消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(234) 新しい金融秩序への期待(179) システム崩壊を生み出したもの(12)

2009-10-27 04:24:22 | 野崎日記(新しい世界秩序)

質問20 内需拡大がいわれているが、貧困状況を克服するためには雇用拡大が必要だと思う。地域生活圏作りだけで若者が救えるでしょうか。

本山先生

 いや、救っていかなければいけない。内需拡大ということばに踊らされてはダメです。内需拡大というのはトヨタにしても電機メーカーにしても三割が突然おかしくなった。これは何なのだろうか。自分たちの国内需要の二倍くらいのものをつくって、それを借金まみれのアメリカに売っていた。アメリカ人が借金をしても買うかというときは、安いから買うのであって、中国やベトナムで作らせたものは安いから売れるのであります。GMのように、社会福祉費用を取られてしまう、医療費を取られてしまうというところと、派遣社員を散々使って、安い製品を売っているところと勝負するとどうなるか。当たり前です。アメリカが買う能力がなくなったらガタンと購買力が落ちる。こういう会社をなくすことが内需拡大です。少なくともわれわれの内部でわれわれが必要とするものをどれだけ作り出せるかということが一番大事なのであります。

「国民負担率」の詐欺

 一つ例を出させてください。国民負担率という言葉があります。これから医療費が高くつくであろう。国民が負担する比率を少なくしよう、日本はこれから負担率が大きくなるからと。こんな大きな詐欺はありません。日本でいう国民負担率というのは、私たちから

 預かった税金、その税金を医療費に使ったものを国民負担率というのであります。私たちが税金をつかわずに、個人的に医療費を払ったら、それは国民負担率の対象にならないのです。私たちの税金の中から、トヨタとかキャノンとか、あの連中たちが経団連会長になってからどの程度、社会福祉関係に金を注いだであろうか。ものすごくカットしてきています。われわれの金だけで医療費をまかなえ。それを小さくすることが大事なのだ。われわれが個人的に払う医療費を増やすこと、これが国民負担率を下げるということなのです。こんな詐欺に多くの人間が引っかかっている。それを野党という野党が気付いていない。情けない。勉強していないのではないか、議員さんたちは。こういうことを一つ一つ解きほぐしていって、われわれは騙されているのだということをいろいろなところで、こういう学習会を開きながら、皆で共有していかなければならない。

日本の医療制度

日本の医療制度というのは、もっともわれわれが負担する率が高いのであります。オバマは少なくともアメリカの医療制度に切り込もうとしています。オバマの悪口を言いましたが、もしかしたら、オバマの医療改革というのはいいかもしれない。少なくともアメリカの企業が悲鳴を上げているのは、国民皆保険がないから、労働者をつなぎとめるために民間企業が医療費を払っているのだということです。この一点を重視しなければならない。ところが、そういう負の遺産をGMが負っているから、そうならないために、わが自動車産業はそれをやめましょうねと。全くさかさまの議論が展開されているのです。そういうことの意味も勉強していきましょう。関西にいたら分るのですが、東京の方に比べて、関西の人間として偉そうに言わせてもらうと、経営者が良いのです。労働組合を認知している。東京のように毛嫌いしていません。皆さん、関西の経営者の集まり、特に中小経営者の集まりをぜひご覧になってください。人工衛星までうち上げる、すごい活力のある連中たち。彼らは絶対人の首を切りませんから。そういう意味で私はこれからは関西の力が出てくると思います。

質問21 日本は失業者が失業保険を受けられない割合が、先進国中、最悪と知りました。

本山先生

 本当にそうなのです。雇用されている人の三分の一は雇用保険をうけとっていない、というか、初めから徴収されていない。それは大変です。法律的にきちんとしていかなければいけないのでありますが、とにかく社会保険は企業家の義務であるという当たり前のことをやりましょう。そのためには喧嘩しなければいけない。喧嘩するためには、喧嘩しても生きていけるという雰囲気をつくっておかなければならない。私たちがNPOをつくって若者たちに最低限の就職をさせていくというのは、いざというときに帰ってきていいよ、それまで闘え、首になったらまた支えるからということです。昔の労働者が強かったのは、田舎があったからです。ゴメーンと言って、田舎に帰ることが出来た、小さくなりながら。私も疎開で苦しかったです、馬と一緒に寝ました。でも少なくともまだ親族が田んぼを耕している、手伝わして、という場があったから、労働者の闘いが強かった。いまそれがない。だからその代わりにNPOを田舎につくっていこうというのが私の具体的な提案なのです。そうすることによって闘おうと。そういうことが大事なのであって、われわれが、今すべきことはそういうことなのです。宜しくお願いいたします。

質問22 日本興業銀行に住宅ローンの相談に行ったら対応が悪かった。かつての銀行は政府の後ろ楯で守られながら、いい給料をもらって威張っているといったイメージがあります。護送船団方式はよかったといわれるが、このようなイメージをどう考えるか。

本山先生
 

 当たり前です。日本興業銀行は、われわれを相手にしてくれる銀行ではない。あんな銀行は巨大企業に任せればいい。われわれに大事なのは信用組合。その認可権まで政府がもってしまった。かつては地方自治体がもっていたのです。これをとりもどさなければダメです。そのためにはわれわれが出資して、「そんなことを言ったら理事長、首にしますよ」というくらいの力をもたなければイカン。それが出来るのは信用組合なのです。日本興業銀行は政府そのものですから、恐ろしくてそんなことはわれわれにはできません。私が言っているのは私たちが影響力を発揮できるような地元の小さな銀行を応援しましょうということです。小さな銀行をあわせたら日本の全貯蓄がそこにあるということです。考えるだけで素敵ではないですか。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。