大分単身赴任日誌

前期高齢者の考えたことを、単身赴任状況だからこそ言えるものとして言ってみます。

読んだ本―「人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか」(森博嗣著:新潮新書)

2013-04-19 06:19:14 | 本と雑誌

正直、面白い本ではありませんでした。面白くなかった本について、普通は書かないのですが、考えさせられたこともあるので、そこについて書きます。

何故、この本を読んだか?・・・タイトルに惹かれました。本当に「人間はいろいろな問題についてどう考えていけばいい」のでしょうか?それをうまいこと表現できている本があるんだったら、是非読んでみたい、と思いました。甘い考えでした。著者の執筆直後のタイトル案は「抽象思考の庭」だったそうです。こちらの方が、内容に合ったタイトルです。そしてこのタイトルであれば私は読みませんでした。タイトルを決めた編集者にまんまとやられてしまったわけです。

では、「どう考えればいいのか?」という問いへの答えは何か?・・・「いずれにしても、大事なことは『もうちょっと考えよう』という一言に尽きる。」ということです。著者も、「え、それだけ?」って思うでしょう、と言っていますが、確かにそうですね。

でも、これは大事なことです。情報が氾濫している状況の中で、自分自身でよく考えることなく、人の言っていることの受け売りをして自分で考えているような気になってしまっていることがままあるように思えます。もうちょっと考える、一度立ち止まって深呼吸してから自分の頭で考える、ということが必要なのでしょう。

具体的な例として、「領土問題」と「原発問題」に触れられていました。私は、このうち前者に関してはそのとおりだと思い、後者については疑問に思いました。

「領土問題」―「二つの国が一つの島を自分の領土だと主張して譲らない、というような問題」について、「『自分の国の領土の決まっているじゃないか』と声を荒げる人が多い」という状況があります。これに対して著者は、「僕にはわからない。僕は、歴史的な資料を自分で調べたこともないし、詳しい事情を知らない。どうして、この程度の知識で、どちらが正しいといえるだろうか。」と言います。そうだと思います。「もうちょっと考える」ことが必要なのです。

「原発問題」についても同様のことが言えます。原発に関する専門的なことをわかっている人はめったにいないでしょうし、「専門家」もさほど信用できるわけではない、ということもわかりました。この状況で、「原発をどうすべきなのか?」ということを決めることはできない、だから「現状維持」で行くしかないだろう、・・・というような意味のことを著者は言います。

具体的な問題について抽象化して考えるべき、ということを著者は言っているのですが、これを「領土問題」と「原発問題」で考えてみると、二つの問題は性格が全く違うことがわかります。「領土問題」は「客観的で固有」の問題であるのに対して。「原発問題」は人間が作って、人間が動かして行こうかどうしようか、という問題です。判断を保留することが許される問題と、主体的な判断が問われる問題をゴッチャにしてしまう、というのは、「抽象思考」からしてもどうなのだろう?と思わされました。・・・所詮、私が「具体的思考」「即物的思考」しかしていない、ということなのかもしれませんが・・・。