わが下宿周辺の広大な田圃は、いま稲刈りのたけなわである。機械のすごさに驚嘆して見ている。刈り取り機の周囲には、カラスやサギがちょこちょこついてきて、なかなかユーモラスな雰囲気を漂わせてくれる。
早朝、ジョギングしていたら、素晴らしい光景に出会った。なんと、まだ9月というのに、雁が渡来したのである。雁は、稲が刈り取られた後の田圃に舞い降りる。例年、11月前後に渡来するものであると聞く。しかし、今年は、まだ残暑厳しい9月初めに渡来した。なぜなのだろう。
私が見ているのは、「真雁」であろうと思う。体長は70センチ程度。やや灰色を帯びた茶褐色で雄雌同色らしい。嘴はピンクがかったオレンジ。足はオレンジ色。嘴の付け根の額の部分は白い。白い腹部にベルト状の黒い模様がある。鴨川の鴨にどことなく似ている。
夏、シベリアで暮らし、9月にいったん北海道に渡り、その後、11月前後に本州に渡来する。そして、3月ごろに北上し、いったん北海道にとどまった後シベリアに帰る。主たる繁殖地はシベリアである。本州の滞在地は、日本海側は島根県の宍道湖以東、太平洋側は日本最大の伊豆沼などがある宮城県まで合わせて約40か所あるという。夜はねぐらの湖沼にいて、昼、近くの水田に食事に向かう。主に水田の落ち穂を食べ、さらに水田に生えている植物の根を食べる。
朝、雉を良く見る。ケーンという甲高い声を出す。雁の声は、雉と同じである。
いい光景だ。いつまでもこうした神の恵みに浸ることができるようにと祈りながらジョギングした。