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戦時標準船(第一武智丸 第二武智丸)と商船無線について(H30年3月11日)

2018年03月12日 23時12分02秒 | 96無線コラム

戦時標準船(第一武智丸 第二武智丸)と商船無線について(H30年3月11日)    

一度安浦町を車で通過したことがありますが、このコンクリート船を見逃したことがきにかかっていました。
今回、特別な思いで、この唯一現存する戦時標準船(コンクリート船 第一武智丸 第二武智丸)に会いに行くこととしました。

【武智丸 概要】
排水量2,300t 船長64m 船幅10m 建造地 兵庫県高砂市 建造年 昭和19年5月 第一武智丸・第二武智丸建造設計 舞鶴海軍工廠 林邦雄海軍技術中佐 コンクリート船の建造が採択され大阪府の土木会社武智昭次郎氏により高砂市の塩田跡の造船所で建造された。 
広島県内では安浦町の2隻、音戸町の1隻が現存している。
武智丸は昭和19年~20年にかけて4隻建造内3隻が就航、南方まで航海した。

武智丸については、ウィキペディアや他のブログなどで多数紹介されていますので詳しい説明はここではしませんが、まず、おどろいたのは専門の造船業界ではなく一介の土木会社武智昭次郎氏による建造というここと、武智丸の命名の由来が判明したことでした。
やはり、戦時であってもコンクリート船は海軍工廠や正規の造船業界では特異すぎたのでしょうか。
また、今日まで現存したこの戦時遺産の武智丸ですが、これも輸送船という機能を喪失させ、本来のコンクリートの機能を生かした護岸機能へ変質されることによりはたすことができましたが、ある意味では歴史の皮肉という結果といえるかもしれません。

 

 

 

 

 中国新聞社の記事紹介

以下戦時標準型無線機電信機の概要については、情報の正確性を期すため、参考文献1をそのまま抜粋引用します。
商船無線の臨戦態勢への転移の背景
太平洋戦争中の商船対策
昭和16年(1941)12月に太平洋戦争が始まったので、従来は、商船は逓信省、軍艦は海軍省と二元管理であったものを、全て海軍に一任し一元管理とし、商船、軍艦の建造を行うことになった。
戦時標準船
戦時標準船としは10種類が制定された。貨物船としは、A,B,C,D,E,Fの6種類、鉱石運搬船はK型、油槽船はTL,TM,TSの3種(L:Large,M:Middle,S:Small)であった。
従来型の貨物船や客船の建造は中止された。
電気艤装品についても大量・迅速なる建造を実現すべく、無線電信機、電動機、発電機および同機械、電灯、電具、電線、蓄電池などの規格制定が行われた。
この規格が制定されるまでには、造船統制会、海軍電気工業会の後援の下に、海軍、船主、造船所、機器製作所の関係者により数10回にわたり検討、審議が行われた。
これに並行した、試験検査規則、商船電気艤装心得、資材需給手続、資材産出基準表などが作成された。
戦時標準型商船用無線装置
戦時標準型商船の無線装置は船舶安全法(昭和4年(1929))によらなければならないが、海軍から助成金を受けている船(特に優秀船)は主装置として1KW以上の送信機を装備しなければならなかった。
以上の規則に基づき船舶用無線通信機の改善が、昭和13年(1938)ころから逓信省、日本無線電信電話標準化委員会を主体に進められた。無線機器メーカとしては、東芝、安立電気、日本無線、東洋通信機の4社が協力した。
昭和15年(1940)ころから、周波数の偏差の限度が規定されたので、無線送信機は自励式から逐次主発振式(水晶式)に換装された。
昭和16年(1941)に船舶関係事務が海軍に移管されると、海軍の作戦条件を加味して、周波数3波増加と短波長波同時通信可能なるよう改善された。
戦時標準型無線機電信機の規格
500W長短波送信機
長波および短波各1台からなり、周波数は従来のものに130,454,5,520,16,560KHzを追加。
250w長短波送信機
長波および短波各1台からなり、周波数の増加は500w機に同じ。
150w中短波送信機
1台にて中波および短波発信可能。
周波数は,375,410,425,454,500,5,520,6,210,8,280,11,040,12,420,16,560KHzとする。
50W長中波送信機
本記は補助送信機として装備する。周波数は375,410,425,454,500KHzとする。
無線方位測定機(方向探知機)
周波数範囲300~2,000KHz
短波受信機
2,000~21,000KHzのスーパヘテロダイン式8球のものと、オートダイン式4球のものの2種あり。
500W送信機と組合せる場合には前者を用い、それ以外の送信機と組合せる場合は後者を使用した。
長波受信機
30~2,000KHz オートダイン式4球のもの
無線電信機用電源規格
上記の無線電信機に使用する蓄電池、電動交流発電機および充放盤の規格は第2章4.3.4による。
戦時標準型船無線装置装備標準
1号型無線電信機
TL,TM,A,B,K型船に装備するもので、500W送信機、無線方位測定機、長短波受信機各1台を組み合わせもの。
2号型無線電信機
C.D型船に装備するもので、250W波送信機(長短波)、補助送信機、無線方位測定機、長短波受信機各1台を組み合わせもの。
3号型無線電信機
TS,E,F型船に装備するもので、250W中短波波送信機、中短波受信機各1台を組み合わせもの。
4号型無線電信機
改E型船に装備するもので、50W補助送信機、長短波受信機各1台を組み合わせもの。

参考文献1
日本船舶海洋工学会関西支部の造船資料保存委員会作成
デジタル造船資料館
日本の商船の電気技術史について
第8章 商船の無線機器(抜粋)
http://www.jasnaoe.or.jp/zousen-siryoukan/2013/130815-ootani.html
第2章商船の電気艤装・電気機器(3)
http://www.jasnaoe.or.jp/zousen-siryoukan/2013/130815-ootani/ootani-03.pdf

ながながと商船無線(無線兵装)について説明しましたが、武智丸は戦時標準E型船の範疇となります。
したがって、戦時標準型船無線装置装備標準に当てはめると3号型無線電信機か4号型無線電信機に該当します。
とすると、通信の命である船舶用受信機は単なるオートダイン式4球しか与えられないこととなります。
この受信機は民需のラジオ程度の性能しかありません。
こんな性能の受信機で内航や外航での輸送任務に当たられた船員の皆様のご苦労を思うと心が痛みます。

参考文献2
UECコミュニケーションミュージアム
第1展示室(4)
http://www.museum.uec.ac.jp/sub_room1/room1-4.html

船舶用短波受信機

日本無線製

 

戸根無線株式会社
Yahooオークション出展品(オークションID:q94588453)

安立電気製
オークション出展品(オークションID:d274247425)

 

 


広島戦時通信技術資料館は下記のアドレスです。
http://minouta17.web.fc2.com/

 


海軍TM式軽便無線電信機の修復作業記録 その5 (2018年03月11日)  木製ケースの作成

2018年03月11日 20時15分40秒 | 02海軍無線機器

海軍TM式軽便無線電信機の修復作業記録 その5 (2018年03月11日)  木製ケースの作成

ホームセンターで木材を調達します。
材質はファルタカ材としましたが、加工がしやすく軽いことが特徴ですが、少し強度面では弱く難点です。
木材を切り出し、組み立てて、着色し、最後に水性ニスを塗って完成です。
既存の金具を流用したので、正規のものは本体と前蓋はつながりますが、本機では切り離しの前蓋となりました。
残る作業は、受信機の性能アップと銘板偽造の2点となりました。


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