韜晦小僧のブログ 無線報国

真空管式ラジオ、軍用無線機やアマチュア無線機の修復の記録
手製本と製本教室の活動の記録
田舎暮らしの日常生活の記録

トリオ 9R-59の定期点検 その1(令和05年06月26日) 

2023年06月26日 16時17分27秒 | 07アマチュア無線機

トリオ 9R-59の定期点検 その1(令和05年06月26日) 
その1(令和05年06月26日) 基本的な動作確認作及び周波数カウンター取付け作業

本機トリオ9R-59通信型受信機 修理(平成23年(2011年)5月4日から5日)
http://minouta17.web.fc2.com/ham-9R-59.html
修理を完了しております。
なお、修理完了後は倉庫にて長期保管していましが、修理後10数年放置状態だったので、久方ぶりに定期点検を実施するこことしました。
環境の悪い倉庫の中での保管という条件だったので、どのような状態となっているのか少し心配でしたが、電源を起動しても10年前の修理完了の良好な状態で受信することが確認できました。
少し安心していたら、受信状態が突如無音になる事象が発生しましたが、状態を変化させるとまた正常に戻ってしまい、異常時の状態を維持できないので対処のしようもありません。
どうも熱の発生により、故障を誘因するめようですが、能動素子でも受動素子でも故障の可能性がありそうです。
本故障については、故障の再現が確認されたときに検討するこことして、今回は本題の周波数カウンターを取付け受信機のデジタル化を計るこことします。
本「周波数加減算機能付き青色LED6桁デジタル周波数カウンター(測定範囲:0.1MHz~65MHz)」はネットで事前に購入したものです。


9R-59に周波数カウンターを接続する作業手順について
周波数カウンターへの入力の取出し口は、9R-59の局部発振管6BE6のG1からです。
ここでは半田付けではなく、G1のビニール線にワニ口クリップで取付けるだけとしてOSCの浮遊容量の増加を極力防止するとともに、いつでも撤去することができるようにしておきます。

更に、ワニ口クリップをつけたビニール線は、シャーシの上部に、中継ラグ板を用意して、そこに半田付けしておきます。
周波数カウンターはいつでも取替え可能の状態にするため、これもワニ口クリップ接続して、中継ラグ板と接続します。

ここで、周波数カウンターを接続した仮テストを実施し、OKなら上部ケースを装着して作業完了です。

悦に浸って、受信を楽しんでいると、突如受信が途絶え無音の状態が発生しました。
原因不明の故障の発生ですが、よく見ると周波数カウンターが0を表示しています。
怪我の功名というと正しい表現ではありませんが、局部発振が停止しているのが故障の原因であることが判明しました。
このような故障状態は真空管の問題の可能性が高いと想定されますので、早速6BE6の交換作業を行います。
真空管は国産品ではなく、GE製の6BE6で交換して、修理完了です。

 
10年前の修理記録をみると、MIXERとOSCの2本の6BE6は交換していますが、その当時は真空管試験機を使用せず適当な国産の中古品を充当したのが、今回問題が発生した原因のようです。

本機9R-59はトラッキング調整が良好なようで、受信周波数の把握については、ダイヤル板の目盛と周波数カウンターとの実測値に誤差が少ないものでした。
流石、春日無線の優秀機ということですが、ネット情報ではトラッキング調整を進める記事が多数出ていますが、素人が下手に触るものではありません。


本文へ

 

参考文献


広島戦時通信技術資料館及は下記のアドレスです。
http://minouta17.web.fc2.com/

 


2号電波探信儀2 型原型機、改3、改4のブロックダイヤグラムによる動作概念の解説について

2023年06月22日 13時05分08秒 | 03陸海軍電探開発史

2号電波探信儀2 型原型機、改3、改4のブロックダイヤグラムによる動作概念の解説について

2号電波探信儀2 型原型機、改3、改4の3機種について動作概念を解説する。

2号電波探信儀2 型原型機

2号電波探信儀2 型改3

2号電波探信儀2 型改4

 

本文へ

 


2号電波探信儀2 型 改4のブロックダイヤグラムによる動作概念の解説について

2023年06月08日 10時34分58秒 | 03陸海軍電探開発史

2号電波探信儀2 型 改4のブロックダイヤグラムによる動作概念の解説について

米軍へ提出されたブロックダイヤグラムのタイトルには、TYPE22とある。
日本側での制式呼称は、2号電波探信儀2 型 改2、改3、改4、改5(日立製造分)の4種があるが、本機のブロックダイヤグラムは2号電波探信儀2 型 改4である。
開発及び製造会社は日本無線株式会社である。

ブロックダイヤグラムでは、次の12つのブロックの機能で構成されている。
Antenna Unit Receiver Range Unit Indicator for waring synchronizer  Transmitter  modulator 
Control box receiving parts;  constant voltage rectifier constant voltage apparatus indicating parts; rectifier control box Transmitter parts


空中線(Antenna Unit)
電磁ホーン(口径400mm、アンテナ利得13db)、円形導波管(口径75mm)


受信機(Receiver Unit)

