前回の続き
日米の軍事一体化
イラク戦争の原因はいろいろありますが、何といっても石油資源をめぐる戦争です。国際石油資本に対抗して原油価格の決定権をとりもどそうと石油輸出国機構(OPEC)を作ったのはイラクのサダム・フセインです。そのフセインが石油の決済をドルからユーロに切り替えました。さらにサウジアラビアやインドネシアなどもこれに追随しはじめました。
アメリカは膨大な貿易赤字を抱え、それが年々急増しています。それにもかかわらず、ドルが世界で君臨している最大の理由は三つあります。一つは世界の貿易の決済がドルで行われていること。二つ目は英語が世界の公用語として使われていること。三つ目は圧倒的なアメリカの軍事力です。だから、石油の決済をドルからユーロへ切り替えることは、ドルの世界支配に対する挑戦です。アメリカはフセインの行動を許せなかった。これがイラク戦争の原因の一つです。
アメリカは大量破壊兵器を口実にイラク戦争に突入しました。それがウソだったことがばれたわけですが、イラク戦争を強行しました。しかし、イラク戦争は泥沼化し、有志同盟からポーランド、スペインなどが次々に脱落しました。頼みとしていたイタリアのベルルスコーニ政権も、選挙で負けました。イギリスのブレア政権の支持率も下がりっぱなしです。次の選挙で負けることは確実です。他方で、中国、ロシア、フランス、ドイツ、インドがアメリカのやり方に反対しています。中国、ロシアを中心とする上海協力機構などを通じて、反米戦線が構築されつつあります。
こういう状態で、アメリカの友だちはいなくなりました。日本しかいないのです。とにかく日本をつかんでおかなければならない。米軍再編は、そういう背景があって出てきたのだと思います。
アメリカがいう「不安定の弧」とは北東アジアから中央アジア、そして中東にいたる地域です。中央アジアで米軍基地を作ろうとしたが失敗しました。結局、イージス艦や空軍の力に頼るしかない。自衛隊の役割をもっと拡大する。現在のように沖縄に大量の米兵を貼り付けておくのは危ないから、海兵隊の司令部はグアムまで後退させる。その費用は日本に負担させ、グアムからローテーションで世界に対応する。極東やインド洋など主要な地域にはイージス艦を配置しておいて、いざという場合には、グアムから沖縄へ、グアムから岩国へという具合に臨戦態勢をとる。
米軍再編の重要な特徴は、日米の軍事一体化です。日本の自衛隊は常に米軍の指揮系統に従わなければならなくなる。最近、ウィニーというソフトによって、防衛庁のデータが流出しました。佐世保での机上演習の内容です。国名は出していませんが、アメリカは緑色、日本は青色、中国が黄色、北朝鮮は茶色、韓国は紫色となっていました。シナリオは、中国と北朝鮮が結託して日本の領海を侵犯するというものです。場所はS列島(尖閣列島)。中国と北朝鮮の漁船が、日本の巡視船に体当たりする事態が発生。まず何をするか。「緑色の国(アメリカ)に従え」です。次は「中央即応集団司令部は各基地に指令を出して先制攻撃せよ」です。中央即応集団司令部というのは、米軍再編によって、自衛隊が新たに編成してキャンプ座間に同居させる部隊です。つまり、日本の自衛隊は、何かあれば「まずアメリカの指揮命令に従う」ということになっているのです。他国の軍隊の指揮命令に従うことを進める日本の政治とは何なのか。日本の自衛隊員がはたして米軍の指揮命令に従うだろうか。現場段階での反発が起きるのではないかと思います。
これからは情報収集がますます重視されます。アメリカ国家安全保障局が運営するエシュロンは、世界中にはりめぐらされた通信傍受システムで、電話やインターネットなどの情報を盗聴傍受しています。アメリカの世界戦略の中で、敵国と友好国を分かたず情報を収集しており、日本政府、日本企業も監視の対象とされています。日本に関する情報収集の対象は主に経済分野と言われています。三沢に傍受施設がありますが、さらに新たな施設を作ろうとしています。キャンプ座間ではないかと思います。すでに盗聴法ができていますから違反でもない。さらに「共謀罪法」が準備されています。冗談話でも「そうだ」と同意すれば共謀罪が成立します。
以下次号
倫理なき資本主義を読んで、でした。
その後、いくつかの著書を拾い読みし、
ネットでの論文連載、ゼミのページ等を
つねにチェックしてきました。
先に京大を退官されたことを知り、
現在のブログに行き着きましたが、
こんなに手軽に先生の論文に触れられるのは、とてもうれしいことです。
あ、もちろん、「売られ続ける…」は、発売直後に購入して、読みました。