消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(301) オバマ現象の解剖(46) 一人勝ち(7)

2010-03-28 21:40:24 | 野崎日記(新しい世界秩序)


六 米国の駐中大使指名にみる中国重視


 米国ホワイトハウスは〇九年五月一六日、オバマ大統領が次期駐中国大使にユタ州のジョン・ハンツマン(Jon Huntsman)知事を指名したと発表した。同氏は共和党員である。商務次官補代理(東アジア・太平洋担当)、駐シンガポール大使、通商代表部次席代表などを経て〇四年にユタ州知事現職に初当選し、〇九年で二期目であった。中国語に堪能で中国出身の養女もいる。共和党のホープとして二〇一二年の次期大統領選への出馬も取りざたされていた(『毎日新聞』二〇〇九年五月一七日付)。ハンツマンは、洪博培(Hong Bopei)という中国名を名乗っているほどの中国通である。

 ハンツマンは末日聖徒イエス・キリスト教会(Church of Jesus Christ of Latter-day Saints)(8)の教徒であり、台湾伝道部に所属した。父親が残してくれた家業、ハンツマン・コーポレーション(Huntsman Corporation)を継ぎながら、一九八五年から二年間、レーガン(Ronald Wilson Reagan, 一九一一~二〇〇四年)政権にスタッフ補佐官として参加し、一九八七~八八年、家族とともに台湾で布教活動、一九八九~九〇年に、父ブッシュ(George Herbert Walker Bush)政権の下で、国際通商局通商担当、同じく、九〇~九一年に 、東アジア太平洋担当商務の副次官補 として参加した。一九九二~九三年、父ブッシュ政権下ので駐シンガポール大使。二〇〇五年ユタ州知事。二〇一二年の次期大統領選で、共和党の候補として名前が挙がっているハンツマン氏の起用で、オバマ大統領は、政敵を自分の陣営に引き入れることに成功した(http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2009&d=0823&f=politics_0823_006.shtml)。

 駐韓国大使、キャサリン・スティーブンス(Kathleen Stephens)も、共和党派の人である。彼女は、子ブッシュ政権下の大使であるが、オバマ政権下でも留任した。スティーブンスは、一九七五~七七年まで、忠清南道扶余(Chungcheongdo-Buyeo)で平和奉仕団員として勤め、韓国語を流暢に話す。シム・ウンギョン(Shim Eungyeong)という韓国名も名乗っている。一九七八年に国務省に入った後、駐韓米大使館や釜山総領事館などに勤務した経験がある。〇五年六~七月にはクリストファー・ヒル(Christopher Hill)国務次官補の下で首席副次官補を務め、北朝鮮の核問題などに取り組んだ(http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=94812&servcode=A00&sectcode=A20; http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=105657&servcode=200&sectcode=200)。

 ブッシュ大統領による指名は〇八年一月一〇日であったのに、赴任は〇八年九月二三日であった。赴任が大幅に遅れたのは、クリストファー・ヒル嫌いのサム・ブラウンバック(Sam Brownback)上院議員の強烈な反対に遭ったからであるといわれている。 米国の大使は上院の外交員会全員の承認を得なければならないのである(http://island.iza.ne.jp/blog/entry/601056)。

 オバマとスティーブンスとの間に直接的な接点はないが、就任直後のヒラリー・クリントン国務長官の訪韓を実現させた手腕をオバマが高く評価したからであるといわれている。このように、オバマが指名した駐中、駐韓大使は、それなりにふさわしい人事であるといえるのに対して、駐日大使については、本書第一章で触れたように、論功行賞的人事の匂いがする。

 オバマは、〇九年五月二七日、次期駐日米大使にた弁護士のジョン・ルース(John Roos)を指名したと発表した。しかし、駐中大使のハンツマンを持ち上げたオバマであったが、駐日大使のルースへの対応は違っていた。オバマが、〇九年五月一六日に共和党のハンツマンを指名したさい、二人が揃ってテレビ会見で発表したが、駐日大使は、ほかの一二か国・組織の駐在大使とともに声明文の形式で発表され、「二一世紀の課題に対処するため、米国外交を前進させることを確信している」と短くオバマはコメントしただけであった(http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20090528k000e030022000c.html)。

 オバマ政権の中国への傾斜は、そのままゴールドマン・サックスの対中戦略強化の反映である。ゴールドマン・サックス栄えて失業者が増えるという末期的症状に米国型金融資本主義は陥ってしまった。


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