消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(301) オバマ現象の解剖(47) 一人勝ち(8)

2010-03-29 22:43:22 | 野崎日記(新しい世界秩序)


 おわりに


 米国経済がまだ塗炭の苦しみにのたうっているのに、ウォール街は復活した。二〇〇九年一〇月一五日に発表されたゴールドマン・サックスの二〇〇九年度第三・四半期(七~九月)の純収益(net revenue)は一二三億七〇〇〇万ドル、純利益(net profit)三一億九〇〇〇万ドルと莫大なものであった。年末に支払われるボーナスの積立金も〇九年九月末で、一六七億ドルであった。これは、これまで最高であった二〇〇七年の一六九億ドルに迫る額であった(http://www.jsda.or.jp/html/foreign/fminfo/info3/kobetsu/8667(20091016)1.pdf)。年末には二〇〇億ドル台に達し、二〇〇七年と並ぶという観測が〇九年九月時点ですでに出されていた(http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/economy/finance/316026/)。二〇〇七年での社員平均は六六万一〇〇〇ドルであり、CEOのロイド・ブランクファインは七〇〇〇億ドルであった。〇九年にもその水準になる。

 ゴールドマン・サックスの高利益に貢献したのは債券・通貨取引であった。二〇〇八年同期の四倍の利益であった。これは、最大のライバルであったリーマン・ブラザーズ(Lehman Brothers)とベア・スタンーンズ(Bear Stearn)が消滅したことによると、『フィナンシャル・タイムズ』(Financial Times)は説明した(Francesco & Farrel[2009])。さらに、現在のライバルであるシティグループ、メリルリンチ、UBSは青息吐息の状態で、ゴールドマン・サックスのひとり人勝ちであるといってよい。

 本章の「はじめに」でも触れたが、こうした目も眩むような高額ボーナスを支払うのは、有能な従業員がライバル行に移ることを阻止するためであると、同行の筆頭財務担当者(chief financial officer)のデービッド・ビニアー(David Viniar)は弁明した。複数年のボーナス契約をしている行員もいるという。

 しかし、英国のビジネス大臣(business secretary)のマンデルソン卿(Lord Peter Mandelson)は、金融危機を招いた過大ボーナスを支払う文化に立ち戻ることに英政府としては耐え難いと警告した。「もしゴールドマン・サックスを含む銀行が、二〇〇九年に巨大ボーナスを支払えば、過去に陥った苦境に再度追い込まれてしまうであろう」と同氏は「チャンネル・フォー・ニュース」(Channel 4 News)で語った。ちなみに、英国のゴールドマン・サックスの行員数は五五〇〇人である(http://www.ft.com/cms/s/0/c4d1a42c-b9ea-11de-a747-00144feab49a.html)。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。