消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

 野崎日記(155) 新しい金融秩序への期待(155) クレジット・デリバティブという怪物(12)

2009-05-13 06:59:30 | 野崎日記(新しい金融秩序への期待)

(9)フォワードとは、銀行間市場(外国為替市場)の外国為替取引の種類の一つで、フォワード取引(金利のフォワード取引とは異なるので注意)とも呼ばれ、一定期間の通貨の交換のことをいう。通常、二営業日後にスタートをして、一定期間後に反対売買を約束して行う取引である。機関投資家などは、二~三か月先の受渡しの為替予約をおこなう。その際の為替レートは、スポット取引のレートとは同一ではない。

 一ドル一一五円の時、ドルをもっている人と、円をもっている人が三か月間それぞれの保有通貨を交換するとする。三か月間のドルの金利を五%、円の金利を〇・〇二%とすると、三か月後に再び一一五円で交換する場合、三か月間ドルを手放し、円を保有する人は、金利が〇・〇二%しかつかないので、損をしてしまうことになる。そこで、どちらも損をせず、この契約を成り立たせるために、次のような計算の上、契約をする。

 一ドルを三か月間運用した場合の受取額は、1ドル×1.05 × 3÷12=1.0125ドル。
 一一五円を三か月間運用した場合の受取額は、115円×1.0002×3÷12=115.00575円。つまり、一・〇一二五ドル=一一五・〇〇五七五円で返還されるとき契約が成り立つ。115.00575円÷1.0125米ドル=113.58592。一ドル=約一一三・五八六円で三か月後に返還する約束をして、一ドル=一一五円で交換する契約となる(http://www.nomura.co.jp/terms/english/f/sakimono_gai.html)。

(10) スワップとは、二つの当事者間で、事前に合意された数式にしたがって求められたキャシュフロー(cash flow、後述)を、決められた期間において、決められた回数だけ交換する契約である。交換されるものによって、金利スワップ、通貨スワップやエクイティー・スワップなどと呼ばれる。これらは、固定であっても変動であってもよい。金利スワップのもっとも基本的なものは、プレイン・バニラ・スワップ(Plain Vanilla Swap)と呼ばれる。これは、同一通貨の固定金利と変動金利との交換である。一方の当事者(X)が契約締結時に決定しておいた想定元本に対して決められた固定金利分を他方の当事者(Y)に契約期間支払う。これと同時にYはXに対して同額の想定元本に対して変動金利分を支払う。スワップ(広義のスワップ)は、基本的に二当事者間での交換であるが、交換の回数、一方当事者に権利が付与されているかどうかによって次のように分類される。

 まず広義のスワップは交換回数によって、二つに分けられる。複数回交換がおこなわれるケースと、ただ一回の交換のみのケースである。前者が狭義のスワップである。後者は契約当事者の一方における権利の有無によって、さらに二つにわけられる。双方共に権利のないケースであるフューチャーと一方が権利を保有するケースであるオプション(後述)に分類される。

 通常スワップと呼ばれているのは、上記の分類のなかの狭義のスワップのことである。オプションを内蔵させたスワップも取引されている。リバース・フローターと呼ばれるスワップが一例で、キャップという金利オプションが内蔵されている。スワップとオプションを直接組み合わせたものとして、スワップを原資産としたオプションはスワップション(Swaption)と呼ばれる(http://www.nomura.co.jp/terms/japan/su/swappu.html)。

 キャッシュフローとは、文字通り「資金の流れ」を意味する。資金の流出をキャッシュ・アウトフロー、資金の流入をキャッシュ・インフローといい、両方あわせてキャッシュフローという。会計の場合には、企業活動におけるキャッシュの出入りを示し(ネットインカム+純利益)、証券分析の場合には、投資対象によって得られるすべてのキャッシュを総称する。企業の活動状況について、活動状況を会計処理して表すものを財務諸表と呼ぶが、金融商品取引法の財務諸表規則に則って作成される財務諸表において定義されるキャッシュフローとは、現金や現金同等物の増加または減少をさす。なお、一会計期間のキャッシュフローの状況を、一定の活動区分別に表示したものを「キャッシュフロー計算書」と呼ぶ(http://www.nomura.co.jp/terms/japan/ki/cash_f.html)。

(11) オプションとは、何かをする『権利』のことである。基本型としては、コール・オプション(Call Option)とプット・オプション(Put Option)の二つのタイプがある。コール・オプションは、「ある決められた日」に(までに)「ある決められた価格」で、原資産を購入する『権利』であり、プット・オプションは、「ある決められた日」に(までに)「ある決められた価格」で、原資産を売却する『権利』である。「決められた日」を満期日(Maturity Date)、権利行使日(Exercise Date)あるいは消滅日(Expiration Date)といい、「決められた価格」を行使価格(Exercise Price、Striking Price)という。オプションの価格をオプション・プレミアム(Option Premium)という。権利行使がいつできるかによって、ヨーロピアンタイプ(European Type)とアメリカンタイプ(American Type)に分かれる。ヨーロッピアンタイプは満期日にのみ権利行使が可能なタイプであり、アメリカンタイプはオプションの存続期間中いつでも行使可能なタイプである。オプションは純粋に権利であるためこれを行使しなければならぬ義務はない。この点がフューチャーやフォワードと異なった特徴である。オプションのプレミアムを算出する評価式は、ブラックとショールズにより裁定理論を用いて導かれた放物型の偏微分方程式の解であるブラック・ショールズ・モデルが代表的である。契約期間中の原資産価格に条件をつけたオプションも取引されている。これらは条件成就によって消滅するノック・アウト型と発生するノック・イン型に分けられる(http://www.nomura.co.jp/terms/japan/o/opusyon.html)。

 ブラック・ショールズ方程式とはデリバティブ(金融派生商品)の価格づけに現れる偏微分方程式(及びその境界値問題)のことである。 ブラック-ショールズモデルは一九七三年にフィッシャー・ブラック (Fischer Black) とマイロン・ショールズ (Myron Scholes) が共同で発表した理論であり、このモデルを使って当時の懸案であったヨーロピアン・コール(およびプット)オプションのオプション・プレミアムを計算してみせた。後にロバート・マートン(Robert Marton)が彼らの方法に厳密な証明を与えた。これらの理論は現代金融工学のさきがけとなったともいわれる。ブラック-ショールズ方程式はヨーロピアンオプションのオプション・プレミアムの計算には使用できるがアメリカンオプションには使用できない。満期日のみ行使可能なヨーロピアンオプションに比べて、アメリカンオプションは権利行使日が不確定なため、価格付けが難しく、その分アメリカンオプションのプレミアムは割高になっている。この点がアメリカンオプションの買い手にとってのメリットといえるが、良い計算方法はまだ理論化できていない(http://ja.wikipedia.org/wiki/)。

(14) 優先株とは、他の種類の株式に比べて優先的取扱を受ける株式のこと。多くの場合、配当や会社清算時の残余財産を普通株に優先して受ける権利を有する一方、議決権に一定の制限が付された株式のことを言う。一般的に優先株が上場されることはなく、事業会社に対する支配規制のある金融機関などが引き受けることが多い(http://www.exbuzzwords.com/static/keyword_930.html)。


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