大分単身赴任日誌

前期高齢者の考えたことを、単身赴任状況だからこそ言えるものとして言ってみます。

日調連「事業方針大綱案」・・続き

2013-03-05 08:39:24 | 調査士会

全国会長会議へ向けて、「事業方針大綱案」についての続き、です。

昨日書いた「3大重点課題」が打ち出される基礎には、次のような認識があります。

「ここ数年の表示登記件数は半減しており、この原因は、景気の低迷だけではなく少子高齢化による世相の変化であり、これからの住宅事情を鑑みたとき、不動産の流通に大きく期待することはできない。」

「土地家屋調査士の将来を見据えたとき、専管業務である土地家屋調査士法第3条業務の拡充を図るとともに、土地家屋調査士の知見と経験を生かすことのできる新たな業務領域の創成が求められている。」

前段の情勢認識については、いろいろと問題もあるのですが、私たちは評論家ではないので、単に「情勢分析だけをする、ということではなく、「方針」との関係で情勢を見ることになります。そういう観点で、括りを「不動産の流通に大きく期待することはできない」としてしまう、というのは、いかがなものでしょうね。

そもそも、不動産登記制度そのものが「不動産取引の円滑」を目的にするものなわけですから、「不動産流通」に期待しない、というのは如何なものかと思います。・・・これって「揚げ足取り」かな?・・・まぁ、それはともかくとして、このように考えるのは「不動産流通の量」に対する期待(「バブルよもう一度」)が抜けきれないところから出てきているような気がします。「不動産流通の量」が拡大すれば、「自力」での努力をしなくても「他力」でいろいろな問題は解決しちゃうのになぁ、的な発想です。

しかし、それは期待できないな、と思うようになっている、ということなので、まぁ、それはいいでしょう。その上で方針です。

「3条業務の拡充」と「新たな業務領域の創成」が言われています。

この「新たな業務領域の創成」というのが、私にはよくわかりません。土地家屋調査士を土地家屋調査士たらしめているのは「3条業務」です。「3条業務」というのは、一部についての弁護士・認定司法書士の例外を除いて「土地家屋調査士」にしか業務を行わせない(したがって3条業務は土地家屋調査士の専管業務である)、ということであり、資格者としての土地家屋調査士を存在せしめている根拠です。

ですから、この「3条業務」を「拡充」する、というのは資格者団体として当然に必要な大事な責務です。ここで「拡充」という言葉がどのような意味で使われているのかわかりませんが、「拡張」と「充実」という意味でとらえられるものでしょう。

この「拡張」については、先の(H18施行)調査士法改正において、「筆界特定代理関係業務」「ADR代理関係業務」が新たに加わるものとして実現された実績があるように、今後も可能なものです。私は、筆界特定制度における調査士の関与の実績の上に、「筆界確定訴訟」における代理権(「出廷陳述権」とかでなく)の獲得、ということが、少なくとも調査士からの主張・要求としては出されてしかるべきものなのではないか、と思っています。「3条業務」は、不変のものではないのですから、「これまで3条業務でなかったものを3条業務にする」ための努力というのは、さらに自らの能力を高め発揮すべき資格者団体として当然に行うべきことなのだと思います。他士業でも当り前に行われていることですが、わが調査士界では、先日の「調査士法改正PT」中間報告に見られるように、積極的な姿勢がみられません。

もう一つの「充実」についても、特に筆界特定制度での実績の上に、筆界に関わる登記業務についての質的な深化が求められるでしょう。現状において「筆界特定」と「一般登記」との間にある「筆界認定」のあり方をめぐる相違は、理論的な整理を含んで両方の側から埋められるように深化されなければなりません。

「登記件数の半減」が問題にされていますが、その半分に減った登記件数の中で調査士がどれくらいの件数をになっているのか、ということも問われなければならないでしょう。件数の算定方法が違うと思われるので何とも言えない部分もありますが、恥ずかしながらわが大分県においては、調査士会で集計した「分筆登記件数」と、法務省統計における「分筆登記件数」とでは3倍ほどの相違があります。調査士の関与しないところで分筆登記が数多く行われている、という現実を示しているのだと思います(多分、全国的にも同じだと思います。是非見て見てください)。

では、何故調査士の関与率は低いのでしょう?いろいろな考え方があると思いますが(そういう議論がなされるべきですよね)、私は、調査士の行う業務の質が「余人をもって変えがたい」ものとしてない、ということが原因であるように思えて仕方ありません。「調査士の専門性」は、しっかりと発揮されているのか?「調査士の専門性」が適正に活かされるようなものとして不動産登記制度は存在しているのか?・・・ということを問い直す必要があるのだと思います。

「3条業務の充実」の課題です。

このような「3条業務の拡充」ということが中心的な課題であると私は思うのですが、「大綱案」ではあまり意欲を感じさせてくれません。そして、そのかわり、のように「新たな業務領域の創成」が浮上してきているように私には思えます。この問題への取り組み方が、基本的なところで違ってしまっているのではないか、と思えるのです。

・・・ということで、言いたいことはまだたくさんあるのですが、長くなり過ぎました。また後日、ということにします。


1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
個人の土地所有者側からの意見ですが失礼します。 (境界問題を抱える一般国民)
2013-03-05 15:21:29
個人の土地所有者側からの意見ですが失礼します。

調査士の事業方針は筆界確定訴訟代理権獲得等の「新たな業務領域の創成を図る」、というより、
筆界に対する「調査士の関与率」をほぼ100%まで高める「選択と集中」の方向ではダメなのでしょうか?
むしろ筆界確定訴訟を廃止して行政完結にはできないのでしょうか?

以前もコメントさせて頂きましたが、「筆界の管理義務者」について、
現状では「行政(筆特)が明示します」と「所有者(or代理人)が推定図面を申請して下さい」に制度が二分化されているように思います。

管理義務者が誰であれ、権利義務に対応した制度設計というより、断絶してる感じです。
根っこのない植物のような感じでしょうか。

素人考えで恐縮ですが、法14条地図作成事業を中心とした枠組みは作れないものでしょうか。事業対象地外の土地所有者も参画させ、筆界未定を無くす方向にすれば、筆界特定制度を吸収する形で制度の一本化を図れるのではないでしょうか。

例えば、
「法務省では法14条地図作成事業を行っておりますが、予算の都合上速やかに全国を調査することは困難な状況です。しかし境界確定の必要がある土地所有者様からの申し出により職員(調査士を臨時職員とする)を派遣し、地図作成を行っております。この場合、所有者様には調査費用のご負担をお願いする形にはなりますが、隣接所有者の方も境界確認等にご協力をお願いします。」
といった感じです。

私は法律には無知ですし、プロの視点から見たら妄言なのかも知れませんが、
筆界は公物であり、法務省のみが調査、管理するという姿勢の下、
行政を通した制度に一本化して欲しいというのが正直なところです。
返信する

コメントを投稿