大分単身赴任日誌

前期高齢者の考えたことを、単身赴任状況だからこそ言えるものとして言ってみます。

「長期相続登記等未了土地解消作業」の情報がながされないこと

2018-11-05 19:32:15 | 日記
先週「ギックリ腰」をやりました。月曜(10月29日)の朝に「魔女の一撃」に襲われたので、先週はほぼ「寝たきり」で過ごしました。。
その前の週、小学校1年生くらいの男の子が、私の置いていたプラスチック杭を見つけて「ちょうだい」と言ってきたのに対して、「仕事で使うものだからあげられないよ」と言ったところ、すごくビックリした顔で「仕事してるの?」と訊かれ、「そうだよ」と答えたら、「えっ?おじいちゃんなのに?」と言われていささかショックを受けていたのですが、寝たきりでいたり、起き上がっても腰を曲げてなんとかかんとか動いている姿は、まさしく「おじいちゃん」のものです。落ち込みました。

そんな中の10月30日に行政書士会からの連絡メールで、法務局の入札公告についての情報がありました。業務は「長期相続登記等未了土地解消作業一式」です。
「法務局の相続に関する業務について何故行政書士会?」と疑問を抱きつつ入札公告(10月25日)の中身を見てみると、入札資格が「弁護士若しくは弁護士法人又は司法書士若しくは司法書士法人その他これらに準ずる者」となっていて、その「準ずる者」というのは「戸籍法第10条の2第3項に掲げられた土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士及び行政書士並びにこれらの法人」だということですので、この入札資格を持つ者として、行政書士会からの連絡があった、ということがわかりました。とりあえずは納得。
行政書士会からの連絡があったので土地家屋調査士会からもあるだろう、と思っていたら、いつまでたってもありません。どうしたことか?と大分会に訊いてみたところ「日調連からそんな連絡は来ていない」ということです。何故だ?
この「長期相続登記等未了土地解消作業」についての入札は大分地方法務局だけで行われるものではなく、10月25日以降全国で順次入札公告の出されているものです
(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/ZenkokuNyuusatsu.html)。
それなのに、何故情報は流されないのか?
日調連は「所有者不明土地問題」を「一丁目一番地」としている(と言っている)のですから、この「所有者不明土地問題」に関する当面の中心課題である「長期相続登記未了」問題に関する業務にも積極的に関与するはずであり、そのような観点から全国各会・会員に対して積極的な参加を訴える、のではないかと思ったのですが、そういうことはないようで、そもそも情報の伝達自体を行わなかったようです。これはどういうことなのでしょうか?

考えてみると、「(弁護士・)司法書士」を主要ターゲットにした業務発注(入札)というのは前例のないもので、「法務省競争参加資格」を有する者というのはほとんどなかったのでしょうから、そもそも入札公告に至るまでの間に周到な準備がなされていたはずで、そういうところから「最低必要人数」が発注法務局によって「20名」を軸にしながら「15名」だったり「22名」だったりとバラバラ、という事態もうまれているようです。「
要するに、土地家屋調査士などの「準ずる者」が出る幕ではない、ということなのかと思えます。このことがよくわかっているから、日調連としては入札情報を流すこともしなかったのかな、というのがこの「謎」への私の憶測による「答え」になりました。

しかし、そのうえで、これが今の「土地家屋調査士(界)」のダメなところだな、と思うのです。
たしかに、相続登記に関することは司法書士の業務領域に属することです。土地家屋調査士の「全員」がこの業務を行うにふさわしい存在だとは確かに言えないところがあります。しかし、「法律関連専門職」の一角を占める者、という自覚をもって業務に当たっている土地家屋調査士もいるのであり、そのような土地家屋調査士が「長期相続登記未了」問題をはじめとする所有者不明土地問題の解決に貢献しうる、ということも一方の現実としてあるのであり、それをはじめから放棄してしまう姿勢というのは、責任ある資格者団体の姿勢としてははなはだよろしくないと思うのです。
そもそも、「長期相続登記未了」や、それを大きな要因とする「所有者不明土地問題」というのは、これまでの登記制度の「欠陥」が明らかになった事態としてあります。だから、これまでの不動産登記制度の枠組をただ守っているだけなのでは、この問題そのものの解決が図られないことになってしまう、という性格の問題としてあるのです。
「相続登記は司法書士の専管業務」という考え方は、その一つの現れとしてあります。「未来につなぐ相続登記」を、いくら推進しようとしても、「相続登記を行うためには司法書士に多額の費用を支払う必要がある」という状態が続いているのであれば、それが実際に進むことは望みえない、と言うべきでしょう。
そういう現状に対して、たとえば昨年新たに導入された「法定相続情報証明制度」も、銀行等の提出先が多数に及ぶ場合の負担の軽減になるとともに、数次相続が発生していて相続人が多数になる場合には相続人の確定・探索に手間と費用がかかるのに対して相続人の確定・探索を行うための間口を広げる意義を持っていた、ととらえることも必要なのでしょう。
そのような流れのなかで、「長期相続登記等未了土地解消作業の実施予定者に、司法書士だけでなく「準ずる者」も含まれるようになっていることについては、直接的な実態としては「枯れ木も山の賑わい」的な本来的にはお呼びではないものとして設定されたのだとしても、本質的には、この職責を担うべき者の間口を広げなければやっていけない、という社会的現実の大きな底流があるのだ、と受け止めて、それに応じて責任を果たせるように考えるべきなのだと思います。
そのためには、現状では足りないところの多い「能力」を補う、等の施策が必要になるのでしょうが、そのようなことをも含めて引き受けていく姿勢を示す必要があるのだと思います。業務(入札)情報を共有化する、ということは、そのような姿勢の「はじめの一歩」(「一丁目一番地」?)なのであり、それをなしえない、というのははじめから自ら「失格」を宣言してしまうようなものです。

余談ですが、それに対して、いくらお呼びでない邪魔者であったとしても行政書士会が業務情報を流す、というのはなかなか面白い現象です。よく言えば積極的、意欲的であり、悪く言えば「自分のものは自分のもの、他人のものも自分のもの」という図々しさ、あつかましさです。できないことまで「できる」と強弁することがいいことだとは思いませんが、できそうなことまで「できない」としてしまう土地家屋調査士会の「奥ゆかしさ」と好対照です。ちょうどいい「中庸」を求めるというのは難しいものなのだと嘆息、です。