受信機の調整は前面にある「導波管整合」と「波長整合」と云う2つのつまみと高周波増幅調整器によって行われる。

受信機: スーパーヘテロダイン方式、第1検波;鉱石検波器、局部発振M-60、中間周波増幅5段(UZ-6302 x5)中間周波数14.5Mhz帯域幅2Mhz、第2検波(UY-76)、低周波増幅2段(UZ-6302 x2)
使用真空管の事例を以下に示す。
M-60マグネトロン、UZ-6302、UY-76

受信機の内部のマグネトロン実装事例(このモデルは再生検波方式と思われる。
なお、受信用マグネトロンM60-Mと読める。)

受信機の配線図

 
回路の特徴:鉱石検波器から取り出した直後に「Quarz Retarder  (水晶棒(リターダ))」とあるが、これが所謂ドイツのウルツブルグで使用されていた「レーボックス」という遅延回路で、中間周波増幅部の入力側に挿入して自己送信波を受信し、水晶棒の長さを適当に選べば例えば5km毎に二次波、三次波等々を表示し得、目盛の役も果たし測距上も有効なことが判り非常に重宝且つ不可欠のものになっていった。このように自己送信波を受信し、ある距離をブラウン管上に映し出して良否を確かめる「自己鑑査」の機能は大変有効であった。
受信機で使用しているUZ-6302は、戦前にテレビ受像機の映像増幅菅として開発された広帯域増幅菅であることから、同期発振器や指示機などで使用している真空管が新型管のH管に変更となっても、終戦まで日本無線では受信機にこのUZ-6302が使用されつづけられた。

受信機の問題点とその解決方法について
「日本海軍エレクトロニクス秘史 田丸直吉」氏からの抜粋
22号電探の不安定の原因をつきつめて行くと、キーポイントは受信機の不安定の問題であり、更に的をしぼれば受信機の第一検波が磁電管M-60を使ったオートダイン方式であることであった。このオートダイン方式では磁電管M-60を局部発振器として入力電波周波数f0、即ち送信電波周波数と中間周波数f1との差の周波数f0±f1の発信を行わせる役目と、その周波数に於て非直線性を具えた第一検波器としての役目とを兼ね具えなければならないようになっている。そしてこの調整は受信機の前面にある「導波管整合」と「波長整合」と云う2つのつまみによって行われるようになっていたので上記の2つの要求に合致したポイントを探し出すことは天才的な手腕を必要とし、又エコーが出ても電圧の変動、温度変化等により忽ち(たちまち)消えて再調整を要すると云うものであった。云うなれば二兎を追う仕組みになっていた。
そこで「一目的一装置の原則」からM-60にはf0±f1を安定的に発振せしめる局部発振器の役目を与え、検波は鉱石検波器に委ねるべきと云う当然の結果に到達する。「鉱石検波器は焼けるのではないか」との論もあったが22号に於ては当時送受信別個のラッパを使っていたのでこの心配はなかった。又鉱石検波器では変換利得が落ちると云う意見もあったが、オートダイン方式の受信機より得られるエコーを見ているとそれは非常に不安定であり20~40デシベル位の変化は常に起こって居り、一方鉱石検波器は熱雑音が少ないので中間周波増幅部で十分の利得が得られることが判った。又鉱石検波器を兵器に採りいれることの反論も予想されたが、その時点では既に電波探知機に七欧製のものが採用されていたので問題はなかった。
このように考える時英国のロッテルダム・レーダーはマグネトロンを局部発振器に使い鉱石検波を行っているという情報のあったことが思い出された。
敵も同じことを考えていたのである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これより以前から「菊池正士技師の下で10センチ・スーパーのバラック・セットが出来ている」と聞いていたが何故かこれを採用する気運が電波研究部にはなかった。これは(1)鉱石検波器は兵器としては不安定、(2)熱に弱いと云うことであって、よく調べて見ると実験した結果ではなく単なる憶測であることが解った。一種の鉱石アレルギーである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
M-60の局部発振電波はオートダインの場合と同様に横方向から導波管の中に入れたがその先端はダブレットとした。このようにして出来たスーパー受信機は「導波管整合」と「波長整合」の両つまみの調整共にブロードで安定していた。そしてこの調整で送信菅L,M,Nの全波長をカバーすることが出来た。

※M-60の発振は現用のモードより一段電圧及び界磁の高いところにあるモードの方が安定らしいと云われていたが之を確認し局部発振管として安定な発振を行うポイントを実験的につかむ。
※送信マグネトロンの出来によって波長が散布していたので、L、M、Nの3種類に仕分けられていた。
送信マグネトロンM-312の” L、M、N”のマーク事例

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
かくして日本海軍のマイクロ波レーダーは本格的な研究を始めて丸3年の歳月を経て漸く完成を見たのである。
電波研究部所の名和中将は伊藤大佐に対して「伊藤君!これで君は銃殺をまぬがれたな!」
それは極めて強い語気であったと云う。


同期発振機(synchronizer)、測距儀(Range Unit)及び見張用指示機(Indicator for waring)について

A short survey of japanese radar Volume 3に22号の各種指示機の操作方法が具体的に記載される文書があった。
また、Reports of the U.S. Naval Technical Mission to Japanにこれに関連した技術資料があったので、この2点の資料をもとに、この関連機能(同期発振機、測距儀、見張用指示機)に関する技術的な検討を行う。

A short survey of japanese radar Volume 3からの抜粋
ディスプレイは2本のA型ブラウン管を使用する。「見張用指示機」と呼ばれる1本のブラウン管は、60kmまでのすべてのターゲットエコーを表示し、5kmごとに距離目盛が表示される。測距調整用クランクを回すと、3マイクロ秒幅の距離パルスが移動する。2番目のスコープ(測距儀担当オペレーター用)は、測距調整用クランクで選択された距離の約1000mを拡大表示する。スコープの前には拡大鏡があり、5インチブラウン管に相当する大きさになっている。目標物の輝線の先端がスコープに刻まれた垂直線とちょうど重なるようにセットすると、真の測距距離がダイアルで読み取れる。
22号セットの詳細な回路図は付録IIに含まれている。
22号セットのいく分か簡略化されたバージョンである改3は、潜水艦の艦橋内に設置されている。下の写真の1つに示されているように、並べて取り付けられた2つのホーンが使用されている。表示は75 mmの単一のスコープでA型のものである。潜水艦からの測定距離は戦艦に対して約10 kmである。

Reports of the U.S. Naval Technical Mission to Japan, 1945-1946からの抜粋
音叉と、発振器と緩衝器として使用される2つのRH-2真空管は、2.5Khzの周波数の正弦波を同期回路、掃引回路、および測距装置の位相調整回路に供給するためのものでした。
同期回路は変調器を制御するためのマイナス120ボルトのパルスを正弦波から生成した。
掃引回路は、指示機用掃引電圧と30Khzの電子距離目盛を生成した。
音叉型発振器の正弦波出力も位相調整回路で矩形波に変換し、ブラウン管の輝点パルスとして使用された。

Reports of the U.S. Naval Technical Mission to Japan の資料には、2号電波探信儀2型改4の同期発振機(synchronizer)、測距儀(Range Unit)及び索敵用(見張用)指示機(Indicator for waring)に関する回路図が何故か提供されていないので、2号電波探信儀2型改3(潜水艦用)の同機能部の回路図を参考のため提示する。
なお、改3は潜水艦搭載のため機器をコンパクト化しており指示機と同期発振機は同一機器内に収容されている。

同期発振機(synchronizer)、測距儀(Range Unit)及び索敵用(見張用)指示機(Indicator for waring)を構成する新型の真空管であるH管を参考のため提示する。


同期発振機(synchronizer)

(註)用語解説
Sat.Amp (※ Saturation Amplification → 飽和増幅)増幅菅のバイアスを零バイアスとさせ、中心部分だけが増幅することにより、入力が正弦波であれば、出力は矩形波になるように歪んだ波形をわざと作り出す回路技術のこと。

同期信号用発振部
RH-2(sine wa osc) → RH-2
Reports of the U.S. Naval Technical Mission to Japanの資料のとおり、音叉と、発振器と緩衝器として使用される2つのRH-2真空管は、2.5Khzの周波数の正弦波を生成する。この正弦波を同期信号として、同期回路、掃引回路、および測距装置の位相調整回路へ供給する。
日本測定器株式会社製音叉(SB型音叉発振器)の事例

送信同期パルス生成部
RH-2 → RH-2(sat.amp)→ RH-2 → R H-2
回路図がないので2号電波探信儀2型改3(潜水艦用)の回路図を参考とする。
緩衝増幅→飽和増幅(正弦波から矩形波へ変換)→RH-2×2(パラレル増幅)→微分回路によるパルス波生成(資料では-120V生成とある)

掃引波生成部
RH-2 → RH-2(sat.amp)→ RH-2(sat.amp)→ RH-2(sat.amp)→ RH-2(saw teeth gen.)
とあることから、正弦波緩衝増幅→飽和増幅3段→のこぎり波生成(積分回路)で索敵用(見張用)指示機のブラウン管の水平軸に「のこぎり波」を印加する。

目盛発生部
RH-4(Damping OSC) → RH-2→ RH-2→ RH4→Time Scale
Damping OSCとあるのは減衰振動回路のことで、コンデンサーに充電された電荷が火花間隙を通して充電する場合に生じる減衰電気振動を利用するものと無線工学ハンドブックには記載されているが、とはいっても出典事例はなんと大昔の火花発振器である。
これでは動作を説明できませんが、基本的には同期用の2500Hzの正弦波を起電力として減衰振動回路を起こすことで高調波成分が発生する。
この高調波成分の中で30Khz(12逓倍)を同調させて取出す仕組みのようである。
この30Khzは索敵用(見張用)指示機のブラウン管の垂直軸の5km単位の電子マーカー(目盛)として表示するためのものである。
RH-4(Damping OSC)以降のステージは機能が示されてないので正確なことは不明であるが、30Khzの正弦波を飽和増幅して矩形波に変換し、微分回路を通してパルス化したものをプレート検波して正パルスだけ取り出したものが、電子マーカー(目盛)となる。

参考事例 海軍13号の指示器の目盛発生回路(2球の回路構成)
真空管V4の陽極側より変圧器を経て、適当なる衝撃波となりて、7.5kc減衰振動回路の同期し、陽極側にて増幅され変圧器T6にて、微分以て、次の真空管V7にて陽極側より負の衝撃波として取出されブラウン管のY軸に加える。
(註 変圧器T6(パルストランス)はLR直列による微分回路を構成し、V7はプレート検波による電子マーカーを整形する。)

