消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

野崎日記(23) 新しい金融秩序への期待(23) 金融の自由化

2008-12-07 18:07:50 | 野崎日記(新しい金融秩序への期待)
 
  金融の自由化というのは、お金持ちにとっての自由化であって、我々が自由に動けるわけではない。サブプライムローンなど、見たことも聞いたこともなかったはずです。これは会員が買っていたからです。サラ金的な組織が、とてつもない大きな国家権力機構のもとで運営されていたからです。

  小さな世界で博打をすると大損するけど、なるべく広い世界、事情の知らないイギリス人、フランス人に売るとリスクは避けられる。アメリカ人は事情知ってるから買ってくれないが、投資銀行のやばさを知らない外国人は買ってくれるだろうと怪しげな金融商品を世界に売りまくる。これを私はリスクの転売ビジネスと呼びます。これがグローバリズムの意味です。

 グローバリズムとは、皮膚の違った人間、言葉の違った人間が仲良くなる社会というのは、単なる建前であって、嘘っぱちです。ホントは全ての世界でお金持ちが自由奔放に動ける社会を作るということがグローバリズムの本音です。そのためにも、世界の商業銀行(預金銀行)をつぶさなければならなかったのです。

 預金銀行は庶民のお金を預かっている。そして融資によって、地元企業を育てている。膨大な日本人のお金が日本企業を育成するために費やされていったらアメリカはもたない。膨大なお金が日本企業にいかないようにしよう。そのために銀行をつぶして、証券を売り出させる。そのために、アメリカで上場したらいいじゃないかと。アメリカで上場するときには、会計の内部調査をしてもらいます。アメリカの上位4社の会計事務所がほぼ全世界100%をもっている。

   わが日本企業がどんなに大きくてもアメリカで上場するときはアメリカの会計事務所を通すしかない。日本の企業の秘密はすべて把握され、その上でM&Aの餌食になります。そして、アメリカの企業に乗っ取られたときに、利益を会員に配分する。これがファンドです。そのために三角合併と申しまして、お金で乗っ取るのは大変だから株式交換で乗っ取る。

  アメリカの優良株というのはインチキですよ。ダウ工業株、30種でしょう。日本でも上位30だったらどれだけすごい企業があるか。アメリカ人が投資して日本人が投資しないとよく日本は批判される。当たり前です。全ての情報はアメリカに集まるのだから。もうかりそうな企業を乗っ取って転売するのがアメリカのビジネスです。サッポロビールを買収しても、ファンドがサッポロビールをそのまま運用するはずがない。次の買い手をみつける。転売して利益を受ける。そのときに転売に応じない輩がいるだろうし、ごねる輩も出る。そのときに恫喝する力が要る。

  グローバリズムとはヤミ金融です。そのヤミ金融に暴力の力がつながっています。投資銀行だけでやっていけると思いますか。いざというときはズドンとやらなきゃいけないんですよ。恐い機関を総動員して、彼らは、世界的にもうかるものはなにかをつねに探し求めている。

   ご存じのようにアメリカは基軸通貨国です。金融の中心地です。ドルが中心です。世界で最も大きな借金をしている国はアメリカです。年間8000億ドル位の赤字をずーと継続しています。借金がドルでなくて円、ユーロだったら、アメリカはとっくの昔に破産しています。

  アラブにお金がいっぱいたまっているのに、アラブにはろくな金融がない。だからアメリカが代わりに運用してさしあげます。そのかわりアメリカの財政赤字を救ってねと交渉する。アメリカ財務省証券という国債を中近東の国が買ってるんですけど、中東のどの国が購入したかをアメリカは公表していません。「中近東」として一括さえているだけです。日本とかドイツが買えば名前が公表されるのに、アラブに関しては公表しないのです。

  1970年代のオイル危機までは、アメリカの銀行は州際業務と申しまして、一つの州にとどまっていました。それが、オイルダラーを扱うことによって全世界にウワーとあふれ出た。これが金融グローバリズムの第一番目です。70年代ですね。そして80年代。今度は証券化です。証券をビジネスにする。アメリカの証券市場を開放する。そして、アメリカが証券の自由化をしたのだから、他国も自国の証券市場を解放しろと要求してきた。アメリカの格付け会社を使わせる。世界がアメリカに投資する。そうやってアメリカブームをおこして、次にアメリカのファンドを作る。世界から集めたお金でもって、世界の優良企業をねらい撃ちにしていく。それが、M&A。これがものすごくもうかる。

