大分単身赴任日誌

前期高齢者の考えたことを、単身赴任状況だからこそ言えるものとして言ってみます。

読んだ本・・・「官僚制批判の論理と心理-デモクラシーの友と敵」(野口雅弘著:中公新書2011.9)

2012-06-23 11:44:30 | インポート

「官僚制」をめぐる問題が、社会的に大きな問題になっています。私自身の今後の生き方、仕事への対し方、という点においても、とても重要な問題だと思っている問題です。

本書は、「帯」に「ウェーバーの官僚制論はいかに読み直されるべきか」とあるように、「行政学者ではなく、政治思想史を専門とするマックス・ウェーバー研究者である」著者が思想史的に「官僚制」を読み解き、解説してくれているものです。その方向は、同じく「帯」に「官僚制はなぜ擁護されなければならないか」とあるように、今日の「官僚制批判」の趨勢に対して「カリスマに抗する装置としての官僚制」の意義をも示す、という構図になっています。・・・と言っても、私の読後感としては、「官僚制擁護」がそれほど強いわけではなく、「官僚制批判」について、さまざまな「論理と心理」が、そこに集中されることによってもたらされる弊害、ということへの注意喚起が課題なのかと思えました。

それは、「『より多くのデモクラシーを』という方向性と。『より小さな政府を』という新自由主義の共闘による官僚制批判は、『正当性』を「めぐる争いに直面して、後者に絡め取られていく」という指摘として表現されています。

たしかに、「官僚制批判」が「官僚バッシング」になる社会の雰囲気は、「強いカリスマ」への憧憬を強める、という危険性があるものなのでしょう。

そのためには、「官僚バッシング」の「心理」が、きちんととらえ返されなければなりません。

この点について著者は、「『官僚内閣制』の問題性が、そのパフォーマンスの低下によって・・顕在化することになった」ことが基礎にある、としています。その「パフォーマンス」とは、官僚制が有効に機能していた時期には、一つには「『民意」・・からは隔絶された専門知によって制御されるべき」領域が確保されていて「官僚制」がそれを担ってきた、ということで、もう一つは、「右肩上がりの経済成長と言うパフォーマンス」の持続的維持です。経済成長が続く中にあっては、「少々の利権や癒着があっても、行政が産業全体の存続と収益向上に責任を持とうとする『護送船団方式』によってそれを上回るパフォーマンスが達成され、『民間』もその果実を享受できている間は、不満は顕在化しにくかった」のが、その前提が崩壊する中で不満が噴出してきた、というわけです。

そのような構造を踏まえつつ、官僚制について「それでも問題は問題」として、きっちりと見ていくことが必要なのでしょう。

「官僚制」をめぐる議論としては当たり前のことなのかもしれませんが、「形式的合理性」「実質的合理性」 という概念で問題がたてられているところに関心を持ちました。私たちの業務領域において「実質的審査権」が言われる、という、いわばおよそ「官僚制」的ではない課題が最初からある、ということに、現在の諸課題を解く契機があるのではないか、という気がしたからです。・・・あんまり関係ないですかねぇ?

・・・それはともかく、官僚制において求められ、実現される「形式的合理性」は、その初めの段階においては「実質的合理性」をも有するものとして形成されたものと言えるでしょう。ところが、さまざまな条件に変化が起きても、その変化に対応した「形式」を整えることができないところから、「実質」とかけ離れた「形式」だけが残り、それがクローズアップされることによって、非合理なものになっていってしまう、ということなのだと思います。

この危険性は、「登記制度」においても、同じように表れているのだと思います。私たちは、この「官」の業務領域に民間から関わる者として、これまでは「官」の「パフォーマンス」の相対的な高さから「官」に絡めとられることに自身の安定を求めてきたようなところがあるように思えるのですが、現在においては、「民間」にいるからこそ見えるものをしっかりと見て、「官」の限界を超えていく、という志向性を持つことが必要なのではないか、と思えます。


読んだ本―「日本の領土問題―北方四島、竹島、尖閣列島」(東郷和彦、保阪正康。角川oneテーマ)

