大分単身赴任日誌

前期高齢者の考えたことを、単身赴任状況だからこそ言えるものとして言ってみます。

アメリカ大統領選挙

2016-11-07 18:37:48 | 日記
アメリカの大統領選挙が、いよいよ近づいてきました。今週の中ごろには、新しいアメリカ大統領が決まっていることになります。

日本で見ているかぎり(少なくとも私には)、「トランプ大統領」が誕生するなどということはおよそ考えられることではありません。あの下品さ、排外主義性は、けっして「アメリカを再び偉大に」することはなく、とんでもなくみっともないものに(「偉大」さと正反対のものに)してしまうような気がします。
しかし、現実に「決戦」の時を二日後に控えた今においても「トランプ大統領」誕生の可能性が否定しきれない状況にあります。これって何なんでしょう?

話は変わりますが、最近「司法占領」(鈴木仁志)という小説を読みました。(この小説、実は10年ほど前にも一度読んでいるのに、今回読んでみて、前回読んだときのことを、ほぼまったく覚えていないことに愕然としました。極めて大きな枠で言えば覚えていることもあるのですが、そのほかのことは、ほぼ何一つ覚えていないのです。年をとるというのはこういうことか、とまさに愕然としているところです。)

「司法占領」は、2002年発行の、「2020年代」の日本の司法制度はこのようになっているのではないか、ということを描いた近未来小説です。
2002年というと、司法制度改革推進計画が閣議決定され、本格的にスタートした年です。以降、2004年の法科大学院開校、2006年の新司法試験開始、2009年の裁判員制度施行、とさまざまな「改革」が実施されて行きます。

その2002年の時点で、著者が描いた「近未来」は、タイトルにあるように、日本の司法制度がアメリカに(というよりグローバル企業に)「占領」された姿です。アメリカのローファームが大挙して日本に押し寄せ、日本企業同士の契約までニューヨーク州法を準拠法にして結ぶようになり、日本の法律事務所はつぶれ、大幅に増えた弁護士は路頭に迷って仕事を漁りあう・・・というような状況が描かれています。

現実がここまでのものになっているわけではない(まだ「2020年代」になっているわけではありませんが)のだとは思いますが、基本的な方向性というのは、このような方向で進んでいるのではないか、と思わされるところもあります。
ロースクール、新司法試験制度というのは、どう見ても失敗したのではないか、と思えますが、それによって弁護士の世界が大きく変わった、ということは確かにあるのでしょう。弁護士が大量に増えた社会は、国民の司法アクセスが向上した社会というより、司法へのアクセスを容易にできる強者がより勝てる社会に過ぎないようにも思えてしまうところがあります。司法制度だけでなく、もっと深いところで社会が変わっているようにも思えるのです。

ここで「アメリカ大統領選」に戻ります。とても信じられないような「トランプ大統領」を生み出しかねないアメリカの状況というのは、まさにこの小説が描いている姿が、決して誇張とは言えないようなものとしてあるのではないか、と思えるわけです。
そうでもなければ、「トランプ大統領」などというものの可能性がでてくることはないのではないか、ということを、この小説が描いているような「5年先」の日本の問題としても考えなければならないのでしょう。もちろん、わが業界の問題としても・・・。