2007年8月11日のブログ記事一覧-ミューズの日記
ミューズ音楽館からの発信情報  ミューズのHP  http://www.muse-ongakukan.com/

 



和声学あれこれ(15)最終回
転調 その6 半音階的転調(IV型)とその他V型

 今迄転調の方法を何種類か示して来ましたが、まだまだ色々な手法があります。
これら全てを説明できる程勉強もしておりませんし、さらに煩雑になり基本的な説
明という主旨から外れますので、詳しく述べるのは差し控えます。データだけ載せ
ておきますので興味のある方は専門書で研究される事をお勧めします。

さて、転調には大きく分けて三種類に分類されます。(1)に先行調・後続調に共通な
和音を利用した方法で、その共通和音は両調の変化音を含まない固有和音で構成さ
れていますので全音階的転調といいます。II型参照。

(2)に転出和音の1音または2音に♯や♭を付けて変化(変質)させ、転入和音と
する手法があります。これを半音階的転調といいます。IV型→図1
これもロマン派以降良く使われています。ギター界で云えばコスト・メルツあたり
です。遠隔調にもスムーズに転調でき、意外性や急激な・心理的な色彩感を演出し
ます。この半音階的な手法に似た方法に準固有和音(モル諸和音—長調における同
主短調からのIVやIIの借用和音)を使った方法もあります。

さらに(3)エンハーモニック(異名同音)転調があります。ヴィラ・ロボスなどの
現代作曲家に多く見受けられます。一番よく使われているのは減七の和音で、運指
から見ても、また減七の性格上使い易い為かよく使われます。一種類の減七が十種
類の調の減七と全く同じ響きですので、→図2

これを利用して転調するわけです。
この三種類以外にもその他のV型としてナポリの和音を使った転調や反復進行(図
3)を使った手法もあります。

以上で転調についての簡単な説明を終わります。実際の例をギター曲から示すとい
いのですが結構な紙面を使ってしまいますので省略します。昔発刊された小舟幸次
郎先生の和声学の本には沢山の事例が出ていますので、持っている方は参考にされ
るといいでしょう。もっと詳しく調べたい方は専門書にあたってください。その時
必ずギターで音を出して確認したり、例を他の調に書き換えてみるのが覚える一番
の近道です。

以上、今回でこの「和声学あれこれ」の投稿を終わります。十五回にわたり和声学
についてのおおまかな解説をしてきました。(和声外音については未解説ですが)
和声学を学ぶ事は編曲や作曲をめざす方は必ず通らなくてはならない道ですが、ギ
ターの演奏をめざす方には絶対的に必要な知識ではないかも知れません。たとえて
云えば車の運転技術を習得して快適なドライブを楽しむのを目的とするなら車のエ
ンジンや構造・諸元や車種についての知識は知らなくてもいいかも知れません。(私もほとんど知りません)せいぜい交通規則ぐらい知っておけばいいのでしょうが、F1のレーサーになろうとするなら、それらは必須となるように、もし将来プロの演奏家をめざすなら和声学・対位法・楽典・音楽史・形式・音響学・ジャンル別の音楽や他楽器の事やその他諸々の知識は欠かせませんし、また、書く(作曲・編曲)・弾く(演奏)・聴く(観賞・批評)の三つの音楽のあり方を楽しむなら常にたゆまぬ知識の習得努力が必要です。
演奏行為は文化系で、このような理論・学問は理数系かも知れません。貴方は偏っ
ていませんか?まあ、バランスよく習得すればいいのでしょう。その為の入門編と
しての解説のつもりでした。これがきっかけで和声学に興味もっていただければ嬉
しいかぎりです。

今までに掲載した日を列記します。さかのぼって参考にしたい方はご利用下さい。
第1回1/19 2回1/24 3回2/1 4回2/6 5回2/20 6回3/3 7回3/29 8回4/6
9回5/10 10回6/21 11回6/27 12回7/5 13回7/11 14回8/1
           
最後にこれから和声学の習得をめざす方の為の文献を一部紹介いたします。

1. インターネットで・・・フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」を検索   
・・楽典入門・http://www.yamaha.co.jp/edu/play/gakufu/1st/index.html   
・・「創作田園地帯」・http://www.denen.org/wasei/contents.xhtml    
・ ・「伝統和声」・http://www5d.biglobe.ne.jp/~sak/dentou/
・ ・音楽用語辞典・http://www.jeugia.co.jp/~aanmusic/dic/
等々。これらは真摯なHPで信頼おけます。他に和声用語で検索すればいろいろ
出ます。ポピュラー系の理論が多いのが羨ましいですね。

2. 本なら:和声 理論と実習 I 〜III 音楽之友社 
    演奏者のためのギター和声学 小舟幸次郎著 全音楽譜出版社(昭和41年第3版で絶版?入手は難しいかな。)
その他 多数あります。いきなり本格的な教科書で勉強するのは難しくて疲れ果て
長続きしないかもしれませんので、まずはインターネットで音楽用語を検索して
覚えるか(これ結構無料で楽しめて役にたちます)、または簡単で全般が見渡せる
本から始めるのが長続きするコツです。
                       
                             服部修司



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )