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韜晦小僧のブログ 無線報国

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92式特受信機の定期点検記録 その6 (2016年01月18日)

2016年01月18日 21時28分36秒 | 02海軍無線機器

92式特受信機の定期点検記録 その6 (2016年01月18日)

前回までの問題点について
RF1のバリコンの容量値が本来240~15PFであるべきものが360~140PFとなっていました。
このRF1段のバリコンの容量の件ですが、狭隘なアンテナBOX内のため目視確認も困難ですが、回路上コンデンサーなどが付加されている形跡はありません。
ただし、バリコンのアース線とグリッド接続用のシールド線の配線は、不用意に冗長な配線となっています。
想定されるのは、この配線の影響で120PFの容量が発生しているのではないかという疑問です。
特に、シールド線については、内部の劣化によりコンデンサー化の可能性が高そうです。
このバリコンの容量を本来の240~15PFにできれば、RF1段の問題は解消されるはずです。

今回の故障調査について
ためしに、RF1の真空管のグリットまでのシールド線を外し、容量測定するとこの線だけで89PFありました。
しかしながら、依然配線による浮遊容量がみられます。
このため、VCのグリッド側の配線を全て除去し、最短のビニール線とシールド線で貼り替えました。
今度は、VCの容量は、296~70PFに減少しました。
この配線では、ここまでが最短化の配線の限界のようです。
この状態で受信試験すると、なんとか3.5Mhz帯ではVCの範囲内となり受信感度が大幅に増大しました。
もう少し、容量が低くなると全周波数帯が調整可能となるのですが・・・残念ですが、限界です。

最後に長波帯の感度アップのため、コイルFのトリマーコンデンサーの調整を行い、全保守点検の終了とします。
展示コーナーに受信機を再設置しましたが、次回(10年後)の保守点検では小生の体力不足のため点検作業ができないかもしれません。
この92式特受信機は、いつでも現役復帰しお役に立てそうですが、今ではそれにふさわしい艦船は存在しないようです
この平和の時代に感謝しつつ、静かに余生を過ごさせます。

陸上の運用について
92式特受信機は艦船の運用では艦船内の直流電源を使用しますが、陸上の運用では交流電源から整流器1型の電源を使用します。
この整流器1型電源は、整流管80により、直流の200Vを供給します。
92式特受信機では、この200VからB電源とブリーダ抵抗器によるヒータ電源の6.3Vをつくります。
次回の保守点検では、整流器1型電源を整備し、200V運用の実現を図りたいものです。


広島戦時通信技術資料館及は下記のアドレスです。
http://minouta17.web.fc2.com/


 


92式特受信機の定期点検記録 その5 (2016年01月10日)

2016年01月11日 21時35分26秒 | 02海軍無線機器

92式特受信機の定期点検記録 その5 (2016年01月10日)

前回までの調査について
まず、第二高周波増幅段6D6の回路の怪しいところの電解コンデンサー(全て0.5μF)から交換することとします。
製造して70年以上経過していますので、電解コンデンサーのほとんどは正常とは思われませんが、怪しいものから取り換えては、上部と下部構造部を接続して試験を行います。
この作業は大変手間がかかりますが、特定の故障部品が判明するまで継続するしかありません。
そうこうしていると、第二高周波増幅段6D6の回路の関連する電解コンデンサーを全て交換しましたが、受信機能は回復しません。
それではと、意地となり、今度は第一高周波増幅段6D6の回路の怪しいところの電解コンデンサーを交換しだし、挙句の果て全部交換しましたが、受信機能は回復しません。
修復コンセプトとしてはオリジナル部品は手を加えないことを信条としていましたが、これでは修復コンセプトはなんだったのか反省しきりです。
この作業で電気的特性に関する部品には問題がないことになりますが、それでも受信機能に問題があるということになります。
よくよく考える、上部と下部構造部を接続するバリコンの接続が本当に正常に行われているのかが疑問が残ります。

今回の故障調査について
将に、ドツボにはまった感があり、不安要素だらけとなりましたが、ひとつづつ確認するしかありません。
前回の最大の問題点となった「上部と下部構造部を接続するバリコンの接続が本当に正常なのか」については、
A,B,Cの各コイルを抜き、真空管のトップのG1のコンデンサー容量を測定しました。
この結果、RF2とMIX段のバリコン容量は正常でしたが、
RF1のバリコンの容量値が本来240~15PFであるべきものが360~140PFとなっていました。
まず、RF2段の問題ですが、劣化コンデンサーの全交換及びコイルのチューニング(その3で実施)を行っており、バリコンとの接続が問題ないとしたら故障原因がわかりません。
SSGにより、3.5Mhzの信号を注入しオシロで波形を確認していると、どうもB,Cのコイルの同調が大幅にずれていることがわかりました。
ようは、「その3」対策でのチューニングが失敗していたということになります。
再度チューニングをすると。今度はRF2段のグリッドにアンテナを接続するときれいに受信することができました。


最後の残ったRF1段のバリコンの容量の件ですが、狭隘なアンテナBOX内のため目視確認も困難ですが、回路上コンデンサーなどが付加されている形跡はありません。
ただし、バリコンのアース線とグリッド接続用のシールド線の配線は、不用意に冗長な配線となっています。
想定されるのは、この配線の影響で120PFの容量が発生しているのではないかという疑問です。
特に、シールド線については、内部の劣化によりコンデンサー化の可能性が高そうです。
このバリコンの容量を本来の240~15PFにできれば、RF1段の問題は解消されるはずです。
もう少し頑張りが必要のようです。


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92式特受信機の定期点検記録 その4 (2015年12月21日)

2015年12月21日 22時43分09秒 | 02海軍無線機器

92式特受信機の定期点検記録 その4 (2015年12月21日)

故障調査について
①第一、第二高周波増幅段の真空管ソケットの電圧測定を行い異常値があるかの検討を行う。
②第一高周波増幅段なのか第二高周波増幅段の故障なのか故障個所を特定する。
③SSGによる信号注入によるオシロでの波形調査を行う。
以上大まかな故障調査ですが、問題は大きな信号では短波帯でも受信することができることです。
逆にこのため、故障個所の特定が困難であるという点です。
なお、故障個所が特定できれば、故障部品の交換を実施します。

まず、「①第一、第二高周波増幅段の真空管ソケットの電圧測定を行い異常値があるかの検討を行う。」ですが、
動作時の測定が無理なので、真空管を外し、静的に各電極の電圧を測定しましたが、異常値はありませんでした。

次に、「②第一高周波増幅段なのか第二高周波増幅段の故障なのか故障個所を特定する。」ですが、
周波数変換段の6A7のグリッドにアンテナを接続すると、5球スーパーとして受信することが可能です。
更に、第二高周波増幅段6D6のグリッドにアンテナを接続すると、受信機能が大幅に低下します。
また、第一高周波増幅段6D6のグリッドにアンテナを接続すると、同じく受信機能が大幅に低下します。
この結果、最低第二高周波増幅段6D6に問題があると判断されます。

最後に、「③SSGによる信号注入によるオシロでの波形調査を行う。」ですが、
空中線ターミナルに信号注入すると、明らかに第二高周波増幅段6D6のグリッド部で信号が大幅に低下しています。

この結果から、まず、第二高周波増幅段6D6の回路の怪しいところの電解コンデンサー(全て0.5μF)から交換することとします。
製造して70年以上経過していますので、電解コンデンサーのほとんどは正常とは思われませんが、怪しいものから取り換えては、上部と下部構造部を接続して試験を行います。
この作業は大変手間がかかりますが、特定の故障部品が判明するまで継続するしかありません。
そうこうしていると、第二高周波増幅段6D6の回路の関連する電解コンデンサーを全て交換しましたが、受信機能は回復しません。
それではと、意地となり、今度は第一高周波増幅段6D6の回路の怪しいところの電解コンデンサーを交換しだし、挙句の果て全部交換しましたが、受信機能は回復しません。
修復コンセプトとしてはオリジナル部品は手を加えないことを信条としていましたが、これでは修復コンセプトはなんだったのか反省しきりです。
この作業で電気的特性に関する部品には問題がないことになりますが、それでも受信機能に問題があるということになります。
よくよく考える、上部と下部構造部を接続するバリコンの接続が本当に正常に行われているのかが疑問が残ります。
目視では、確認できないので余計に気にかかります。
次回は、少し故障個所を別の観点から調査するこことします。
ここまで、部品交換しましたので、徹底的に故障原因の特定に努めます。

 

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92式特受信機の定期点検記録 その3 (2015年12月07日)

2015年12月07日 15時54分20秒 | 02海軍無線機器

92式特受信機の定期点検記録 その3 (2015年12月07日)

今回は92式特受信機の上部構造部の定期点検及び整備に関する作業記録です。
なお、上部構造部の点検目的は以下のとおりです。
①8年前に修復した時、大変保存状態が悪く、ソケット内部はアルミが酸化し粉のような錆が発生していました。
 その際、すべての錆を取り除きいましたが、今回内部の保存状態を確認する。
②端子版から各部の電圧測定を実施する。
③上部と下部構造部を接続し、受信機能を確認しするとともに、最大感度に調整する。
④長波帯の自作コイル(戦中から戦後の民生受信機のコイルを転用)で長-Ⅰ(E,F,G)の確認試験を実施する。
⑤故障調査について
 
まず「①の今回内部の保存状態を確認する。」については、少し錆が発生していた程度であった。
防錆用オイルを注油して終了とした。


次に「②端子版から各部の電圧測定を実施する。」については、修復時の電圧測定値とあまり乖離はないが、この測定値が正常かどうかはよくわかりません。
ただし、本機は特に艦船用受信機のため電蝕対策として受信機の配線において、直流をシャーシ本体から切り離している。
したがって、アースからみると少し高い(本機測定では+40V)電圧が基準値となっている。


