2008年10月3日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> JGAギター音楽祭 in 徳島

 9月の28日(日)四国は徳島において、JGAギター音楽祭が開催されましたが、私は今回の主催となる徳島ギター協会の川竹会長からのお声掛けにより、MSデジタルPAシステムを使った音響(PA)のお手伝いに行ってきました。
この音楽祭は現代ギター誌にも紹介が出ていたので皆さんご存知のことと思いますが、2007年度の各地のギターコンクールにおける優勝者何人かに登場いただき、その腕前を披露してもらおうというもの。改めてプログラムをご紹介しておきますと、
1.いちむじん(ゲスト)
  ① ジョンゴ/P.ペリナティ
  ② Rui/長岡 克己
  ③ ロンドンデリーの歌/アイルランド民謡
  ④ 夜更来(よさこい)変奏曲/リ・サフォン
  ⑤ 紫陽花(あじさい)/リ・サフォン
2.南口 光恵(第38回日本ギターコンクール第1位)
  ① 無伴奏チェロ組曲第1番 プレリュード(バスギターによる)/バッハ
  ② シンプリシタス/イルマル
3.浅田 侑子(第32回GLC学生ギターコンクール第1位、GLC賞)
  ① パラグァイ舞曲/バリオス
  ② フリア・フロリダ/バリオス
  ③ 森に夢見る/バリオス
4.徳島少年少女合唱団(ゲスト)
  ① 喜びよ、美しい神々の花よ/ベートーベン②アヴェ・マリア/シューベルト③カンターテ・ドミノ/バウムガートナー④グロリア/ツィーグラー⑤野ばら/ウェルナー⑥美しい季節、口笛吹いて/ドイツ民謡⑦草競馬、夢見る人、おおスザンナ/フォスター
5.斎藤 泰士(第53回九州ギターコンクール第1位)
  ① パレード/コシュキン
  ② ミシオネラ/ブスタマンテ~モレル
  ③ クレンピルの主題による変奏曲
6.井上 仁一朗(第15回名古屋ギターコンクール第1位)
  ① 椿姫幻想曲/アルカス
  ② 祈祷と踊り/ロドリーゴ
7.山田 大輔(第38回クラシカルギターコンクール第1位、第25回スペインギターコンクール第1位)
  ① ソナタOp.15-2/ソル
  ② テッカメン/D.ヤマダ
  ③ 海を越えて/すぎやまこういち
  ④ 男はつらいよ/山本 直純
8.徳永 真一郎(ゲスト)
  ① ロッシニアーナ第3番/ジュリアーニ
  ② 舞踏礼賛/ブローウェル
  ③ 「おいらはキャベツ作りの子」の主題による変奏曲/ジュリアーニ

以上ですが、結果はというと、出場者の皆さん、当初私の予想していた以上の腕前を発揮し、近年めったに味わうことのできない大きな感銘を味わうことができました。たしかに皆さん若さゆえの未完な部分が拭いきれておらず、少なからずの緊張もあるのでしょう。最後まで弾き通すのが精一杯といったところは見受けられましたが、技術の伴わない小手先の音楽(?)とは次元の違うはるかに音楽に対して純粋な、そしてひたむきな気持ちがこちらの胸にストレートに響いてきます。

 裏方をやっていたので、全ての曲目を集中して聴くことはできませんでしたが、それでもいくつか心に残る音楽を見つけることができました。南口さんのバスギターはえもいわれぬ低音の響が魅力的でした。浅田さんのオール・バリオスも意欲的で、パラグァイ舞曲などは見事というほかありません。「森に夢見る」のトレモロも絶品。序奏部分の表現にもう少し音楽的な読みがあれば、もうその演奏は既に世界的なレベルといっても過言ではないでしょう。ただこの女性ギタリストお二人とも、もう少し音量がほしいですね。たしかにPAシステムで増幅できるといえばそれまでですが、今回のように何人かのギタリストが順に演奏していくとなると、マイクセッティングは中間的なものにならざるをえません。そうなると男性ギタリストの力強い音量と比較されることになって、結果どうしても不利になってしまいます。千人、二千人のホールでマイク無しで演奏するというのもギターの場合はムチャなことではあり、今後は良質な音響システムであれば徐々にその使用は許されることと思いますが、それでも演奏者にはある程度の音量は求められるのではないでしょうか。今後さらなる演奏法の研究に励んでほしいところ。

 男性陣では山田さんの演奏がとても心に残りました。特に「男はつらいよ」のテーマなどは自らの編曲だそうですが、ギター一本で映画の場面を彷彿とさせるに充分なほどの名編曲、名演奏でした。この曲などぜひ「ミューズ出版」で楽譜にしてもらったら大そう人気が出るのではないでしょうか。とにかく舞台ソデで聴いていてもぐっとくるものがありました。
 ゲストの「いちむじん」は私としても初めて生を聴かせてもらいましたが、すでにプロとしての実績もあり堂々としたデュオで、ここまでの完成度に達したギター二重奏はかつて日本では見ることができなかったのではないでしょうか。聞くところによるとコンサートをやっても「本来のクラシックギター関係者にまったく来てもらえないのが悩み」とのことでしたが、そんな言葉が信じられないほどの素晴しいステージでした。とにかく「聴かせどころ」を心得たショーマンシップ溢れるプロの演奏でした。

 最後に登場したフランス留学中の徳永君は、さすが本場留学中といってよい実力を見せ付けてくれました。以前から備わっていた天性の技巧にさらに磨きがかかり、ほころびの無い胸のすくような颯爽としたジュリアーニが大そう印象的。今後どこまで飛躍していくことができるか本当に楽しみです。
 前後の休憩に挟まれた徳島少年少女合唱団の演奏は、音楽本来の姿を見せられたような気高くも清々しい歌声で、まったく予期せぬ感動を味あわせていただきました。
 音楽祭終了後の打ち上げ会にも出席させていただきましたが、JGA会長でもある荒井貿易の荒井会長をはじめ、日本スペインギター協会会長の大沢一仁先生、ロッコーマン㈱の東京営業所の城戸将太郎氏の各氏を囲み、総勢40名が大いに盛り上りました。
 今後これらの若い人たちが、日本そして世界のギター界にどれほどの貢献をすることになるのか、考えただけでもゾクゾク、ワクワクします。温かく見守っていますので、いつかまたその素晴しい演奏を聴かせてください。また大好きな徳島ギター協会の皆さん、本当にお疲れ様でした。そして本当にお世話になりました。
内生蔵 幹(うちうぞう みき)


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