はじめに
本稿は、ますますクローニー・キャピタリズムの様相を強めている英米日の資本主義が、近い将来陥るであろう落とし穴を、摘出する作業の1つである。今回は中間的結論すら出せず、単に超巨大化する米銀とその華麗な人脈の表面を撫でただけのことしかできなかったが、この方向で今後も書き続けたいと願っている。
世界を支配しうる巨大金融機関が誕生している。シティ・グループ(Citigroup)がそれである。2005年度の資産が1・5兆ドルもある(同社ホームページ)。
米国の金融資本市場(株式時価総額、債券残高、銀行融資残高の合計)規模が2003年時点で41兆ドルだったのだから、ほぼその4%を同社が保有していることになる。銀行融資残高に限定すると米国の残高は21兆円強あった。この数値を基準とすればシティ・グループの資産は7%強に跳ね上がる。これはとてつもない大きな資産である。また、1・5兆ドルといえば、2003年3月末の米国財務省証券の海外保有額に匹敵する(米国財務省、Major Foreign Holders of Treasury Securities)。
ちなみに、この時点における世界のGDP合計は36兆ドル、世界全体の金融資本市場は130兆ドルと、金融市場は実物市場の約3・6倍になる。金融資本市場がいかに水膨れしているかがこれで理解できるだろう。米国の金融資本市場は世界全体の31・3%である。ユーロ圏が35兆ドルで27%、日本が20兆ドルで15・5%、新興国15兆ドルで11・6%である。実物経済規模に対して金融資本市場規模が何倍あるかで見ると、米国が3・7倍、ユーロ圏4・3倍、日本4・7倍、新興国1・8倍である。
最初から横道に逸れるが、米国と日本との金融資本市場の体質は対照的なものである。まず公的債務残高の構造が異なる。対GDP比では、米国が0・46倍、日本が1・36倍である。深刻な財政赤字を計上する国として危惧される米国よりも日本の財政赤字に方が深刻なのである。しかし、民間債務残高となるとこれまた対照的である。米国が今度は正反対に1・43倍に対して日本が0・52倍と米国に比べて極端に少ない。 銀行融資残高についても両国の性格は大きく異なる。米国が0・53倍なのに日本は1・68倍である。つまり、直接金融が主体の米国、間接金融主体の日本という、くっきりとした種別が見て取れる。米国の数値の低さはラテンアメリカと共通する(0・52倍)。
銀行融資残高はEU圏で大きい。オランダ6・93倍(金融資本市場の対GDP比は6・93倍と世界最高値)、英国2・62倍(同、5・32倍)、フランス2・55倍(同、4・72倍)。総じて銀行融資残高比が高いほど金融資本市場の対GDP比は高い。
株式時価総額面では日米は似ている。米国が1・3倍、日本が1・14倍であった。株式面ではドイツ、フランス、オランダが低い。それぞれ0・42倍、0・7倍、0・42倍である。つまり、金融の流れは直接金融に向かうと私たちは思い込んでいるが必ずしもそれは正しくないことをこの数値は語っている。直接金融体質の経済強国は米国のみであり、日本がその後を懸命に追っているだけで、ヨーロッパは頑固に間接金融の体質を変えていないのである。この構造の差を私たちは見落としてはならない。しかし、直接金融の国、米国で、世界最大のマンモス銀行グループが間接金融をも包含してしまう事態が出来したことは、旧来の金融構造を変化させてしまう巨大な衝撃である(金融資本市場に関するデータはIMF、大和総研/コラム:世界金融資本市場の将来像)。
本稿は、ますますクローニー・キャピタリズムの様相を強めている英米日の資本主義が、近い将来陥るであろう落とし穴を、摘出する作業の1つである。今回は中間的結論すら出せず、単に超巨大化する米銀とその華麗な人脈の表面を撫でただけのことしかできなかったが、この方向で今後も書き続けたいと願っている。
世界を支配しうる巨大金融機関が誕生している。シティ・グループ(Citigroup)がそれである。2005年度の資産が1・5兆ドルもある(同社ホームページ)。
米国の金融資本市場(株式時価総額、債券残高、銀行融資残高の合計)規模が2003年時点で41兆ドルだったのだから、ほぼその4%を同社が保有していることになる。銀行融資残高に限定すると米国の残高は21兆円強あった。この数値を基準とすればシティ・グループの資産は7%強に跳ね上がる。これはとてつもない大きな資産である。また、1・5兆ドルといえば、2003年3月末の米国財務省証券の海外保有額に匹敵する(米国財務省、Major Foreign Holders of Treasury Securities)。
ちなみに、この時点における世界のGDP合計は36兆ドル、世界全体の金融資本市場は130兆ドルと、金融市場は実物市場の約3・6倍になる。金融資本市場がいかに水膨れしているかがこれで理解できるだろう。米国の金融資本市場は世界全体の31・3%である。ユーロ圏が35兆ドルで27%、日本が20兆ドルで15・5%、新興国15兆ドルで11・6%である。実物経済規模に対して金融資本市場規模が何倍あるかで見ると、米国が3・7倍、ユーロ圏4・3倍、日本4・7倍、新興国1・8倍である。
最初から横道に逸れるが、米国と日本との金融資本市場の体質は対照的なものである。まず公的債務残高の構造が異なる。対GDP比では、米国が0・46倍、日本が1・36倍である。深刻な財政赤字を計上する国として危惧される米国よりも日本の財政赤字に方が深刻なのである。しかし、民間債務残高となるとこれまた対照的である。米国が今度は正反対に1・43倍に対して日本が0・52倍と米国に比べて極端に少ない。 銀行融資残高についても両国の性格は大きく異なる。米国が0・53倍なのに日本は1・68倍である。つまり、直接金融が主体の米国、間接金融主体の日本という、くっきりとした種別が見て取れる。米国の数値の低さはラテンアメリカと共通する(0・52倍)。
銀行融資残高はEU圏で大きい。オランダ6・93倍(金融資本市場の対GDP比は6・93倍と世界最高値)、英国2・62倍(同、5・32倍)、フランス2・55倍(同、4・72倍)。総じて銀行融資残高比が高いほど金融資本市場の対GDP比は高い。
株式時価総額面では日米は似ている。米国が1・3倍、日本が1・14倍であった。株式面ではドイツ、フランス、オランダが低い。それぞれ0・42倍、0・7倍、0・42倍である。つまり、金融の流れは直接金融に向かうと私たちは思い込んでいるが必ずしもそれは正しくないことをこの数値は語っている。直接金融体質の経済強国は米国のみであり、日本がその後を懸命に追っているだけで、ヨーロッパは頑固に間接金融の体質を変えていないのである。この構造の差を私たちは見落としてはならない。しかし、直接金融の国、米国で、世界最大のマンモス銀行グループが間接金融をも包含してしまう事態が出来したことは、旧来の金融構造を変化させてしまう巨大な衝撃である(金融資本市場に関するデータはIMF、大和総研/コラム:世界金融資本市場の将来像)。