2012-06-22 05:27:29 | 本と雑誌

明日は、第3回の「個別研修会」です。昨日、研修部から資料が届きました。調査士業務とかかわりのある「建築基準法等」と「時効取得」に関するテーマですが、実によく整理された資料が作成されていて、講義内容がとても期待されるものです。準備に当たられた講師(日田支部会員で一級建築士の羽野さん、深田弁護士)に感謝するとともに、是非できるだけ多くの方に参加していただきたいと思います。

さて、読んだ本―「日本の領土問題―北方四島、竹島、尖閣列島」(東郷和彦、保阪正康。角川oneテーマ)について、です。

前半に領土問題に関する東郷和彦元外務省条約局長による論文があり、後半にノンフィクション作家保阪正康氏との対談のあるものです。主な内容は、前者において示されています。

まず、わが国が抱える三つの領土問題(北方領土、尖閣、竹島)について、事実関係などが非常に手際よくまとめられています。まずはその部分だけでも、知っておくべき「最低限の事実関係」ということになるのだと思います。

その上で、、「問題解決への道」ということを、きわめて現実的に考えることが示されています。日本の外務官僚というのが、意外に(と言うと、とってもおこがましくて失礼ですが)スマートな思考方法をとっていることに感心させられました。

「領土問題」について「3つの側面」ということが指摘されています。「法的側面」「政治的側面」「歴史的側面」です。わが国の抱える3つの領土問題は、それぞれこの3つの側面における経緯や意義に相違があるので、それをしっかりと踏まえた対応が必要、となります。

そのような中で、「領土問題」を「歴史問題」にしてはならない、という意見を興味深く感じました。やや独特な用語の使い方になっていて理解しづらい面もあるのですが、「ナショナリズム」やそれにもとづく「遺恨」のような問題になってしまうと(実はそもそも現にそうなっているから「問題化」しているわけですが)、解決がとても難しくなるので、そのようにしてはならない(解きほぐすことによって解決への道を見出さなければならない)、という意味合いとして受け取りました。

領土問題は(これは私たちの取り扱う「境界問題」でも同様ですが)、基本的には「法的」に解決されるべきことですし、その「法的」な問題は「事実関係」すなわち「歴史的事実」にしたがって解釈されることであるわけですが、それが問題のすべてではない、というところが大事なのでしょう。そこだけですべての問題が解決できない難しい問題なのだから、お互いの立場を理解し合いながら、前向きな解決方法を探していかなければならない、ということになるわけです。逆に言えば、「法的側面」「歴史的側面」をしっかりと踏まえた上でこそ「政治的解決」への展望も初めて開けてくる、ということになります。

最後に、本書の主要テーマとは、直接の関係はないことなのですが・・・・・、現在は大学で教えている東郷氏が「私は、学生たちに、最低限の事実関係をしっかり頭に入れろ、ということを強調したうえで、後は、一切の先入観を排して、自分の頭で考えろということをたたきこんでいます。」と言っていたことに共感しました。

まずは前段が大切です。「最低限の事実関係」「最低限の基礎知識」「最低限の思考方法」というものがあります。これが共有化されていないところでの議論というのは、不毛なものになってしまいます。

そして、それがあるのであれば、東郷氏は、「そうやって表明されるいかなる意見にも、絶対に反対しません。私の意見と違うものについては、徹底的に議論をします。」としています。ここでも「反対」と「議論」という用語に独特のものがありますが、要は「つぶすため」のものではなく、発展的な議論をするようにしている、ということなのでしょう。

私も同じです・・・・、と言っても信じてくれないかもしれませんが・・・・、私としても、「最低限」が備わった意見に対しては、そのようにしているつもり・・・・ではいるのです。


日調連総会終了

2012-06-21 08:46:04 | 調査士会

日調連の総会が終了しました。

本当は、二日目の議事についても報告しなければならないのですが、あまり、報告することもありません。別に前日(~当日)の酒が残っていてちゃんと聞いてなかったから、という訳ではなく(その面もまったくないとは言いませんが)、特に報告しなければ、と思わせるところがなかったのですね。