測距装置(測距儀)(Range Unit)


 
(註)正面右下が位相調整器であるが、回転用クランクハンドルと距離メーターが見える。
本位相調整器には、ゴニオメーターが使用されているようだ。

 
RH2→Phase Shifter(位相調整器)
同期発振機からの同期信号である正弦波を増幅して、位相調整器にかける回路である。
これは、同期用正弦波が2500Hzであることから波長の1/2の60kmが測定距離にあたるが、位相で考えると180度で60kmということである。
送信機からパルス送信した反射パルスがブラウン管の半分の位置(測定距離30km)にあるとすれば、測距装置のこの位相調整器で位相をずらした形でブラウン管の掃引用の「のこぎり波」を与えるような仕組みであることから、位相調整器の位相が0度の場合、測距装置のブラウン管は索敵用(見張用)指示機と同じ30kmの位置に反射パルスを観測することになる。
今度は、位相調整器の位相を90度にした場合、反射パルスはブラウン管の開始位置0kmと一致する。
このように、位相調整器の位相の変化分を測定距離に換算できる仕組みがあれば、正確な距離を測定することができる。
位相調整器には、ゴニオメーターやCRによるツーロン回路などがある。

位相調整器の拡大機能について
A short survey of japanese radar Volume 3からの抜粋では、【測距調整用クランクで選択された距離の約1000mを拡大表示する。】とあるが、この意味は位相調整器の位相範囲が角度180度で測定距離60kmとなるものが、減速用の歯車機構により角度180度で測定距離1kmに拡大する仕組みがあることを意味する。
したがって360度1回転で測定距離2kmとなるので、位相調整器のクランクを30回ほど回転させれば、測定距離60kmとなるような仕組みと考えればいいのだろう。
このバーニア機構により1度の測定距離は5.56mとなる。
測距装置の読取り精度を仮に±2度とすれば、測定誤差は±11.12mとなる。
ただし、実際の公式資料での22号の測距の測定精度500mとあるので、実際の精度は±9度のようだが、この実際の精度であれば射撃管制レーダーとしての運用は困難だったということのようだ。
この精度不良の原因は、アンテナに電磁ホーンを採用していることに大きな要因があるように思われるが、やはりセンチ波を使用するのであればパラボラアンテナを採用することが原則であろう。

参考資料 22号射撃管制レーダーの性能(実測データ)

※実測データから見る限り、測距装置の精度は合格だが、方位角の精度が悪すぎたのではないだろうか。

以降の回路では、のこぎり波生成部、Return path eliminating signal (リターンパス除去信号)(※本命名の正確な意味は不明であるが、機能面から考えると明らかに選択信号の機能と思われる)、帰線消去信号生成部の3つの機能がある。

のこぎり波生成部
RH-2(sat.amp→RH-2→PH-1
矩形波からのこぎり波を生成するためには、下図のとおり正弦波からRH-2で飽和増幅し矩形波を作り、その出力で微分回路を通し、次段RH-2の出力で積分回路を通し、最後の電力増幅段PH-1で増幅してブラウン管の水平軸に「のこぎり波」を印加する。

同時期に開発された米軍のSCR-270の測距装置のブロクダイヤグラムを示す。
(同期信号→位相調整器→波形整形→のこぎり波整形→ブラウン管の水平軸注入)

Return path eliminating signal生成部(選択信号生成部)
RH-2(sat.amp→RH-2(sat.amp)
正弦波からRH-2で飽和増幅し矩形波を作り、その出力で微分回路を通してパルス波を生成し、次段RH-2でCクラス動作することにより正パルス成分のみにする。
このパルスは位相調整器により位相が変化することから、選択信号としてブラウン管のグリッドに印加すると輝度変調して、該当位相位置で輝点として発光する。

帰線消去信号生成部
RH-2(sat.amp)→RH-2→RH-2(sat.amp)→RH-4→RH-4
22号改3の指示機の回路図の中で帰線消去回路を提示しているが、基本的にはのこぎり波を再作成したものを微分することで帰線消去信号を作り、ブラウン管のグリッド若しくはカソードに印加してのこぎり波の復帰時間分をブラウン管の表示から隠蔽する処理であり、帰線消去のため何故こんな複雑な構成が必要なのかわからない。

参考資料(アマチュアのオシロスコープ技術からの抜粋から帰線消去信号の作り方)

測距装置の操作・画面イメージ

 

索敵用(見張用)指示機(Indicator for waring)

基本的には単なるオシロスープの機能だけであり、焦点、輝度、上下、左右の基本的なブラウン管の調整機能があるだけである。
受信信号はPH-1の1段増幅を行い、ブラウン管の垂直軸に印加する。
同期発振機で生成された「のこぎり波」は、RH-4の1段増幅でブラウン管の水平軸へ印加するとともに、距離目盛として使用する電子マーカーも水平軸のもう一方の偏向版に印加する。
更に、測距装置で生成された選択信号は、ブラウン管のグリッドに印加し輝度変調することにより、測距装置で位相調整器を動作する変化分を索敵用(見張用)指示器に輝点として表示する。
特に反射波が複数存在する場合、どの目標を測定するか輝点で表示することができる。

