消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(170) 道州制(12) 橋下大阪府政と関西州(12) 

2009-06-04 07:08:58 | 野崎日記(新しい金融秩序への期待)

 「会社更生」とは、「新会社更生法」に基づく会社の再生を指す。一九五二年に制定された「会社更生法」が全面改正され、〇三年四月一日に施行された。この法律は、苦境にあるが、再建の見込みのある株式会社について、債権者・株主その他の関係人の利害を調整しつつ、その事業の維持更生を図ることを目的としている。ただし、この法律は、株式会社のみに適用される。

 この新しい更正法は、これまでよりも、手続の迅速化や合理化により大企業の利用を促すねらいがある。「新会社更正法」は、それまでは、更生を開始させる条件に、「再建の見込みがある」との裁判所の判断が必要であったが、この条件が外された。

 そして、従来は、二年以上かかることも多かった更生計画案の提出期限を、一年以内に義務づけ、更生計画案の可決条件も債権総額の三分の二以上の同意から、二分の一以上の同意に緩和した。また、いままでは、申し立ては本店所在地に限られていたが、東京・大阪両地裁でもできるようになった。

 このほか、資産劣化防止のため、更生計画認可前でも、一部の事業部門を営業譲渡できるようになった。また、経営責任がない経営者を管財人に選任できるようになった。従来は、裁判所から選任された管財人が更生手続に当たり、経営破綻に直接責任のない経営者もすべて退任しなくてはならなかったが、「新会社更正法」では旧経営陣の一部は残ることができる。「民事再生法」では、手続に参加できるのは一般債権者に限定されているのに対し、「新会社更生法」では、担保権者や優先債権者や株主も含み、「民事再生法」よりも多人数を含む枠組みで再建を進めることができるようになった(http://www.itsnkeiei.com/kaisyakousei2.html)。

 「特別清算」とは、「すでに解散してしまった」株式会社に、債務超過の疑いがある場合などに、適正な清算を図るべく、裁判所の監督下でおこなわれる清算手続のことである。「特別清算」の大前提として、株式会社であること、すでに解散していることが必要になる。

 「民事再生」とは、資産を維持したまま、大幅に減額された借金を(減額の程度は、借金の額と保有している資産によって異なる)、原則として三年間で分割して返済していくという手続である。「民事再生」では、自己破産のように、借金全額の返済義務がなくなるわけではないが、「自己破産」のように、高価な資産を処分しなくてもよい。「民事再生」は、借金額が大きくて全額返済が困難だが、処分されたくない高価な資産を所有している場合に有効な手続である。

 一九九五~〇六年で法的整理された一三四の第三セクターは、立地からすれば、北海道がもっとも多くて一九件であった。そして、大阪府がこれに次ぎ、一〇件あった。あと、新潟県の九件、東京都の八件が続く。

 事業分野別では、観光・レジャー(五七件)や地域・都市開発(三一件)に集約される(帝国データバンク『第三セクター経営実態調査(第一五回)』二〇〇一年七月一三日付、
http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p010713.html)。大阪府が全国第二位であったのも、地域・都市開発に関連した第三セクターの法的整理件数が多かったためである。

 法的整理形態で見ると、一九九五~九九年度にかけて実施されたものすべては、「破産」または「特別清算」であった。ところが、二〇〇〇年度以降は、「民事再生」と「会社更生」に「特定調停」を加えた法的再生が全体の約五五%を占めるようになった。つまり、破産させるよりも再生させる方に整理形態が傾いたのである。

 相次いで施行された再生を促す法律を列挙する。「民事再生法」(一九九九年法律第二二五号)、「特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律」(一九九九年法律第一五八号、いわゆる 「特定調停法」)、「新会社更生法」(一九五二年法律第一七二号)の改正(二〇〇二年)等々である(深澤[2008]、三八ページ)。

 こうした動きは、自治体が第三セクターに関与する度合いを強くしたことの現れであろう。第三セクターへの自治体の出資比率の高まりや、自治体による損失補償の実施といった要因が、自治体の窮状を深め、政府が自治体の財政難を少しでも緩和すべく、相次いで、第三セクターの破綻を避けさせる法律を成立させたのである(17)。

 実際、自治体による第三セクター向けの貸出残高が大きいほど、貸倒れが顕在化することを懸念して、第三セクターの破綻処理は先送りされてきた。「損失補償契約」を結んでいればなおさらである。「損失補償契約」額が大きいほど、破綻処理を先送りして契約の履行を避けようとする傾向が顕著になった。

 典型例が青森県大鰐町の「大鰐地域総合開発株式会社」である。この第三セクターへの大鰐町の出資比率は九六%であった。同町は、自己の一般会計の規模からすれば過大な「損失補償契約」を結んでいた。同社が破綻して契約の履行を求められると、町の「財政再建団体」への転落が避けられなくなることから、同町は、同社の存続を図ってきたのである(「爆発寸前!!三セク・三公社、最終処理の恐怖」『週刊ダイヤモンド』第九五巻第四八号、二〇〇七年一二月一五日)(18)。

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