二日目は、第5.6号議案予算案の説明ののち、質疑応答があり、採決の結果、すべて承認可決されました。

日調連の総会では、事前に質問票を提出し、それを優先して取り扱う、ということになっています。これは、短い時間の中で効率的に議事を進めるために意味のある方法なのだと思いますが、その実際の進め方に問題があるのではないか、と毎回思います。

執行部の方はなかなか言いにくいことだと思うので代わりに(?)言いますが、寄せられた「質問」の中には、「総会」という場で取り上げるべきではないものも結構含まれているように思えます。「総会」というのは、基本的には組織方針を論じて決する場ですので、質疑もそこに収約されるような形・内容でおこなわれるべきものです。ところが、そのようなことが意識されず、「この際だから自論を言っておきたい」的なものが結構あるように思えます。

執行部も、「丁寧な答弁に努める」という姿勢なのか、そのような「質問」事項にも時間を割いて「答弁」をします。しかも、事前に質問が寄せられているわけだから、必要な内容については「趣旨説明」の中で触れて答弁に代えたり、個別対応で済ませる、ということをするべきだと思うのですが、それをせず、一つ一つ進めていきます。そうすると、9時15分から12時までの2時間45分しかない時間の中では、議論を深めていく、ということにならずに済んでしまいます。

大きな組織の「総会」として、しかたのない面もあるのかとも思いますが、日常的に議論を進めていくことを基礎にして「総会」がある、という姿をつくっていかなければならないのだと思います。

なにはともあれ、日調連の総会も終わり、いよいよ本格的に今年度の事業執行にあたっていかなければならない時期です。よろしくお願いします。


日調連総会

2012-06-20 07:44:37 | 調査士会
昨日今日は、日調連総会 です。以下、個人的メモをもって報告とさせていただきます。

開会前に、中村前近畿ブロック会長から3.11大震災への義援金についての報告、菅原岩手会会長から被災3県を代表しての御礼挨拶がありました。
この中で、12月15日に、仙台で「報告会」を開催する旨の案内がありました。前後には、被災地を調査士として案内することも計画されているそうです。詳細は、後日報告があるそうですが、スケジュールとしての予定だけでもいれておけば、と思います。


以下、部分的に「報告」型(しかも「自分中心」型)になっていますが、他は、まったくの個人的メモで、何が何やらわからないかと思うものを、そのまま載せることにします。

総会

竹内会長挨拶; ? ? 復興支援
厳しい業務環境への対応、土地家屋調査士制度の充実発展。
地理空間情報の提供者としての役割

法務大臣表彰

連合会会長表彰、感謝状

滝法務大臣祝辞(原民事局長代読); ?

総会議事

議長選出;札幌会桑田会長、徳島会山本会長

事業報告;13:55~
竹内会長
制度改革への多岐にわたる対応、制度対策戦略会議
調査士法改正PT
夢を持てる職業としての土地家屋調査士を目指して

関根副会長:制度改革、総務、財務
東日本大震災対応関係、
法務局の事務・権限見直し議論への対応
会則・規則検討
特定認証局 ? 13000枚、65万件、35%。認証局の今後、見積徴求等の検討を進める
財政基盤の確立
旅費規定の見直し
役員給与規程 ?会議数3倍等の負担増を踏まえて改定。総会後執行。

志野副会長:制度対策、研修
調査士法改正PT ? 6.18中間報告
ADR
研修。CPD、自身の研鑽と他者からの評価の検討
特別研修。希望者減の中での今後の展開の検討。認定調査士研修の支援。

林副会長:業務、社会事業
登記測量、認定登記基準点。6.18国交省地積調査課、具体例での試行に進みたい。23年度実績9点と低調、「第3の基準点」化への協力を
低廉受注業務の実態把握、十分にできず、今後の課題。
「入札等監視委員会」=「参入規制」に対して「適正業務」の観点からの主張

岡田副会長:広報、研究所
ターゲットの意識化。
研究所。テーマ設定の上で研究。国際地籍学会。調査測量実施要領改定(24年度内発刊予定)