索敵用(見張用)指示機の画面イメージ

 


 

送信機(Transmitter Unit)


 

M-312マグネトロンの事例


送信機の回路図

マグネトロンの構造と動作  出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
マグネトロンは他の熱電子管と同様、ヒーターにより加熱される陰極(カソード)と、加熱されない陽極(アノード)からなる。
陰極は管球の空胴の中央に配置され、陽極はこの陰極を囲むように配置されるとともに、陰極に対して正の高電圧が印加されている。陰極をヒーターで加熱すると熱電子が放出され、陽極と陰極間の電界により陽極方向へ加速される。このとき、管球の軸方向に永久磁石などで強力な磁場が形成されており、電子はフレミングの法則に従い進行方向と直角な方向に力を受けて曲げられる。
この作用により、電子は陰極と陽極の間にある作用空間と呼ばれる場所で、サイクロイド曲線を描いて振動しながら周回運動を始める。陽極には規則的に形成された複数の空洞(キャビティ、cavity)があり、空洞の開口部をサイクロイド振動している電子が通過すると、空洞の共振周波数で空洞と電子が共振を起こし、マイクロ波が発生する。こうして空洞に発生したマイクロ波を、結合回路を介して出力回路へ効率よく伝播させることで、マグネトロンの外へと導き出し、各種の利用が可能になる。

送信機の送信用マグネトロの実装事例


 
動作説明
送信部は水冷式マグネトロンM-312を用いており、その出力が導波管でホーンアンテナに導かれる。
変調はマグネトロンのフィラメント回路に直列に接続されたカレントトランスに変調部からの出力を与えることで行われる。マグネトロンの磁石は外部電磁石である。マグネトロンの陽極と電磁石を冷却するために水冷ポンプから冷却水が供給されている。マグネトロンの電源にはアノード側に直流7,000Vが与えられ、カソード側に変調信号として5,500Vの負の変調パルスが重畳される。
マグネトロンM-312の単体性能は以下の通りである。
・フィラメント 10V/19.5A(195Watt)
・フィラメントエミッション 2A
・アノード電圧 11,000V
・磁界 700ガウス(外付け電磁石)
・アンテナ出力 尖頭2KWatt
・許容アノード連続損失 500Watt
・発振波長 9.875±0.5%センチメートル(3037MHz)

下図のように、陰極(カソード)にパルスを印加することにより、マイクロ波の送信パルスを生成することができる。

 

変調機(modulator)

P-112、P-220、S-182

変調機の回路図

疑問点
2段目の増幅菅P220のG1とG2の接続が逆ではないのか。更にG3の動作が説明できない。
以上の疑問を考えてネット検索していたら、樋口氏の「MY HOMEPAGE」に変調機の修正された回路図が掲載されていたので、紹介します。

動作説明
真空管構成は、P112→P210→S182×2(並列)のとおりである。
同期発振機から-120Vの負の送信同期パルスの入力を基本としている。
ここで重要なのは正パルスと負パルスの関係であるが、受動素子のコイルや能動素子である真空管(グリッドとプレートの関係)では入力に対して出力は180度位相が反転するため、このことを考慮して回路設計しなければならない。
一方、変調機は送信同期パルスが入力した時点のみ動作し、それ以外は待機状態にする必要があるのでこれら整合性を計った回路設計が必要となる。
初段のP112では、負パルスが入力され、出力は正パルスとなる。
次段のP220(V404)の回路設計は少しトリッキーな回路が採用されており、何故このような回路構成にするかの理由は、正パルス入力を正パルス出力させるための苦肉の策に思える。
簡単に説明すると、P220はパルスがない時、G2には-500Vが印加されているためカットオフされて動作はしない。正パルスが入力されるとカットオフから開放されて動作状態(ゲート機能)となりプレート側には負パルスが出力されるが、T401のトランスを介してパルスは位相反転して正パルスとなりG2に供給される。
ただし、入力の正パルスが終了すると、G1には-500Vがかかり、再びカットオフとなる。
なお、G3の明確な動作は不明である。
次段のS182の入力はP220のG2の正パルスから取り出すことになる。
同様にS182のG1には-700Vがかかっており、当然カットオフされて動作は停止状態であるが、正パルスの入力により増幅動作を行うこととなる。