 ひどい話ですよ。相手先はすごい資産をもっているぞ。がんばって、買収しよう。しかし、当方には、お金が無い。向こうの株とこっちの株を交換することによって資金不足は解消できる。買収対象の企業Aの株をもっている人に、買収する側のBの株と交換させればよい。そして、自社の株価をつりあげて、株式交換で相手を買収してしまえ。これが三角合併です。これは、国を売る売国行為です。法務大臣のおばちゃんが三角関係とは昔からむずかしいですからねとやっちゃったんです。野党は、笑ってつっこまなかった。これがM&A。これが2番目の金融自由化です

  そして、サブプライムローン。これが、最終の第3段階。買わされた人は自分の持ってる証券、仕組み債、ストラクチャーボンドの意味が分かっていない。投資銀行は、お客様ごとに、仕組み債をつくる 。その実態はサラ金です。サラ金は非常に高い金利を出します。高い金利を出さなければやっていけない。この関係をなにも知らない日本やヨーロッパの金融機関に売り付けていく。

 「これはいいですよ」、「高い金利出しますよ」、「安全ですよ」と。その安全性を保障してくれるのが格付け会社なんです。そして、モノライン。だいたいカタカナはあやしいと思ってください。必ずごまかしてくる。

 プライベートとパブリックでわかりますように。モノライン。我々が見聞きする保険というのは、マルチライン。これは、死亡保険、医療保険、いろんなものを扱っています。ところが、モノラインは、支払い保証だけをおこなう。住宅ローンの支払いが滞ったときに代わりに払ってさしあげます、というのがモノライン。

  グラス・スティーガル法と申しまして、1929年のニューヨーク株式大暴落の教訓から、1933年に、証券と銀行と保険の3つの業務の兼業を禁止した法律があります。これによって、モルガンは分割された。モルガンスタンレーとJ.P.モルガンに。これを1999年、ルービン財務省長官が金融近代化法を作りまして、3つを兼業してもよいとしたのです。その第一号がシティグループです。シティグループが日興コーディアルを買収して、日本の三角合併第一号となった。

  垣根がなくなり、M&Aが一層しやすくなって、それいけどんどんとやった。ところがサブプライムローンでこげついた。これから、巨大な金融再編成がおこります。この布石なんです。これがサブプライムローン問題です。

 
恐らくモルガン系が勝つだろう。金融がもうかりますのは、安く売って高く買うからではないのです。高く売って安く買い戻す。今株価が下がっているでしょう。株がどんどん下がっているときに人様から株を借りて売る。現物の値段が下がったときに、現物を買って、返したらいいですから。1000円のときに売って、どんどん売って、最後に1円になる。1円になったそのときに買い戻してその現物株を借りた人に返せばいい。こうしたえげつない操作を自由にさせるべく、先物が認可された。金もうけするのに、外部からがたがた言われたくない。これが金融の自由化ですし、そこでは情報入手速度が万金の価値をもつ。そういう情報が集まる人間は限られています。

   一群の群れをなす情報集団があります。彼らが、金融のエリートを構成します。例えば天下り。日本では、銀行の頭取になろうと思ったら新人時代に銀行に入ったらいけなかった。知事になろうと思ったら、県庁の役人になったらいけなかった。皆、自治省、大蔵省の天下りであった。これが日本だった。ところがアメリカは反対なのです。

 アメリカは大学卒業すると、まず、会計事務所にいきます。法律事務所にいきます。そこで裏情報を手にいれます。幹部は、人脈形成を重視します。新人が、できるとなったら議員の秘書にします。秘書にしてからヒラを通り越して、いきなり重役として大きな会社に入り込みます。今のアメリカの国防大臣はシェブロンという大会社の社外重役でした。ゴールドマンサックスのルービンが財務長官になる。財務長官になってシティグループの長になるはずだったんですが、彼は辞退した。恐らくゴールドマンサックスにもう一回戻って来て、モルガンに身売りするんじゃないかなという判断を私はしています。

 今、ものすごくもうけてるんです、ゴールドマンサックスは。2年連続で巨額のもうけです。人にサブプライムローンを買わしながら、自分では空売りをしかけていたのです。まだだれもしょっぴかれておりません。ボーナスは何百億円です。