11月27日の「私のバックグラウンド その3」から少し間が空いてしまいましたが、今日はアルゼンチン駐在から帰国してからミューズ設立までの事について書いてみます。
帰国して先ず着任したのはアジア・パシフィック楽器営業本部と言う北米・欧州・日本を除く全世界の楽器営業を担当する部署でした。アルゼンチンもこの部署の管轄でしたので・・・。ここでは鍵盤楽器と管楽器・教育楽器を1年半ほど担当しました。そしてやっとギターを担当している弦打楽器事業部に戻る事になり、ギタードラム営業部長に着任。この弦打楽器事業部とはギター、ヴァイオリン、大正琴の弦楽器とドラム、コンサート打楽器(ティンパニー、スネアドラムやマリンバ)などの商品開発、生産、全世界の営業統括と言う部門です。正に私の一番力を発揮できる部門と言えます。専門分野のギターの知識、全世界相手と言う海外での経験を生かせる所でした。
ギタードラム営業部長と言うのは日本を含む全世界のギターとドラムの営業統括になります。経験の少ない日本の市場も見て回りました。
しかし、2年ほどすると事業部長から「山下さん、設計・開発と生産管理の部門を見てくれないか」と打診がありました。ここは宮仕いの辛いところで、引き受けることにしました。「ギター・ストリング推進部」と言う、名前だけではどんなところか分からない部署です。ここはギター(3種)、ヴァイオリン(サイレントと生ヴァイオリン)、大正琴の弦楽器群の設計・開発と生産管理を行うところです。
設計・開発部門の統括(商品戦略のまとめ、設計、試作品製作)、基礎研究部門との連携、各工場(日本・台湾・インドネシア・中国)の生産管理、製造戦略のまとめ、資材部との連携による材料備蓄計画管理まで幅広い仕事でした。
現行品のサイレントギターは私の在任中に開発されたものです。フラメンコ・スタンダードと言う現行商品の開発時も設計者をスペインに送り、現場フラメンコギタリスト(ビセンテ・アミーゴなど)に試作品の評価をしてもらいました。クラシックギターの試作品の評価にはいろんなギタリストに来てもらいました。鈴木大介さん、エルマンノ・モッテイリエリさん、そしてクラシックギターにピックアップを付けて、コンチェルト演奏時にもオーケストラに負けない音を再現できないかの研究には福田進一さんにもご協力を頂きました。ヴァイオリンに付けるピックアップの研究には葉加瀬太郎さんのご協力も頂きました。ギター工房、ヴァイオリン工房の職人さんの人材確保に他の事業部にも掛け合いに行ったこともありました。イタリアの販社にお願いしてクレモナで勉強している日本人製作家をあたって貰ったこともありました。中国のギター工場、ヴァイオリン工場、ケース工場にも足を運びました。丁度この時期に社内でヴァイオリンを対象に古木化技術(エイジング技術)の研究を木材研究所との連携で行っていました。これをギターに応用できないかも検討しました。エレアコ用の新しいピックアップの研究も他事業部との連携で行いました。細かく書くと限がありませんし、企業秘密に触れることにもなりかねませんのでこの辺にしておきますが、兎に角いろんな、いい勉強をさせて頂きました。
しかし、弦打楽器事業部が管楽器事業部と合併する事になり、私は残念ながらギターの担当から外れてしまいました。そして、社内規定で55歳になると役職定年と言ってライン長から降りる制度がありましたので、55歳を契機に早期退職することにしました。若い頃に抱いていた夢「ギター専門店」を起こすために。そして全財産を投資してこのミューズ音楽館を設立したと言う訳です。ヤマハ時代に刷り込まれた「音楽普及の思想」をギターを核に実践するために。
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