【2号電波探信儀2 型に関するコメント】
・使用周波数は3Ghz(波長10cm)を採用しているが、センチ波レーダーの開発着手については英米と遜色がなかった。
・送信菅及び受信用局部発振部には磁電管(マグネトロン)を使用している。
・パルス繰返し周波数は、2,500Hzを使用していることから、理論的な測定最大距離は60Kmとなる。※((電波の波長÷パルス繰返し周波数)× 1/2 )
・メートル波の見張用レーダーであれば、通常は測的用(見張用)指示機のみ用意するが、センチ波を利用してもメートル波同様に、アンテナの物理的な方位角をそのまま利用することにより方位角用指示機は省略されている。このため、方位角の誤差精度を更に改善することができず、22号を射撃管制レーダーとして使用することは困難であった。
・受信機については、開発初期から超再生検波や再生検波方式が長期間にわたり採用されており動作の不安定な状態が問題視されていたが、昭和19年7月以降スーパーヘテロダイン方式が実用化し、やっとまともなレーダーの安定運用が可能となった。
・シングルスーパーヘテロダインからダブルスーパーヘテロダイン方式などの更なる受信向上の努力が見られないのは残念である。
・送信部の機能については、初期の2号電波探信儀2 型の原型機から殆ど改善が見られず、送信パワーの向上する努力がみられない。特に送信用マグネトロンの出力は米国を比較しても貧弱のままだった。
・アンテナ系については、送信用と受信用に別々のホーンアンテナが採用されたが、昭和19年中期からパラボラアンテナ化、大型の角型ホーンや円形導波管から矩形導波管の採用、送受信共用アンテナへの改善努力が見られたが、何れも搭載時機が間に合わなかったり、搭載すべき艦艇が喪失した以降の時期となり実戦配備には至らなかった。
・今次大戦では日本海軍は大型艦艇から小型の海防艦に至るまで殆どの艦艇に22号と13号を装備したことは特筆に値する。
・最後に、A short survey of japanese radar Volume 1の下記の文面を紹介する。
e.製造されたレーダー。日本無線の工場は注意深く 2 つの部分に分けられており、陸軍用の機器を製造する部門と海軍用の部門があった。一つのセクションで働くエンジニアは他のセクションに入ることは許されていませんでした。また、彼らのエンジニアは、艦船や航空機、地上の位置に設置された機器のテストを製造後に観察することも許されていませんでした。この方針は、会社の関係者から強く批判された。
→ これが軍の実態であり、海軍技術研究所の技術士官といっても所詮官僚組織であり、レーダーの技術的問題点をメーカー技術者と共有することにより問題点を解決するといった考えよりも、陸軍は陸軍のみに、海軍は海軍のみの権益とか縄張りなどの意識が大変強かったということであろう。
このことから、戦後に彼らが如何なる発言してもまともに信じることはできないが、敗戦直後に混沌とした世の中で占領軍に語った内容を取り纏めた「A short survey of japanese radar」のほうが断然に価値が高いものに思われる。


【疑問点】
①.続日本無線史<第一部> 昭和47年2月発行からの抜粋
d日本電気株式会社(住友通信工業株式会社)
Ⅵ生産機種 戦中
海軍関係
M-22号、M-130号、M-213号指示器 電波探信儀用指示器各種
R金物、β金物 電波探信儀用精密測距器

続日本無線史では上記の記載があるが、この中で、日本電気株式会社ではM-22号指示器、R金物、β金物電波探信儀用精密測は、2号電波探信儀2型(22号)のための指示機や測距装置としての生産品目なのだろうか。
22号のブロックダイヤグラムを見ると、東芝や日本電気のものと比較すると指示機の機能に関する記述が極端に少なく、ブラウン管に至っては規格も記載されていない。
このことから、日本無線としては指示機などを外注していたのではないかとの考えに至ったが、真実は如何なるものであったのだろうか。

②2号電波探信儀2 型改5に関する公式資料を未だかって見たことはないのだが、本当に存在するのだろうか。

③索敵用(見張用)指示機に対する帰線消去機能がどこにも存在しない。
2号電波探信儀2型改3(潜水艦用)は、潜水艦という狭隘なエリアでの配備を考慮して艦船用の2号電波探信儀2型改4とは根本的な異なる設計・製造がおこなわれている。
例えば、基本的なパルス繰返周波数も2500Hzから600Hzに変更されており、送信管制機と受信管制機と別々なものもが管制機として一体化されている。
更に、2号電波探信儀2型改3(潜水艦用)の索敵用(見張用)指示機の回路図を見ると、指示機の中に同期発振機の機能が同居している。
しかしながら、2号電波探信儀2型改4のブロックダイヤグラムの索敵用(見張用)指示機と同期発振機を見ても、帰線消去機能の記載はない。
このため、同期発振機の機能の中でただ記載漏れがあったと云えば簡単な話であるが、同系列の32号のブロックダイヤグラムを見ると、測距装置内にある帰線消去回路がB1(索敵用指示用ブラウン管)、B2、B3と共通に帰線消去信号を利用しているように記載されている。
B1(索敵用指示用ブラウン管)は位相調整器を通さないため、どう考えてもこの状態の帰線消去信号は利用できない。之こそ誤記であるように思われる。

 


本文へ


参考文献
Reports of the U.S. Naval Technical Mission to Japan, 1945-1946
「日本無線史」10巻 1951年 電波管理委員会
日本海軍エレクトロニクス秘史 田丸直吉 昭和54年11月 原書房
A short survey of japanese radar Volume 1 1945年11月20日
A short survey of japanese radar Volume 3 1945年11月20日
真空管物語 http://kawoyama.la.coocan.jp/tubestory.htm
無線工学ハンドブック 昭和29年11月 社団法人日本電波協会
アマチュアのオシロスコープ技術 榎並利三郎 昭和44年6月 オーム社
My Home Page(T.Higuchi)   http://home.catv.ne.jp/ss/taihoh/
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 


日本で「レーダー」の用語が使用された起源についての考察

2023年06月07日 09時19分56秒 | 03陸海軍電探開発史

日本で「レーダー」の用語が使用された起源についての考察(令和5年06月07日)