「③上部と下部構造部を接続し、受信機能を確認しするとともに、最大感度に調整する。」の件ですが
長波部(長-Ⅱ(300~800Khz)E,E,Gコイル)については、少し感度不足ですが実用受信には支障はありません。
次に短波部ですが、これは自作コイル(短-Ⅳ(2400~4600Khz)A,B,C,Dコイル)の受信が故障していました。
故障とはいっても、微弱の受信は可能です。
このためSSGにより、信号波を注入し、コイルCのトリマーコンデンサーをチューニングしましたが、抜本解決には至りませんでした。


「④長波帯の自作コイル(戦中から戦後の民生受信機のコイルを転用)で長-Ⅰ(E,F,G)の確認試験を実施する。」ついては問題なく機能しました。
ただし、戦時の中波の受信範囲は550~1500Khzであるにもかかわらず、本機の受信範囲は330~1360Khzとなりました。
どうも、バリコン容量の関係が原因で1500Khzが受信できないようです。
これでは、デリカのハムコンバーター(出力が1500Khz)が使用できません。
残念ですが、ハムコンバーターの利用を断念するしかないようです。


最後に⑤故障調査について
本機は、上部と下部を分離した状態では動作できないので動作時の電圧測定等の試験ができず故障箇所特定が大変困難です。
試行錯誤をしていると、周波数変換段の6A7のグリッドにアンテナを接続すると受信ができることが判明しました。
このため、最低このステージ前の高周波増幅段の第2段の6D6(78)の回路に問題があることが判明しました。
本来なら本機のような状態のものであれば、電解コンデンサーはすべて交換する必要があります。
しかしながら、修復コンセプトとしてはオリジナル部品は手を加えないことを信条としていますので、故障箇所に限定し部品交換を行いたいと思っております。
このため時間はかかりますが、今後も故障箇所の調査を行い修復に努めます。

 

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92式特受信機の定期点検記録 その2 (2015年11月24日)

2015年11月24日 20時31分20秒 | 02海軍無線機器

92式特受信機の定期点検記録 その2 (2015年11月24日)

今回は92式特受信機の下部構造部の定期点検及び整備に関する作業記録です。
まず、上部構造部(真空管を含む電気回路部分)と下部構造部(短波用バリコン、長波用バリコン及び抵抗器・マイカ型蓄電器と直流電圧の安定・制御部分)から構成されています。
この、分離作業から開始します。
分離作業方法としては、上部構造部の下部周りの4ミリのネジを取り外し、背面部の蓋をはずし、上部と下部のコネクターの端子版を外します。
これで、上部構造部を垂直方向に持ち上げると分離することができます。
また、分離することで重量が半減しますので、個々の点検作業が楽にできるようになります。
下部構造部を上部から見ると、全てアルミの蓋でシールドされていますので、蓋を外すとやっと中身が観察できます。

 

今回の下部構造部の点検目的は以下のとおりです。
①長波用のバリコンが動作していないので復旧すること。
②長波と短波切替用の電源SWの機能確認
③線条電源SWの機能確認

まず、「①長波用のバリコンが動作していないので復旧すること。」ですが、
長波用バリコンの構造は3連バリコンをスチールベルトで連結したダイヤルで同時に回転させています。
大変負荷がかかる構造です。
長波用ダイヤルを廻してみても、バリコンはびくともしません。
このダイヤルの構造は、いゆいるフリクション型でメモリ盤の右下部の小型ダイヤルと連結して廻す構造となっています。
この構造が弱点でダイヤルの回転が空回り自体となりやすいようです。
本来ならギヤー式のダイヤル構造が望ましいところです。
今回の修理ですが、ダイヤルの目盛版とバリコンの軸の接続にネジが使用されていますが、試験時にダイヤルを廻しすぎ、ネジが甘くなったのものでした。
とりあえず、ネジを締め直し修理完了です。

 

次に、②長波と短波切替用の電源SWの機能確認と③線条電源SWの機能確認ですが、
その前に、B電圧の電圧調整のブリーダ抵抗のホーロー抵抗器が割れたのか抵抗値がありません。
平成20年の修復時にセメント抵抗器を入れておりましたが、今回茨城県S氏から頂いた回路図の抵抗値に変更することとしました。

 

 

下部構造部の裏面にSW類がある関係上、下部構造部をさかさまにし、裏面の蓋をはずします。
なお、SW類については、経年劣化のため接触不良となっており、注油と接点磨きにより復旧しました。

 

最後に各部品を観察すると、蓄電器については日本無線製(昭和18年2月)、トランス類は、日本通信工業製(昭和16年3月と6月)とあります。
本機、実は銘板は別のものを付けていたので実態が不明でしたが、部品の内容から、日本無線株式会社が昭和18年前期の製造したものと思われます。
以上下部構造部についての定期点検を終了します。

疑問点
「翼板」電源の名称について
本来一般(陸軍を含め)では、真空管のプレートの和名の呼称は、「陽極」ですが、海軍の一部(艦船関係のようですが・・・)では、この「陽極」のことを「翼板」と呼称しています。
何故かわかりません。


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