質問への回答:昨年9月号、実地調査指針解説。登記官向け文章の会報掲載について混乱をお詫び。

第1号議案:決算報告
連合会費の値下についての意見がありました。私としては、連合会が抱えている課題に応えるためには相応の財政基盤が必要であると思うので、過度な節約によって事業が萎縮しないようにしてほしい旨の要望をしました。

第2号議案:会則の一部改正
守秘義務条項の創設と、外国人登録法の廃止等に伴う会則の改正提案です。守秘義務規定について、賛成しつつ、その運用が「情報隠し」に結びつかないように運用していただきたい旨の要望をしました。そのように取り扱う旨の答弁があった、のだと思います。

第3号議案:音羽会館の処分

第4号議案:
竹内会長:事業計画大綱
1.事務所経営基盤の確立
制度論も大事だが、それ以外に、生きて行くためには、事務所経営基盤を確立しなければならない。3条業務が中心。埋れているものの発掘が必要。受験生減。制度そのものが無くなることへの危機感。儲からない、ということが原因。
2.帰属意識の高揚
「調査士の歌」、懲戒事例公表
3.境界紛争解決への取り組み
4.研究所体制の充実
「明日の業務」についての研究

志野副会長:制度対策本部
制度対策戦略会議:役員任期を越えた継続的な検討

加賀谷総務部長
全国会長会議=国際地籍シンポジウムに合わせて10月に札幌で開催。二回目は3月に開催予定。

小保方財務部長
単年度黒字予算の執行
保険・年金基金

児玉業務部長
業務実態調査
筆界特定制度ー現地明示、前置制度の検討・協議

中塚研修部長

戸倉広報部長
Yahoo 広告
社会貢献型広報 ? ? 海抜設置板

小林社会事業部

小野研究所長
TPP ?資格者相互認証制度などが進行していることの研究

執行部からの「事業計画案」の説明で一日目終了。

その後、懇親会等で、九州の、そして全国の方々と「本音」の意見交換をさせていただきました。








筆界特定と調査士会ADRとの連携協議

2012-06-19 07:24:10 | 調査士会
今日明日、日調連の総会です。台風で行けるか?と心配したのですが、早い便にしたのが幸いして、無事行けそうです(帰りがちょっと不安ですが)。皆様も台風被害には、くれぐれもお気をつけください。

ちょっと遅くなりましたが、先週、法務局と「筆界特定と調査士会ADRとの連携協議」の準備会議を持ちましたので報告します。

会議では、「相談」「手続移行」「広報」「研修」等の課題について確認して、今後「協議会」を組成して、そこでの検討を行って行くこととしました。

「相談」については、大分会では「相談センター」で行うこととしていますので、そのことを確認しました。その意味で「調査士会ADRとの連携」というタイトルとのギャップも気になるところなのですが、考えてみれば「調停によって解決に向かうもの」だけに「ADR」という名称の独占的使用権があるわけではないので、あまりこだわらずに「実質的に何が必要か」ということを軸に考えて行くようにすればいいのでしょう。ある程度複雑な問題を考えて行く時に私たちは一定の「概念」を立てて、それを頼りに問題を解きほぐしたり、共通理解を持てるようにしたりするわけですが、これを進めて行く中で逆に「概念」に振り回されることになる、ということがありがちな誤りとしてあるように思えます。「ADR」というのも、そのような「概念」からではなく、「現実」から見て考えて行く、ということをして行かなければならないのだと思います。

今後の協議の中で、私の期待するのは、事例に基づいた「移行・連携」の研究・研修です。「筆界特定」と「調査士会ADR」との関係では、その「移行」という点で考えると、「筆界特定」から「調査士会ADR」という方向のものが多くなるのではないか、と私には思えます。それを、実際の事例に基づいて検討して実践して行くことがなされれば、「現実の問題への解決能力」が作られて行くように思えます。

実際の成果を生み出すような協議が行われて行くことを期待し、努めていかなければならないと思っています。