日本陸軍は、レーダーのことを「電波探知機」と総称し、個別では早期警戒レーダーを「電波警戒機」と、射撃管制レーダーを「電波標定機」と呼称している。
一方、日本海軍は、一般的なレーダーのこと「電波探信儀」と、敵レーダー波の傍受用受信機のみ「電波探知機」として呼称している。
戦後は、レーダーのことを一般的には「電波探知機」で呼ばれていたが、いつの間にか「レーダ」の用語が使用されるようになり、最後には用語統一で「レーダー」が正式用語となっている。
したがって、戦時中に敵国の秘密兵器である「レーダー」なる用語を日本では知る機会はなかったものと思われるが、下記の米軍報告書「A short survey of japanese radar VolumeⅠ」には、それを否定する論述がなされている。
なお、レーダー(Radar)という用語は一種の略語であり、英語のradio detecting and ranging(電波探知及び測距装置) からきている。
これはアメリカによる命名であり、当初イギリスでは、radio detector(電波探知機)及びradio locator(電波標定機)と呼んでいた。

A short survey of japanese radar VolumeⅠからの抜粋
日本人は、1936年にアメリカのジェネラル・エレクトリック社のC.W.ライス博士が提案したアイデアとは独立してドップラー検出の研究を行っていたと断言している。それはどうであろうと、日本のレーダー研究開発のエンジニアは皆、ライス博士の著作に精通している。
「レーダー」という言葉は、日本の論文には1944年末に初めて現れた。日本は、それがB-29に搭載されているPPIサーチタイプのセットを指すために使われていると思いこんでいた。彼らはレーダーの代わりに早期警戒セットを「ディテクター(探知機)」と呼び、探照灯や対空火器制御セットは「ロケーター(標定機)」として呼んでいる。
1940年までに、パルスレーダーのアイデアが強く浮上し、この技術の研究が開始されるようになった。その利点はすぐに明白になったため、その後の主な努力はこの方法の開発に注力された。

2点の課題の抽出
①【「レーダー」という言葉は、日本の論文には1944年末に初めて現れた。】
②【日本は、それがB-29に搭載されているPPIサーチタイプのセットを指すために使われていると思いこんでいた。彼らはレーダーの代わりに早期警戒セットを「ディテクター(探知機)」と呼び、探照灯や対空火器制御セットは「ロケーター(標定機)」として呼んでいる。】

課題
① 【「レーダー」という言葉は、日本の論文には1944年末に初めて現れた。】について

出展資料1:雲上より日本都市を狙ふ B29の電波暗視機? 電波科学( (昭和20年2月号) 
http://minouta17.livedoor.blog/archives/20559565.html
英米の電波暗視機
英国では早くからロッテルダム装置と称して、対独爆撃に際して偵察機が必ずこれを装着して先行している。
米国では英に少し遅れたが、最近得るところによれば例の本土空襲のB-29には各機にもこれを装備して来ているらしい。
写真で見ると主翼の胴体貫通部の下にお椀状のものが見えるが、これは明らかに空中線を貨した覆いでなければならない。
米国では一般に電波兵器のことをレイダーと呼ぶが、最近はレイダーに恰も電波暗視機特有の諸用とさえ解され勝ちである。
その性能が如何なるものか、深夜帝都に侵入するB-29が海中に投弾すること度々なるを見るとき、必ずしもその性能怖るべきものならざるを知ることが出来る。
第2図は伯林市街のロッテルダム実況図である。
これは各部分部分のロッテルダムによる写真を集め、平面図的に作ったもので、第3図はそれを幾分修正したものであろう。
孰れも独軍の手に落ちた英国の携行資料である。
第4図はロッテルダムの指示機を示す。
B-29の有するレイダーも概ねこのロッテルダムに依り想像可能のことと思うふ。

出展資料2
科学朝日 昭和20年4月号
動く目標や距離も測定「レーダー」の性能を英で発表
兵器 レーダーの詳細に関する記事が最近英国の専門雑誌に初めて発表された。雑誌は「ワイヤレス・フィールド」で、筆者は英国物理学研究所ラジオ部長R・L・スミスローズ博士である。この研究所は英国でレーダーの研究を最初に完成したとされているが、この秘密ラジオ・ロケーターは、今次大戦における最も重要な科学的成功とされている。これについて博士は次の如くいっている。
暗夜でも物が見えるレーダーは、人間的勇気と共に勝利の重要的な要素となりつつある。そして現在でも敵の艦船並びに航空機の奇襲攻撃などに対し大きな戦果を収めている。レーダーは暗黒の真っただ中に電波を送り、それが対象物から跳ね返り、反射する様相を記録する。目標物の運動乃至距離の測定は極めて正確で、レーダーのみによっても真の暗黒の中で完全に下方を照準することが可能な位である。
固定すると運動するとは問わず目標物の方向乃至位置を求めるために電波を使用し、目標物の電気特性の相違を利して媒体、隣接物乃至はその周囲のものから目標物を判別する。これがレーダーである。

 

【コメント】
【「レーダー」という言葉は、日本の論文には1944年末に初めて現れた。】の件に関しては、電波科学( (昭和20年2月号) 、科学朝日 昭和20年4月号と2点の雑誌しか確認できず、昭和19年(1944年)末に初めに公表された論文が如何なるものかは分からなかった。

