この題名は立花隆編「南原繁の言葉」(東京大学出版会2007年)の中からそのまま引用しました。ノーベル文学賞を授与された大江氏の作品については私は全く語る資格がない部外者ですが、優れた洞察力の持ち主であると思わせられました。例えば235頁でこう述べておられます。
「想像力の働きとは、現実からかけはなれた夢想、幻想ではなく、与えられた世界観、社会間をそのまま持ち続けることでもなく、いま自分が生きている現実と未来の現実を作りかえようとする構想のことだ。この定義は若いころフランスの哲学者ガストン・バシュラールから学んだものです。そして、もうひとつ、想像力は、現在の支配体制がこれでいいとしている秩序を、現実的、批判的に見つめ直して、それを作りかえさせる市民の力として現われることがある。これは政府も行政機関も安全だとしていた原子炉施設運転について、事故発生の危機を見ぬいて、それに対処しうる安全審査が必要だと、名古屋高裁金沢支部に認めさせた、 『もんじゅ訴訟』の市民たちによって示されています。憲法学者の奥平康弘さんに教えられました。・・・・・
その私がいま、目の前に大きい手がかりとして見るのが、南原繁の『倫理的想像力』です。過去に大きいあやまちをおかした、失敗した、その記憶、責任を担いながら、現実に新しくたちむかう。現実をつくりかえ、これはもう動かしがたいという既成観念や制度の決定をひっくりかえす。そして、いくらかでも人間らしい現実を、未来に構想しようじゃないかという、とする想像力です。」
4年前に述べられた大江氏のことばは3・11後の今を予言しているかのようです。
南原氏の後を継いだ東大総長は同じく内村鑑三の門下生であった矢内原忠雄氏でした。しまなみ海道の四国口今治出身の方です。http://www.dokidoki.ne.jp/home2/doinaka/iq/iq-h/i093.html
矢内原氏は東大を卒業されて、しばらく郷里に近い別子銅山に勤務された後、新渡戸稲造に招かれて東大教授に就任されました。戦時中、軍事政権を批判したために、追放され戦後再び東大に復帰されました。別子銅山は住友系とのこと、私は恵子ホームズさんの招きで元捕虜との和解の旅にロンドンを訪ねた際、アガペの事務所を住友の会社が提供されていたことを思い出します。
別子銅山は現在、世界遺産への登録申請を目指しているとのことです。昨年NHK松山が制作した
[証言記録 市民たちの戦争]“捕虜”と向き合った戦争 ~愛媛 別子銅山~ |
という番組を見ました。
http://cgi2.nhk.or.jp/shogenarchives/bangumi/movie.cgi?das_id=D0001220048_00000
主に日本の側からの取材から構成されていますが、真実に満ちた証言を聴くことができました。元捕虜の人々の体験談も加えられば、さらに充実しよい交流の場になると思います。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます