また佐藤優の本です。よく出しますね。私もよく追っかけていると思うのですが、追いつきません。とても全部は読めないので、面白くなさそうなものは読みません。たとえば「創価学会と平和主義」とか「ズルさのすすめ」といったようなものです。前にも書いたように、佐藤優の著書について、「読書論」「段階論」「現状分析」「政策論」というようにジャンルを分けると、後ろの方に行くにつれて面白くなくなっていってしまうような気がするので、その観点から選別をしているわけです。
本書は、「読書論」の系譜の中にあるものと思えて読んでみました。
本書では、「ある物事に対して自分なりの視座をもつために最低限必要な要素を整理してみよう。」として、次のことが挙げられています。
①基礎的教養を身につける
②情報収集
③基礎教養と収集した情報の運用
④内在論理を探る
①については、一朝一夕で身につくものではありません。これのために学校教育の体系があるわけなので、急にジタバタしても仕方ないことになります。もちろん、学校教育だけがすべてではないので、成人後の「継続学習」が大事であるわけですが、それにしても一朝一夕で身に着くものではありません。やや立ち遅れたところから、必要な「基礎的教養」を前提にしうるようにするのに何をするべきか?ということが問題になります。
その上で、②の「情報収集」を行うわけですが、①の「基礎的教養」がないと、いくら新しい情報を集めて得ても、その「運用」がうまい具合にできないのですね。よくある「陰謀論」的な「情報分析」というのは、全体を見渡すことができずに、自分の知っている範囲だけで情報をつなぎ合わせようとするのでヘンテコリンなことになってしまうのですね。
本書では、「ある物事に対して自分なりの視座をもつために」するべきことを、イギリスの中学の歴史教科書を引きながら述べています。たしかに紹介されているイギリスの歴史教科書には「老舗帝国」としての深みが感じられ、勉強になりました。
そこから「思考のポイント」が挙げられているので、列記します。
①アナロジーで考える ②敷衍して論を発展させる ③正反対の人物をイメージする ④共通点と相違点を探す ⑤歴史的事実を使って規定する ⑥情念面からもアプローチする ⑦アイデンティティに注目する ⑧第三者の立場から考える ⑨別の概念に当てはめる ⑩さらなる謎に迫る ⑪他人事ととらえない ⑫他の選択肢を探る ⑬価値を相対化する ⑭立ち位置に目を配る ⑮感情的な要素を排除する ⑯ルールの数は絞る ⑰効果的に敷衍を使う ⑱双方の立場から立論する ⑲裏返して考える習慣をつける
特に目新しいことが言われているわけではありませんし、重複したり、逆に相互に矛盾してるんじゃないかと思えるようなこともありますが、これが具体的にイギリスの歴史教科書における思考法から述べられているので、実際の問題に即して具体的に考えさせられて勉強になります。私たちの行う「研修」の方法論としても参考になるようにも思いました。
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