、人間の体にとって良いのかも知れんなぁと思っておる。つまりその食べ物が人間という「種」に近ければ近いほど共食いに近くなって、どうも体が拒否しとるんではないか、なーんていう学説をいつかどこかの学会に発表しようと考えておるんじゃが、どうじゃろ?たとえば、古代の天皇家はすべて近親結婚で成り立っていたので、そのそのまま続けると天皇家は滅びてしまうはずだったから、あながち私のこの説も見当違いではないのではないかと思ったり思わなかったり・・・・。しかしその説を証明しようとすると、私に残された年月ではとても足らないので、学会発表というのは今の内に断念しておいた方が良さそうだ。

余計なことを言っちまったが話を戻して、ジャケットに写っておる楽器はハウザー。しかし、このレコードでハウザーを使用しているかどうかは不明。それにしても艶と伸びのあるとてもいい音がしている。
それとブリームさんの良いところは、とにかくその圧倒的なダイナミックレンジ。ギターの性能をフルに生かして、蚊の鳴くようなかすかな音から、割れんばかりの大音響まで、とにかく楽器の出せる音量の幅を最大限駆使する技量には舌を巻かされる。そして極端と思えるほどの音色の変化。普通いっぱしのギタリストでもこうはいかない。むしろ、やろうとしてもこっぱずかしくてできないんじゃないかな?それくらいブリームさんの表現はダイナミック且つ大胆。正に「繊細なること愛人の如く、大胆なること女房の如し」である。(ん?ちょっと違ったかな?)

 それにしても、今にして思うと、このあたりがどうもクラシックギターにおける古典とロマン派音楽の復活の兆しだったんではないかという気がする。それまでは、ギターではほとんどと言っていいくらい、古典派やロマン派の音楽がコンサートやレコードのプログラムに上ることはなかった。(私よりも先輩の方達の時代は、そういったギター曲がもっと盛んに演奏されていたが)
 確かにモーツァルトやベートーベン、ブラームスやシューベルトといった古典の巨匠達の音楽と比較しては、まったくもって足元にも及ばないのは分ってはいるが、そこはほれ、「分」ちゅうもんがあるがね。料理ったって会席料理ばっかりではもの足りない。毎日フランス料理のフルコースや満貫全席ばっかりでは飽きてしまう。(一遍そんな目に会ってみたいとは思うけども)たまにはお茶漬けでさっぱりとか、たこ焼きやお好み焼きを歩きながら気楽に、てこともいいもんでげすよ。でも、お茶漬けやお好み焼きみたいなものばっかりの人からは、「どうしてくれるんじゃ」という声が聞こえてきそうだが、そんな声は話の都合上今回無視。シッシッ。

その当時は古典やロマンなんていえば、ギター教室の練習用にチョロッと出てくるくらいのもんで、ほんとに寂しいもんだった。
そこでこのブリームさんのロッシニアーヌの演奏の果たした影響は大きかったでげすなぁ。その後どんどん出てきました。アグアドなんかも「序奏とロンド」なんちゅう結構な大曲があるんですが、そんな曲もあちこちで聴かれるようになってきましたでげすよ。もちろんブリームさんも弾いとります。ジュリアーニの大序曲なんという、ちょっとこけおどしのきらいのある、格好付け過ぎの曲なんかもよく弾かれるようになったねえ。ソルの「グランソロ」なんかも大真面目に弾く人が出てきた。最近じゃあメルツやレニアーニちゅうような正にロマン派の音楽もどえりゃぁ聴けるようになってきて、まことにもってありがてえこった。
とにかくこのブリームさんのレコードのおかげで、一遍にギターのレパートリーが広がったような気がすることはたしか。
いずれにしても20世紀の前半はセゴヴィアが筆頭だったけども、後半はどうもブリームさんが禿げ頭ひとつ抜けとったんではねぇべが?
おらたちはみんなブリームさんに禿げ頭、いや違った、足向けて寝れませんなぁ。

内生蔵 幹(うちうぞう みき)

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