無線と実験、電波科学や科学朝日などの一般の方を対象とした科学雑誌のことであるが、戦時中であることから厳しい検閲を想定するわりには、日本では自軍の秘密兵器は厳重な管理下に置くが、海外のドイツ、米国、英国などの軍事技術についてはノーガードで公表されている。
無線と実験(昭和17年12月号、昭和18年7月号)
フィリピンとシンガポールで鹵獲してレーダーを公表した。
なお、本誌のレーダーの表現は、radio detector(電波探知機)及びradio locator(電波標定機)である。

科学朝日(昭和20年4月号)
白黒の印刷で、総ページは25ページ、紙質も悪く戦争の終結が予感される。

目次をみても、米のP80噴流推進戦闘機(※日本では橘花相当品)、アメリカ陸軍の240ミリ榴弾砲、先尾翼型試作戦闘機XP55型「アセンダー」(※日本では震電相当品)、対日戦に備える敵米の予備士官学校の紹介など英米を逆に賞賛する内容になっており、検閲など全く無縁の反戦を意図した出版物と勘繰られても可笑しくない内容となっている。
それでも、科学朝日の表紙には健気にも年号には、2605と表記しているが、年号は「皇紀」ということだろう。

科学朝日(昭和20年4月号)のPDF版

https://drive.google.com/file/d/1Y_2lrCv8yOnE87dKTsY2NIu7yetS0o7H/view?usp=sharing

 


②【日本は、それがB-29に搭載されているPPIサーチタイプのセットを指すために使われていると思いこんでいた。彼らはレーダーの代わりに早期警戒セットを「ディテクター(探知機)」と呼び、探照灯や対空火器制御セットは「ロケーター(標定機)」として呼んでいる。】

上記に関する根拠資料を以下に示す。
有末機関報第453号 日本ノ対空警戒組織ニ関スル件 質問書(昭20.11.22)
有末機関報第453号
主責任課 参本残務整理部第一部班 航本総務課
日本ノ対空警戒組織ニ関スル件
11月22日
連合国最高司令部発、陸海軍東京連絡委員長宛
日本ノ対空警戒組織ニ関スル附属質問書ニ対シ完全ナル回答ヲ昭和20年11月29日迄ニ当部ニ提出スベシ
依命
一、日本ノ対空警戒組織ニ依リ利用セラレタル情報源
1.敵ノ航空機、船舶、潜水艦ノ近接ヲ判定スル為早期ノ電波探知機(early warning radar)ノ他ニ如何ナル情報源ヲ利用セシヤ
【監視哨、音響判定、通信傍受、電波暗視機傍受(radar intercept)、I.F.F.傍受他】

16.早期警戒用電波暗視機ノ一操作所ガ電子的ニ妨害ヲ受ケアリ時又ハ妨害反射片ノ目標トナリアル時、早期警戒用電波暗視装置所ノ資スキ標準的走査規程ガ発セラレタルヤ
17.1式3型(MarkⅠModel3)1式2型(MarkⅠModel2)又ハ他ノ150メガサイクル早期警戒用電波暗視機ガ連合国I.F.F.ヨリノ通信ヲ受信シ得ルコトヲ認メタルコトアリヤ、コノ通信ヲ早期警戒用電波暗視機ノ限度ヲ広ク張ルタルム利用セシコトアリヤ

{軍務課註}
一.訳文中左ノ語就モ意味不明ナルニ付、目下陸運ヲ通シ照会中ナリ
I.F.F.、SOP、DFRadar
二.訳文中「電波暗視機トナシアル」ノ原文ノ(radar)ノ訳ナリ

25.日本ノ戦闘機指揮法ハ連合国ノ其レト如何ニ相違シアリヤ
P.P.I.法(計画位置標示器)ハ如何ニ発達セシヤ
(Plan Position Indicator)→ ※(Plain Position Indicator)の翻訳官の誤解か原本誤記
(計画位置標示器)    → ※(平面位置表示器→本来のPPIのこと)

 

【コメント】
{軍務課註}【.訳文中「電波暗視機トナシアル」ノ原文ノ(radar)ノ訳ナリ】とあるように、日本の軍部は、radarのことを電波暗視機として理解していたのは事実のようである。
ただし、early warning radarのことを早期ノ電波探知機との翻訳もあるが、日本側がとの程度「レーダー」という用語を理解していたのかは確かに疑問である。
それにしても、戦後のどさくさで「有末機関」なる輩による軍との癒着には辟易する。



本文へ


参考文献
A short survey of japanese radar VolumeⅠ
アジア歴史資料センター 「自昭和20年10月17日 第229号 至昭和20年11月30日 第469号 有末機関報綴」 レファレンスコード C15010237300
アジア歴史資料センター 陸軍調査部質問書(其16)回答 空襲に対する日本本土の防備/11.陸海軍警報組織 12.日本の電波警戒機に対する連合軍の妨害の影響 レファレンスコードC15010644000
雲上より日本都市を狙ふ B29の電波暗視機? 電波科学( (昭和20年2月号) 
電波探知機 昭和20年10月 紀平 信
無線と実験 昭和17年12月号、昭和18年7月号