先日書き始めた「地震に伴う地殻変動と筆界」にお二人の方からコメントをいただきました。ありがとうございます。この問題が、今、調査士の取り組まなければならない重要な課題としてある、ということをあらためて感じています。
その上で、まず、ふたつのお詫びと言うかお断り。
一つは、私自身が「ブログ」というものをよくわかってなくて、「コメント」というものも何かよくわからぬまま、行きあたりばったりでやっているので、十分な対応もできず申し訳ない、ということです。この状態は、若い人たちに教えてもらいながら改善していきたいとは思いますが、現状としてはそのようなものなのでご理解ください。
もう一つは、この場で論じること(「地震に伴う地殻変動と筆界」を含めて)には、理論的な展開としての首尾一貫性はなく、その時その時の論点、ということなり、せいぜいやがてそれをまとめていけるようになれば、というものですので、これもご理解ください。重すぎる課題を「連載」的なかたちで取り上げてしまったのは失敗だったかな・・・、という思いも含めて・・・。
その上で続き。
「登記研究」誌759号では、「後輩」がこう言っていました。
「震災前は基本三角点にもとづいて測量する必要がありましたが、現在は、基本三角点の座標値が公開停止になっており、不明であることから、各筆界点の相対的な位置関係が重要だと思います。」
ここでは「震災前は」ということと、「現在は」ということが言われています。こういう言い方は、「あなたは犬が好きだが、私は猫が好きだ」「昨日は暑かったが、今日は涼しい」というように、ふつうは、前に言うことと後に言うことが相反する場合に使う言い方だと思います。
しかし、ここで言われているのは、そうなのでしょうか?「「震災前は基本三角点にもとづいて測量する必要がありましたが、現在は、基本三角点の座標値が公開停止になっており、不明であることから、基本三角点にもとづく測量はできない」と言うのであれば。そういう形になるのだとは思いますが・・、後段で言われているのは、「各筆界点の相対的な位置関係が重要」だ、ということです。
ここに問題の混乱があらわれているように思います。言わば、技術論的な問題と、法律論的な問題が、区別されることなく、ゴッチャに論じられてしまっているように思えるのです。
その上で、私としては、法律論的な意味での「筆界論」としては、昔も今も「各筆界点の相対的な位置関係が重要」なのだと思っています。それは、沿革(「当該一筆の土地が登記された時」からそうだった)から言っても、「筆界」の目的と機能(所有権の対象である一筆の土地の外延的な限界を示す機能)から言っても、言えることです。このことを、明確にしておくことが大事だと思います。
それに対して、「基本三角点に基づいて測量する」ということは、その「筆界」を記録する(記録に基づいて復元する、ということを含めて)ための方法論の問題なのではないか、と私は思っています。
それなのに、この方法論にすぎない問題に過重な意味が付与されてしまい、目的論や機能論さえをも押しやってしまうような議論の混乱があるのではないか、と思えるのです。
しばらくの間、飛び飛びにこの問題に触れて行きたいと思います。